シュローダー定期便

2015年市場展望 エマージング株式

2014年12月01日

アラン・コンウェイ

アラン・コンウェイ

エマージング株式ヘッド

  • 2015年は、エマージング(新興国)株式市場が世界景気の拡大期にどういう動きを示すかということよりも、世界経済が比較的低水準の成長を続ける中で、エマージング株式にどのような投資機会があるのかが焦点になると考えます。
  • 新興国経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は総じて堅調であり、株価は割安な水準にあります。2015年は、これらに加えて、新興国域内の内需の拡大や構造改革が、株価の下支え要因になると見ています。
  • 一方、米ドルが上昇基調にあり、これがエマージング株式市場にとって向かい風になる可能性があることに留意する必要があります。

新興国の中でも、経済成長の促進、または持続的な経済成長を遂げるための「構造改革」に取り組む国が増えています。これは、2015年の新興国経済や株式市場にとって、好材料になると見ています。

2015年のエマージング株式市場の見通しは総じて明るいものの、通常の世界景気の回復局面と比べて低調になることが予想されます。

2014年は、世界的な景気減速懸念や、国や地域間の景況格差などがより鮮明となりました。主要先進国の中では、米国景気は堅調に推移しているものの、欧州や日本では景気が停滞傾向にあります。このような状況を考慮すれば、この先はエマージング株式市場が世界景気の拡大期にどういう動きを示すかということよりも、世界経済が比較的低水準の成長を続ける中で、エマージング株式市場にどのような投資機会があるのかが焦点になると考えます。

長期化する低成長

一般的にエマージング株式市場は、世界景気のサイクルとの連動性が高い性質を持ち、景気の拡大局面ではその恩恵を受ける傾向にあります。しかしながら、現状は新興国諸国の資本財やその他製品などの輸出は回復基調にあるものの、そのペースは従来の景気回復局面より緩やかなものに留まっています。

また、世界のコモディティ市場(エネルギーや鉱物などの商品先物)は、弱い需要に加えて、シェールガスの生産などに起因する米国でのエネルギー自給率の上昇や、世界の主要経済以外の生産鈍化などを受けて低迷しています。米国ではシェールガス、シェールオイルなどの生産拡大に伴いエネルギーの輸入は減少していますが、欧州、日本、中国などの景気は弱く、米国の輸入減少分を補うほどの需要はありません。このため、新興国の中でも、特に資源国を取り巻く環境は厳しいものとなっています。

さらに、輸出の回復の遅れが、企業収益の圧迫要因となっています。こうした環境下、2015年の景気や企業収益の下支え材料として、輸出動向よりも、新興国諸国の堅調な内需や、構造改革の進展がもたらすプラス効果などに着目すべきと考えます。

力強い内需がもたらす投資機会

新興国諸国の輸出の伸びが市場予想を下回っていることで、エマージング株式市場の地合いが悪化しています。しかしながら、新興国経済は相対的に高い成長率を維持しており、それが内需の拡大によってもたらされていることを忘れてはいけません。新興国諸国の中で人口の多い中国とインドの両国を合わせた総人口は約25億人にも上り、この中でも消費のけん引役となる「中間所得者層」の人口が増大しています。他の新興国諸国でも中間所得者層の拡大が消費需要をけん引しているため、世界の所得拡大(特に消費支出)に占める新興国諸国比率は高まっています。これは、世界経済の構造的な変化と言えますが、まだ初期の段階にあり、今後も新興国において良好な投資機会を創出していくと見ています。

構造改革の推進がもたらす投資機会

さらに、エマージング株式市場に関するプラス材料として、景気浮揚や持続的成長に向けた経済構造改革を推進する国が増加していることが挙げられます。これらの国の多くでは、改革派の指導者(例えば、インドのモディ首相、メキシコのペニャニエト大統領、インドネシアのウィドド大統領、中国の習近平国家主席など)の下、構造改革が推進されています。一般に経済構造改革を進める際には、地方政府など「官」が持つ影響力を抑制し、民間部門の自由化や活性化などが求められますが、新興国において「何を改革すべきか」は国によって異なります。例えば、中国では、社会資本の投資主導から消費主導の経済成長への転換が求められています。またインドでは、インフラなどの設備投資が不足しているため、これらに注力した改革が迫られています。両国ともに、改革は一筋縄にはいかないとみられるものの、長期的には国内総生産(GDP)の成長率を押し上げる効果があると期待されます。

市場センチメントの変化

2014年のエマージング株式市場は変動の激しい展開が続きました。世界的な景気の先行き不透明感を背景に、今後も不安定な市場展開が続くことが予想されるものの、市場は既に様々な懸念材料を織り込んでいるとみられます。また、バリュエーションの観点では、エマージング株式市場は割安であると考えます。

米ドルの上昇が懸念材料

一方、2015年は、米国の金融政策の正常化による余波の影響が懸念されます。米連邦準備制度理事会(FRB)が金利の引き上げを開始した場合に、為替市場では一段と米ドル高が進む可能性があります。過去の例を見ると、米ドルが上昇する局面では、先進国市場に対してエマージング株式市場は相対的に弱含む傾向がありました。こうした状況を考慮すると、今後米国が利上げした場合の米ドルの動向に留意する必要があります。なお、米ドルの実質実効為替レートは、2014年を通じて大きく上昇しました。2015年も米ドルは底堅く推移するとみられますが、2014年ほどのペースで上昇する可能性は低いと予想します。

過去に学べば、不況の後で景気が回復に転じ中央銀行が利上げを行う状況では、株式市場では金利環境よりも景気動向に注目が集まりやすいため、株価は上昇する傾向にありました。今後FRBが利上げを開始したとしても、長期金利が大幅に上昇することはないと考えます。当面は、欧州や日本での緩和的な金融政策と、それにより供給される流動性が、エマージング株式市場の支援材料になると見込まれます。

ただし、米国が利上げを行った場合、経常収支の赤字幅が大きな国、短期の海外資金への依存度が高い国など、一部の国に悪影響を及ぼす可能性があります。米国で金融緩和の出口論が活発になった際には、こうした国の通貨や株式が急落し、金利が上昇しました。しかしながら、その後経常赤字の縮小、通貨の競争力の回復、過剰な信用残高の抑制などが進み、これらの国々でも「金利上昇の環境」に適応し始めているとみられます。

今後、米国の金融引き締めが緩やかなペースで進捗すると予想されることや、市場が既に将来の利上げを織り込んでいることなどから、米国の利上げがエマージング株式市場に及ぼす影響は限定的なものにとどまると見ています。

その他の問題

ロシア/ウクライナ問題や中東情勢などの地政学的リスクが急速に悪化した場合、その影響はエマージング市場に限らず、世界経済全体に広がると考えます。

また、足元では原油を含むエネルギー価格の下落が一部のエネルギー生産国の経済に影を落としていますが、エネルギー価格の下落は、エネルギー輸入国の経済にプラス効果をもらすなど、その影響は国ごとに様々です。全体的には、エネルギー価格の下落は世界的な消費需要の拡大につながり、エネルギー輸入国にとって追い風になると考えます。

2015年のエマージング株式市場の見通しは、“慎重な楽観”

2015年のエマージング株式市場の見通しは全体的に明るいものの、従来の世界景気の回復局面と比較すると、株価の上昇力は緩やかであると予想します。構造改革や製造業と輸出の改善などの恩恵を受ける市場、エネルギー価格の下落などが追い風となる市場に注目しています。一方、素材やエネルギー関連などの景気敏感セクターには慎重な見方を維持しています。

米国の利上げとドル高、コモディティ市況の下落などの影響について留意しつつ、2015年のエマージング株式市場は、力強い内需の拡大、輸出の改善、割安な株価水準などの支援材料から、先進国株式市場と比べて魅力的な収益機会が存在すると見ています。

本資料中シュローダー/Schroders とは、シュローダー plcおよび同社が直接的または間接的に株式または持分の50%以上を保有する会社等の法人を意味します。 
本資料は、情報提供を目的として、シュローダー・インベストメント・マネージメント・リミテッドが作成した資料をシュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社が翻訳・編集したものであり、如何なる有価証券の売買の申し込み、その他勧誘を目的とするものではありません。なお、本資料は、作成時点における作成者が信頼できると判断した情報に基づき構成されておりますが、内容の正確性あるいは完全性については、これを保証するものではありません。本資料に示した運用実績、データ等は過去のものであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。本資料中のコメントはシュローダー独自のものであり、必ずしも一般的なものであるとは限りません。本資料で示した見通しおよび分析結果等は、作成時点の考えに基づくものであり、将来、予告なく変更する場合があります。