臨時レポート

中国株式市場の調整と今後の見通し(2)

2015年07月10日

2014年11月に香港と上海の株式相互取引が開始されて以降、中国株式市場(上海・深セン株式市場)は急上昇してきました。しかしながら、短期間での株価急騰に対する警戒感や、株式新規公開(IPO)の増加などによる株式需給の悪化、中国証券監督管理委員会(以下、金融当局)による規制強化懸念などを背景に、2015年6月12日以降下落に転じ、7月8日までに上海総合指数は約3割下落しました。この下落の要因について、シュローダー・グループのアジア株式(除く日本)運用チームは次のように考えています。

1)信用取引主導の市場動向
2014年11月以降の中国株式市場の上昇は、信用取引主導によるものであったと考えられます。2015年6月18日における信用取引残高は、統計公表値ベースで昨年末の2倍以上となる2.3兆元に上ります。足元の中国株式市場の急速な下落は、積み上がった信用取引の解消が一因であると考えられます。

2)新規株式公開(IPO)の増加
金融当局は、2015年4月にIPOの認可を月1回から同2回に増やす方針を発表しました。また、6月には原子力発電大手の中国核能電力や、証券大手である国泰君安証券が上場しました。こうしたIPO件数の増加や相次ぐ大型IPOにより、中国株式の需給が悪化し、中国株式市場の下落要因となりました。

3)増資、株式売却の増加
2014年11月以降の中国株式市場の上昇を受けて、上海株式市場上場銘柄の大量保有株主や企業が、増資や株式売却を行いました。2015年の企業による増資の総額規模が7月現在までに5,100億元以上となったことに加え、大口株主や企業による株式売却規模が、年初来5月末時点で累計約4,000億元に達し、株式市場の需給悪化につながったと考えられます。

 

中国金融当局の対応が奏功していない背景

足元までの中国株式市場の下落は、急速な株価上昇に対する警戒感の高まりや株式需給の悪化などにより引き起こされ、信用取引の解消により加速したと考えられます。これに対し、中国政府や金融当局は、株価の更なる下落を防ぐため、IPOの一部凍結、信用取引規制の一部緩和、政府系基金によるETF(上場投資信託)の買い入れなど、矢継ぎ早に複数の政策を打ち出しました。しかしながら、これらの対策に一貫性がなく、市場規模などと照らしても不十分なものが多いと考えられます。また、政府系基金によるETFの買い入れは、大型株式に資金が流れることから、株式市場の下落を主導している中小型株式の買い支え効果は限定的であるなど、対策のミスマッチもみられました。このように金融当局の対策が、市場参加者の不安感を解消しきれず、これまで中国株式市場の下落を十分に食い止められなかったと考えられます。

中国の主な株価対策
証券取引手数料の減額
IPOの一時凍結
信用取引規制の一部緩和
中国人民銀行による中国証券金融(CFS)への資金提供
国内証券会社によるETF買入基金設立
自社株買い規制緩和、大量保有株主の株式売却を半年間禁止

 

中国株式市場の適正水準は?

2015年6月中旬以降の株価下落に伴って、公表されている信用取引残高は2.3兆元(6月18日時点)から1.5兆元程度(7月8日時点)まで減少しました。信用取引残高については、他国の株式市場の平均水準を適用するならば、現在の中国株式市場においては、1.0兆元程度が適正と考えられます。従って、当面は信用取引の解消に伴う、株価の下押し圧力が継続する可能性があります。一方足元の調整局面を経て、A株のバリュエーションは割高感が薄れてきております。こうした状況は、今後の中国株式市場のサポート要因になるものと考えられます。
中国株式市場は、今後も短期的には変動幅の大きい展開が予想されますが、株価バリュエーションの割高感が大幅に調整しており、徐々に底入れを模索するものと考えられます。

 

本資料は情報提供を目的として、シュローダー・インベストメント・マネージメント・リミテッドが作成した資料をシュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社が抄訳・編集したものであり、如何なる有価証券の売買の申し込み、その他勧誘を目的とするものではありません。なお、本資料は、作成時点における弊社が信頼できると判断した情報に基づき構成されておりますが、内容の正確性あるいは完全性については、これを保証するものではありません。また、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。本資料中のコメントはシュローダー独自のものであり、必ずしも一般的なものであるとは限りません。本資料で示した見通しおよび分析結果等は、作成時点の考えに基づくものであり、将来、予告なく変更する場合があります。本資料中シュローダー/Schroders とは、シュローダー plcおよび同社が直接的または間接的に株式または持分の50%以上を保有する会社等の法人を意味します。