臨時レポート

人民元切り下げのユーロ株式市場への影響

2015年08月14日

 中国人民銀行(中央銀行)が人民元の切り下げに踏み出しました。ユーロ株式市場への直接の影響は限られていると思われますが、中国関連事業比率が高いセクターや企業もあり、今後の状況を注視すべきと考えています。

 市場では、今回の中国による人民元の切り下げの背景をめぐり様々な解釈がなされています。その一つが、中国はIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)の通貨バスケットの構成通貨への人民元採用を目指し、より市場連動性の高い為替レートへの移行を図ったというものです。もっとも、市場では人民元の一層かつ急激な切り下げの可能性を懸念し、今回の切り下げは、中国政府が自国経済の一層の減速を予想していることの現れではないかという観測が優勢のようです。結果として、世界経済の成長鈍化を織り込み、投資家のリスク許容度が低下する可能性があります。その一環で、エマージング株式市場への下げ圧力が高まると同時に、コモディティ価格やエネルギー価格への下げ圧力を生む可能性が指摘されます。

 また、デフレ圧力が高まる可能性も指摘されます。中国では生産者物価指数の対前年比の伸びがマイナス5%に達するなど、デフレの事例がみられます。中国発のデフレが他のエマージング諸国へ波及したり、通貨切り下げ競争を招いたりすると、それはユーロ株式に対するリスクにもなり得ます。その点では、一部に指摘されているような通貨切り下げ競争の可能性を完全に否定することはできません。実際、人民元は米ドルに対して5~10%程度過大評価されている、あるいは他のエマージング通貨に対してさらに過大評価されているという試算もあるようです。

 一方、中国からのデフレ圧力の輸出は、欧州中央銀行(ECB)による量的金融緩和策を延長させる要因になり得ることから、ユーロ株式をサポートする材料になることも期待されます。

 ユーロ圏の輸出の約6%、輸入の約10%が対中国という試算があります。これは小さいものではありませんが、ユーロ圏経済にとって域内貿易の方がGDPにとってはるかに重要です。また、人民元の更なる切り下げはユーロ圏の輸出業者にとって逆風となりますが、中国からの安い輸入品の流入がこれを相殺し、個人消費を下支えすることも期待されます。

 過去1年でユーロは対米ドル、対人民元でともに下落しました。結果として、ユーロ圏の輸出業者は、足元の人民元の切り下げという逆風を乗り切るだけの余裕がまだあると言えそうです。

 ユーロ株式に係る詳細なデータは限られていますが、ユーロ・ストックス50指数構成銘柄ベースの時価総額加重売上高の約1割が対アジア太平洋地域で、対中国は数パーセント程度との推計があります。一方で、ユーロ圏関連の売上高が6割程度とみられていることと比較すると、人民元切り下げのユーロ圏の企業収益への影響は穏やかなものに留まると想定されます。

 しかし、個々のセクターや個別企業では、中国へ大きく依存しているものもあります。例えば、高級品・ぜいたく品、ハイテク製品・サービス、自動車、資本財などがそれに該当します。これらにおいては、人民元安(ユーロ高)が企業利益へより大きなマイナスの影響を与えるとともに、競争優位性が脅かされるリスクがあります。一方で、銀行、保険、旅行、メディア、公益、電気通信といったセクターは、ほとんど影響を受けない可能性があります。

 

※ユーロ圏とは、EU加盟国のうちユーロを通貨として採用している国の総称と定義します。ユーロ株式とは、ユーロ圏各国の企業が発行する株式です。

※上記は8月13日(現地時間)現在の情報に基づく見解であり、将来、予告なく変更される場合があります。

 

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