臨時レポート

グローバル債券:2016年の見通し

2015年12月18日

ボブ・ジョリー

ボブ・ジョリー

グローバル・マクロ戦略担当ヘッド

  •  各国中央銀行は国内の金融政策決定に際し国外の市場センチメントをより意識するようになりました。このような政策決定は曖昧さを引き起こすものであり、政策の失敗を引き起こす可能性が高まると考えます。
  • 中央銀行による政策決定に方向感が見いだせない市場環境では、債券市場はよりボラティリティが高まると見ています。
  • 高ボラティリティ環境下における債券投資は、長期的な視点に立った戦略的アプローチよりも、より短期的な戦術的アプローチが適した戦略だと考えます。 

  2015年を通じて、投資家は市場の荒波にもまれる展開となりました。各国中央銀行の政策予想がより難しくなったほか、中国を始めとした新興国経済は減速が続いています。コモディティ価格は上値の重たい展開が続き、通貨市場は利上げを控えた米ドルが強含んだ一方で中国では通貨の切り下げが行われ、ボラティリティが高まっています。これらの出来事は2016年における市場の不確実性を高めることとなりました。我々は根底にあるファンダメンタルズに対しての信認が薄れる可能性は低いと見ているものの、市場における中央銀行の存在感が依然として大きい状態は変わっていません。そのため、我々は不確実性に対応した投資行動を取るべく、中長期的な視野に立った戦略的アプローチよりも、短期的で機動性の高い戦術的アプローチが有効であると考えます。

FRBが債券投資を難解に?

 米国経済のファンダメンタルズは堅調です。製造業においては過剰供給と需要減退による需給ギャップが生まれているものの、その他セクターでは堅調さがうかがえます。労働市場は強い経済指標が並び、消費も堅調であるほか、賃金上昇の兆しも見えています。懸念点をあげるならば、FRBが、新興国を始めとした世界の経済成長に応じる形で金融政策を実施するようになったことです。自国のファンダメンタルズではなく、市場のセンチメントを意識するようになったことで、投資家は市場に対する確信度を弱めざるをえなくなりました。このような状態が続けば、2016年の市場も不安定なものとなるでしょう。

 FRBが2015年末に利上げを行うと見ていますが、米国短期国債市場では織り込みが進んでいない模様です。このため、投資家が利上げへの織り込みを進めれば、債券価格は調整すると見ています。一方、米国長期債(10年債)については、機関投資家(特に年金基金)から年限の長い債券に対して恒常的な買いフローが生まれており、リスク削減効果が働いています。

英国は米国の金融政策を反映する形に

 上記のような事象は米国だけに限ったことではありません。経済の成長見通しが似通っている英国にも同様の事象が当てはまります。世界的な貿易量縮小は英国の製造業に悪影響を与えていますが、堅調な消費関連セクターは経済全体を押し上げています。米国債のように、英国の短期国債は金融緩和政策の終焉に対してセンシティブであり、価格は政策金利が正常化するにつれ調整する可能性があると見ています。我々は中央銀行であるイングランド銀行(BoE)が利上げを開始するのは米国よりも大分遅れたものになるものの、市場が考えるほどに遅くなることはないとの見通しを持っています。一旦FRBが利上げを開始すれば、BoEは利上げに向けてよりタカ派的な姿勢を強めると予想します。

欧州は金融緩和継続へ

 欧州中央銀行(ECB)はデフレ克服のためにあらゆる手段を講じる姿勢をより明確に示し、グローバルな経済成長のダウンサイド・リスクに対して積極的に対応しています。これらのECBの政策に対して、市場は既に肯定的な反応をしています。ECBが意図する金融政策の全体像は未だハッキリとしないものの、預金金利の更なる引き下げと、現在毎月600億ユーロの規模で実施している資産買入れプログラムを、プログラム実施期間と買入れペースの両面から拡大することが予想されます。追加緩和政策が実施されるということは、現在既に史上最高値圏にある欧州債が引き続きサポートされることを意味します。一方で通貨は、対主要通貨で更に弱含む可能性があります。

社債市場には慎重に投資を行う

 社債市場は、各国の金融政策に多様化が見られ始めた環境においても、投資機会を提供する可能性があります。米国では、2015年を通じて投資適格級(IG)社債の新規発行が高水準でした。海外投資家の需要は引き続き堅調ではあるものの、供給過剰によりスプレッドは既に拡大傾向にあります。我々は現在、エネルギー関連と金融セクターに対して投資機会が出てきたと見ています。欧州IG社債市場は2015年を通じ価格は下落しました。欧州圏の経済は回復傾向にありますが、インフレ率と経済成長率は脆弱であり、市場もギリシャ危機と個別発行体の動向を起因としたマイナス成長を経験しました。しかし、我々は市場にストレスがかかる時は同時に好機が訪れると考えており、社債市場には選別投資によって投資機会はあると見ています。

 ハイ・イールド(HY)市場は利上げに対してより感応度が低い状態です。IG社債市場と同様、2015年第3四半期に起きたボラティリティの急騰と、センチメントが悪化し市場がリスクオフの流れとなったことで、HY社債のバリュエーションはより投資機会を提供するようになりました。特に米国では、商品価格の変動に影響を受けやすいセクターについても、十分な分析を進めることによって、ある程度の見通しを持つことは出来ると考えます。

中国におけるニューノーマル

 仮に中央銀行が中国経済の減速に応じて金融政策を変えるのであれば、世界第2位の経済大国である中国経済の弱さは懸念事項です。中国は現在、輸出と製造業を軸とした経済成長モデルから、国内消費とサービス・セクターを軸とした経済成長モデルへと転換する方針を明確にしています。我々はこの中国政府の方針は、中国経済全体を底上げする可能性があると見ています。更に、現在中国で起きている都市化と生産性の向上は、経済成長に留まらず数十年に渡る経済の構造変化をもたらすと見ています。注目すべきはこれらの経済構造の変化が、どのようなタイミングで、どれ程のペースで起きるかであり、中国の通貨政策が今後どのように進むかも含めて、今後の動向を注視する必要があると考えます。

戦略的な債券取引は慎重に

 2016年、グローバル経済は堅調な展開が予想されますが、グローバルな金融市場は実体経済と乖離した展開となる可能性があります。投資家が注目している点は、金融危機後の金融システムを支えるために、中央銀行の動向がどれほど重要な役割を担うことになるか、という点です。現在、中央銀行の意思決定が国内のファンダメンタルズではなく、外部経済のセンチメントによって左右されている状態が続いており、この状態が継続する限り、投資家は長期的な見通しを反映した戦略的アプローチによる取引には慎重になるべきと考えます。

 

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