臨時レポート

日本株式:2016年の見通し

2015年12月18日

前田 正吾

前田 正吾

取締役 日本株式運用統括

  • 景気回復ペースは想定を下回るも、総じてみた経済の方向性は良好であると考えます。
  • 企業収益とコーポレートガバナンスの改善は株価の支持材料になると見込まれます。
  • 引き続き中長期的な企業の利益成長と株価バリュエーションに着目した個別銘柄選択で、超過収益の獲得を目指します。

はじめに

景気回復は十分ではないものの、企業収益の改善が引き続き株式市場の支援材料になる見込み

 2015年の日本株式市場は、景気先行きに対する楽観的な見通しが徐々に縮小したものの、外部環境が厳しさを増す中においても、年初から10%を超える上昇幅を何とか維持してきました。速報ベースの7-9月期GDP成長率がマイナスとなり、見かけ上は景気後退となっているものの、これには日本経済において広範に改善が進む実態が織り込み切れていないと考えます。

 日本株式市場が長期にわたって堅調に推移する見通しをサポートする材料については、幾つも見つけることができます。また、過去には高かった円安と株高の相関が低下し始めていることも有意な材料であると考えられます。日本経済が短期から中期的に直面している課題は多々あり、とりわけアジア地域の経済成長率が鈍化している点については、対外貿易への影響を慮れば、投資家心理への重しとなっています。

適切な経済の方向性

 日本経済は、短期的な景気指標のブレに市場参加者の観測が左右されてきているものの、概ね適切な方向に向かっていると考えています。最近のインフレ指標をみると日銀が目標とする2%に遠く及ばない水準という想定を下回る弱いデータであったとはいえ、デフレ脱却が着実に進んでいるようにみられます。

 労働市場については、失業率が3.1%と過去20年で最低水準にあり、引き続きひっ迫しています。実質賃金は徐々に伸びており、最近の最低賃金引き上げに関する議論の進展によって、消費者マインドの更なる改善が期待されます。なお、インフレ指標が低位にとどまっている背景には、原油価格の低下と中国の成長率鈍化が影響していることは自明です。景気は、様々な要因によってペースが鈍化する場合があっても、引き続き拡大方向にあると考えられます。

政策効果の兆候

 安倍首相の名を冠した「アベノミクス」政策については、景気回復への望ましい効果を示しているかどうか賛否両論、様々な意見が出ています。そのうち「三本の矢」と称される施策については、改革のけん引力が不足しており、これまでのところ市場参加者の好感を得られていません。一方、安倍政権が評価されるべき点としては、日米を含む太平洋岸の12か国によるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を基本的な妥結に漕ぎつけたことが挙げられます。現状では市場はこの効果を十分には見込み切れておらず、また各国議会での批准のスケジュールについても最も見通しが厳しい米国をはじめとして具体的に見えていないものの、世界GDPの4割をカバーする協定への参加によって莫大な恩恵が得られる可能性あります。また、安倍政権は法人減税を着実に進めており、2016年中には実効税率が現状の32%から30%未満に引き下げられることが見込まれます。

 日銀の金融政策については、インフレ率が期待ほどに上昇していなことから、対応余地が狭まっています。当初から掲げているインフレ目標2%については、黒田総裁はその実現に強気の姿勢を公式には保っているものの、現実的にはほとんど不可能であろうことは明らかです。したがって、市場では追加緩和の観測が高まり、日銀の健全性が注視される状態が続くと見込まれます。

企業収益とガバナンスの向上

 国内では、日本企業の収益は堅調に拡大しています。世界的に景気が弱含んでいるにもかかわらず、日本企業を総じてみた今期の企業収益は、前年度との比較でプラスとなることが見込まれています。日本企業の利益成長の見込み額は僅かながら引き下げられたものの、成長の内訳は程よくバランスされ、最近ではグローバル経済など外需に対する依存度が低下傾向にあります。

 コーポレートガバナンスについては、株主からの経営陣への圧力が高まっており、一定の成果が生じ始めています。 2015年になって導入されたコーポレートガバナンス・コードは、疑いなく長期的に日本株式市場の発展に寄与し、安倍政権の業績の一つとなると考えます。取締役会の構成を含む変化は着実に進展しており、いずれは説明責任や資本効率の向上に繋がり、これら全てが株主価値の拡大をもたらすと期待されます。このような企業統治の改善傾向は不可逆的なものであり、具体的な効果として配当性向の向上や自社株買いの増加がみられるようになってきています。シュローダーでは選定した企業のマネジメントとの対話などのエンゲージメント活動を一段と活発化しており、その前向きな成果がみられるようになってきています。

個別企業の投資アイデアに注力

 日本経済について、これまでの経済成長に関するデータは想定よりも弱いものの、総じてみた景気は拡大方向を維持しています。このような低成長・低インフレの環境下では、日本株式市場を底支えする要素は、堅調な企業の利益成長と株主価値の向上です。TOPIXの予想PER(株価収益率)は、現状15-16倍程度の割高とは言えない水準にあります。世界的な経済成長の鈍化については株価への織り込みが十分に進んだとみられ、更に中国の経済成長の鈍化に伴う負の影響については過大に織り込んでいる可能性も考えられます。

 引き続き、社内アナリストによる企業のファンダメンタル・リサーチを最大限に活用した個別銘柄選択を行うボトムアップアプローチを堅持します。

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