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【連載】債券投資手法の再評価(第3回) 金融政策正常化によって有効な債券運用手法の潮流に変化

2018年06月07日

ボブ・ジョリー

ボブ・ジョリー

ヘッド・オブ・グローバルマクロ・ストラテジー

前回までの連載では、金融危機以降続いた金融緩和が、運用においてファンダメンタルズ分析軽視という結果を導いたこと、および純粋なアルファを獲得してきた運用者と、ベータの上昇に頼ってきたにすぎない運用者の区別が困難となったことを指摘しました。

同時に、金融政策正常化の過程で進むマクロ経済ファンダメンタルズの変化が、純粋なアルファ獲得を目指す運用者に対して投資機会を提供し始めており、有効な投資手法としての「リスク・ローテーション型運用」という運用スタイルをご紹介しました。

今回は、「リスク・ローテーション型運用」が、マクロ経済ファンダメンタルズ分析に基づき、どのようなことを考え運用を行っているか、その一部をご紹介できればと思います。

 

「ダウンサイドに対する保険」の消失

これまで中央銀行が行ってきた資産買入れは、投資家にとって「ダウンサイドに対する保険」のような役割を果たしてきました(図表9)。しかし、世界経済が回復し金融政策正常化へ向かう今、投資家はマクロ経済ファンダメンタルズと市場価格の間に存在するギャップが生み出すボラティリティ上昇に備える必要があります。2月上旬にボラティリティが急上昇した際、ニューヨーク連銀ダドリー総裁が「大したことではない」と発言したことは、彼が更なるボラティリティ上昇を予期しているとも解釈できるでしょう。 

我々は、このような環境では、綿密なマクロ経済ファンダメンタルズの分析に基づくリスク・ローテーション型運用が有効と考えており、今回は実際の投資の流れを1つご紹介します(リスク・ローテーション型運用の概略については、第2回の連載内にある“マクロの影響が大きい投資環境を有効活用するためには”をご覧ください)。

マクロ経済のテーマ:物価上昇に対する市場の過小評価

今般、市場が低インフレの状況に慣れ切ってしまったことに対する対応策について、中央銀行や経済学者が議論を活発化させています。換言すれば、低インフレ状況の織り込みが市場で続いていることは、市場が今回の景気サイクルにおけるインフレ上昇余地を過小評価する可能性があることを示唆していると言えるでしょう。では、実際のマクロ経済環境はどういう状況でしょうか。米国では労働市場が堅調であることに加え、多くの国の政府がポピュリズム政党からの圧力を緩和すべく、財政支出の実施や減税策などを行っています。これらは強いインフレ上昇圧力と言えるでしょう。特に米国では、トランプ大統領が財政拡大を推し進める中、市場予想を上抜けて物価が上昇する可能性があると考えられます。

しかし、インフレ上昇に対して悲観的な見方を持つことが容易な環境とは言えます。例えば製造業においては、技術革新がもたらす価格低下圧力は顕著に拡大がみられ、影響がサービス業に波及しています。労働市場では、労働生産性の向上によって、インフレを抑えるために必要な金利の上昇幅は以前に比べ小さくなったと考えられます。財政では、政府(場合によっては家計)が膨大な債務を抱えており、わずかな金利変動が経済に深刻な影響を与える可能性があることを意味していると言えます。これらは、経済学的には、完全雇用の下で経済に対して緩和的でも引締め的でもない実質利子率とされる「自然利子率」が低下した状態であると言えます。

また、国際貿易の活発化や移民労働力の増加は、国内労働力が国内物価に及ぼす影響を減少させる一方、多くの国々の経済において他国がもたらす影響力を増加させています。国外要因が各国内のインフレおよび金利に与える影響は増しており、結果、インフレ目標と整合的に推移すると考えられる「自然失業率」は、近年低下がみられます(図表10)。このように、中長期的には様々なインフレ低下圧力が蔓延していますが、運用者としての投資ホライズンの中でインフレを分析するならば、インフレの上昇圧力は市場が考えるよりも強いというのが、我々の現在の結論です。


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本レポートは、Schroders Investment Management Limitedが海外の機関投資家向けに作成した資料を、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社(以下「当社」)が翻訳・編集したものです。本レポートは、シュローダーのグローバルベースの一般的な取り組み・考え方をご紹介する目的で作成しており、日本の投資者を対象としない内容を含む場合があります。


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