パースペクティブ(約3分)

2023年市場の見通し(グローバル株式/デジタルインフラストラクチャー)

多くの投資家にとって2022年は厳しい環境でしたが、2023年はプラスのリターンが期待されると考えています。

2023年2月10日
nft-digital-art-musuem

PDFはこちら

2022年は、2009年以来、長い期間、継続した強気相場を享受していた投資家にリセットをもたらしました。先進国の中央銀行は、インフレが制御不能になりつつあると結論付け、株式バリュエーションを上昇させてきた、低金利の継続を支持する論調をついに払拭しました。米連邦準備制度理事会(FRB)は、ロシアのウクライナ侵攻後、経済の完全雇用、サプライチェーンの混乱、エネルギー危機を背景とするインフレ圧力を相殺するために、かつてないほど迅速に政策金利を引き上げました。

資金調達コストとエネルギー・コストの増加を受けて、投資家は将来のキャッシュフロー価値を再評価したため、どの企業にとっても困難な状況となりました。2022年に投資家の逃避先はほとんどありませんでした。高成長のテクノロジー企業と資本集約型の実物資産企業は、バリュエーションの再調整の影響を顕著に受けました。バリュエーションの引下げに苦しんでいるにもかかわらず、デジタル・インフラストラクチャー企業のキャッシュフローは、インフレ率とリンクした長期リース契約、堅実なバランスシート、適切に管理されたコスト構造により、回復力を示しました。2022年は、マクロ経済の景況感が急速に悪化したにもかかわらず、多くのデジタル・インフラストラクチャー企業は、記録的な開発前リース契約の獲得と顧客からの低い解約率を維持しました。

サブセクターの見通し

2023年のデジタル・インフラストラクチャー企業の見通しは、新しいテクノロジーの普及が、リース需要を支援するため、ポジティブなものとなっています。デジタル経済の成長でデジタル・インフラストラクチャーへの構造的な需要が高まっていることに加え、ポジティブな見通しを持つ主な理由は、このセクターの上場企業のバリュエーションが落ち込んでいる点です。投資家は、経済が減速し、コモディティのコスト圧力が緩和されるにつれて、これらの企業のディフェンシブな特性に引き寄せられると予想しています。エクイニクス(データセンター)、コージェント(ファイバー)、アメリカン・タワー(タワー)などの経験豊富なデジタル・インフラストラクチャーの運営者は、不況期にも収益と配当を増やすことが可能であることを歴史的に証明しています。過去10年間、これらのビジネスを支えてきた構造的な追い風はそのままですが、デジタルへの接続は現在、ほとんどのユーザーにとって非裁量的な支出項目となっています。企業は、コストを削減するためにクラウド・ベースのITアーキテクチャに移行しており、消費者は生活がオンラインに移行するにつれて、ユビキタス接続を求めており、政府は経済をデジタル化させることで生産性を高めています。

デジタルインフラ

通信タワー企業のキャッシュフローはインフレ率上昇を享受することが可能です

通信タワーセクターでのリース契約は、直近12か月の消費者物価指数に連動することが多いため、2023年には国際的なタワー企業が自律的に収益成長を加速させることが期待できます。このリース契約構造は、通信タワー企業に、デジタル・インフラストラクチャセクターで最も予測可能な成長プロファイルを提供し、主要なテナントであるモバイル・ネットワーク事業者(MNO)のサービス価格の改善によって支援されています。新興国市場における4G展開と、先進国市場での5Gの継続的な展開は、2023年の通信タワーセクターの成長を補完するはずです。通信タワー運営者は、エネルギーとメンテナンスのコストの大部分をモバイル・ネットワーク事業者に転嫁し、テナントの信用力が高いため、デット市場への強力なアクセスを享受しています。この勝利の方程式は、世界のGDPの低迷と企業利益の成長鈍化を背景に2023年には着目されるものと信じています。エリクソンの予測では[2]、新興国市場での通信タワーの成長が最も有望であり、モバイル・ネットワークのデータトラフィックは2022年から2028年にかけて年率25%+で増加すると予測されています。

デジタルインフラ

データセンターは賃料の力強い成長をもたらすと期待しています

データセンター事業者は、クラウド事業者からのテナント需要に牽引されて、2022年も記録的な開発前リース契約を行い、市場を驚かせ続けました。新規施設の開発前に契約されたリースは、今後、12〜24か月で収益を生み出し始め、データセンター開発者にビジネスの可視性を提供します。同時に、主要市場での土地と電力容量の不足は、新規物件の供給を制約する可能性があり、既存施設の稼働率と賃貸料を高める方向に寄与すると考えられます。ガートナーは、パブリック・クラウドサービス市場は2023年にさらに21%成長する可能性があると予測[3]しています。さらに人工知能(AI)ツールは、デジタル経済においてより目に見える役割を果たし始め、より多くのデータセンターのキャパシティが必要になると考えています。ChatGPTは、AIテクノロジーが進歩し続けるにつれてAIシステムに必要な計算能力も増加し続けることを示唆する事例の1つです(OpenAI.comにおけるChatGPTからの引用)。

 

デジタルインフラ

ファイバー・プロバイダーは、デジタル・デバイドを解消する上で重要な役割を果たします

ブロードバンド・インターネット・プロバイダーは、2023年も企業や消費者にギガビットのインターネット速度を提供することに引き続き注力すると思われます。ファイバー・トゥ・ザ・ホームのプロバイダーは、従来のケーブルネットワークから市場シェアを獲得し、消費者は生活費高騰の中で支出を削減しようとしており、よりコストパフォーマンスの良い製品を利用すると考えています。ファイバーは、デジタル経済をつなぐ技術です。工場、病院、オフィスは、新しいテクノロジーを展開するためにインターネット容量のアップグレードを求めるでしょう。また、低軌道衛星が、依然としてインターネットにアクセスできない世界人口の3分の1(27億人[4])を接続する競争に加わりつつあります。2023年には、新たな衛星の打ち上げによりカバレッジと通信容量が向上するため、衛星が世界の安全保障と気候変動対策において、ますます役割を果たすと予想します。

デジタルインフラ

2023年のデジタル・インフラストラクチャー株式戦略の見通し

デジタル・インフラストラクチャー株式戦略は、市場が当該ポートフォリオ企業の底堅い需要特性と、割安となったバリュエーションに再び焦点を合わせることで、2023年にプラスのリターンをもたらすと考えています。残念ながら、景気後退の可能性は世界中で高まっています。中央銀行は、需要減退がインフレ率の鈍化につながることが確認されたら利上げのアクセルペダルから足を離し始めるべきです。より安定したインフレ率と金利環境は、デジタル・インフラストラクチャー企業にプラスの収益成長をもたらし、株価パフォーマンスの上昇につながると考えられます。

2022年にみられたバリュエーション倍率のリセットで、多くの優良な上場デジタル・インフラストラクチャー企業が、過去平均を大きく下回るバリュエーションで取引されています。これは、一部のプライベート資産運用者による、非公開化取引(買収)で提示される高いバリュエーションとは対照的です。上場市場とプライベート市場でのバリュエーションのギャップが続く場合、プライベート資産運用者が裁定取引機会を利用して、上場企業を非公開化することが予想されます。2022年にインドやインドネシアなどの一部の市場はアウトパフォームしましたが、一般的に景気後退の影響を受けにくい新興国市場は、2023年にさらに投資家の資金を引き付ける可能性があります。不確実性が高い中、シュローダーでは、デジタル・インフラストラクチャーの構造的成長の恩恵を受けるのに適した、優良企業で構成されるバランスの取れたポートフォリオを維持する予定です。

[1] 出所:会社情報、Refinitiv
[2] 出所:Ericsson Mobility Report、2022年11月https://www.ericsson.com/en/reports-and-papers/mobility-report/dataforecasts/mobile-traffic-forecast
[3] 出所:Gartner、2022年10月、https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2022-10-31-gartner-forecasts-worldwide-public-cloud-end-user-spending-to-reach-nearly-600-billion-in-2023
[4] 出所:ITU、2022年11月 https://www.itu.int/itu-d/reports/statistics/facts-figures-2022/

 

【本資料に関するご留意事項】 本資料は、情報提供を目的としてシュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社(以下「弊社」といいます。)が作成した資料であり、いかなる有価証券の売買の申込み、その他勧誘を意図するものではありません。本資料に示されている運用実績、データ等は過去のものであり、将来の投資成果等を示唆あるいは保証するものではありません。投資資産および投資によりもたらされる収益の価値は上方にも下方にも変動し、投資元本を毀損する場合があります。また外貨建て資産の場合は、為替レートの変動により投資価値が変動します。本資料中に記載されたシュローダーの見解は、策定時点で知りうる範囲内の妥当な前提に基づく所見や展望を示すものであり、将来の動向や予測の実現を保証するものではありません。市場環境やその他の状況等によって将来予告なく変更する場合があります。本資料は、作成時点において弊社が信頼できると判断した情報に基づいて作成されておりますが、内容の正確性あるいは完全性については、これを保証するものではありません。本資料を弊社の許諾なく複製、転用、配布することを禁じます。シュローダー/Schrodersとは、シュローダーplcおよびシュローダー・グループに属する同社の子会社および関連会社等を意味します。

Topics