インフォーカス(約6分)

2023年市場の見通し(エマージング債券)

2022年はエマージング債券への警戒が高い状態が続きましたが、足元魅力的な投資機会が増えてきたことは注目に値します。

2023年1月19日
hamburg

著者

アブダラ・ゲゾール
エマージング債券・コモディティ運用統括責任者

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エマージング市場は、世界経済成長の鈍化、地政学的な混乱、持続的なインフレ圧力、世界的な金融引き締めを特徴とする非常に厳しい環境に直面してきました。

このようなグローバル市場環境の厳しさから、2022年はエマージング資産に対して慎重なスタンスを取る必要がありました。しかし、エマージング市場の下落の大きさやエマージング国の金融引き締めサイクルの終了が見えてきていることを考慮すると、現在、魅力的な投資機会が現れていると考えています。

あらゆるタイプのエマージング債券ファンドが、前例のない資金流出を経験しました。これは、多くのエマージング国において金融引き締めが進むなかで債券価格が調整した時期と重なります。現在、エマージング債券市場は、これまでの世界的な混乱をおおむね織り込んだ水準にあると考えます。

ここ数年の世界的な混乱は、マクロ経済的ファンダメンタルズが堅固なエマージング国であっても影響を回避することはできず、下落に見舞われる結果となりました。

パンデミック時に大規模なマネーサプライが蓄積されたことを考えると、インフレは持続的になると見ているものの、2023年には世界のインフレ圧力が一時的に緩和されると予想しています。理由としては、足元の世界的な需要減少、CPIにおけるベース効果(前年のインフレ率が上昇したことにより、前年比インフレ率算出時に、比較対象の基準値が高めとなることで変化率に対して下押しの影響が出ること)、エネルギー価格の調整、世界的なサプライチェーンの混乱の大幅な緩和が挙げられます。

米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが米国経済へと影響を及ぼし始め、商業銀行貸出の伸びがピークに達し、クレジット・インパルス(国内総生産(GDP)に対する新規貸し出しの伸び)もパンデミック後の急増の時期が過ぎ、トレンドが変化しているとみられます。

エマージング債券チームのインフレ・モデルによると、すでにインフレ率が顕著に低下している国が増加しており、特に実質金利が高く、中央銀行による利上げサイクルが終盤に差し掛かっているエマージング国では、市場がインフレ低下を好感する動きが期待されます。

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新型コロナウイルス感染拡大や政治的緊張の再燃により、エマージング国のクレジット・リスクは若干悪化したものの、メキシコ、ブラジル、インドネシア、南アフリカといった主要エマージング国は、堅固な国際収支、管理可能な水準の資金需要、割安な実質実効為替レート、規律だった金融政策の枠組み等により、マクロ経済的ファンダメンタルズは堅調です。

この資産クラスはまた、2023年は中国経済の本格的な活動再開に伴う中国の循環的な好転の見通しにも支えられると見込まれます。このような見通しの改善は、エマージング経済成長見通しが数年ぶりに先進国対比で優位となっていることからも見て取れます。

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このようなエマージング経済成長見通しの相対的な改善は、まだエマージング資産の評価に反映されておらず、歴史的な低水準で取引されています。特にエマージング・ハイイールド債券にこの傾向が見られ、このサブセクターのバリュエーションは過去の危機時にのみ見られたような水準にまだ位置しています。

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信頼できる政策的枠組みを有し、マクロ・ファンダメンタルズが強固な国の現地通貨建ておよび米ドル建てエマージング債券は、高水準の利回りによって魅力的なリターンを提供すると予想します。これまでエマージング債券に対して警戒してきた投資家も目を向けるべきタイミングだと考えます。

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アブダラ・ゲゾール
エマージング債券・コモディティ運用統括責任者

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