マクロ経済見通し 2018年9月

シュローダーのエコノミスト・チームによる、マンスリー・マクロ経済見通し

2018年8月24日

著者

キース・ウエ―ド
チーフ・エコノミスト
アザド・ザンガナ
シニア欧州エコノミスト兼ストラテジスト
クレッグ・ボサム
新興国市場エコノミスト
基本シナリオ
 世界

2018年の世界経済成長見通しについては2017年から横ばいの3.3%、2019年については3.0%にやや減速すると見込んでいます。インフレ見通しについては2018年、2019年ともに2.7%(2017年は2.3%)に上昇すると見込んでいます。また2018年の米国コアインフレ率は2%を超える水準に回復する見通しで、世界経済は景気循環において拡大局面が続くと考えます。

 米国

2018年の米国経済成長見通しは、トランプ大統領の財政面での景気刺激策の効果を加味し2.8%程度、2019年は2.4%を見込んでいます。米連邦準備制度理事会(FRB)は保有資産の縮小に着手しており、コアインフレ率が上昇する中、FRBは2018年に4回、2019年に2回の利上げを実施し、政策金利を3.0%まで引き上げると予想しています。

 英国

2018年の英国経済成長見通しは、ブレグジット(英国の欧州連合(EU)離脱)による不透明感が景況感の足かせとなり、1.2%に減速すると見込んでいます。インフレ率については、2017年に押し上げ要因となった英ポンド安の影響が薄れる一方、エネルギー価格や国内要因主導となることが見込まれることから2.4%程度にまでやや落ち着くとみています。なお、2019年の見通しについては、ブレグジットの影響から不透明であると考えていますが、移行期間は現状のEU単一市場と関税同盟が維持される形でEUと合意に達すると想定しています。尚、イングランド銀行(BOE、英中央銀行)は、2018年内は政策金利は据え置く一方、2019年に2回の利上げを実施すると予想しています。

 ユーロ圏

2018年のユーロ圏経済成長見通しは2.0%、2019年は1.7%にやや減速することが見込まれますが、全体的に力強い経済が維持されると考えます。イタリアの政治リスクの再燃はボラティリティの上昇要因となるでしょう。インフレ率は2%以下で推移し、2018年はエネルギー価格の上昇、2019年はコアインフレ率の上昇が見込まれます。欧州中央銀行(ECB)は、2018年12月に量的緩和政策を終了する見通しで、2019年に利上げを開始し、リファイナンス金利を0.5%、中銀預金金利を0.0%まで引き上げると予想しています。

 日本

2018年および2019年の日本経済成長見通しは、1.0%(2017年は1.7%)を見込んでいます。インフレ率については、原油価格上昇の影響から2017年の約2倍にあたる0.9%に上昇すると予想しています。日本銀行は7月の金融政策決定会合で長期金利の変動の容認しており、2019年末までは政策金利を据え置くと考えています。

 エマージング諸国

エマージング諸国経済見通しに大きな変化はなく、2018年は5.0%、2019年は4.8%にやや減速すると見込んでいます。中国の国内総生産(GDP)成長率については長期的には緩やかに減速することが見込まれるものの、貿易戦争の動向によっては減速がより早まる可能性もあると考えます。

今後想定される他のシナリオ

基本シナリオ以外で今後考えられるシナリオとしては、「貿易戦争:欧米 対 中国」、「原油価格の100ドル水準への回復」、「イタリア債務危機」などを要因とするスタグフレーション*・リスク・シナリオが挙げられます。その他のシナリオとしては、「景気循環における一時的な調整」を要因とするデフレ・リスク・シナリオや、「世界貿易の自由化」を要因とする生産性向上シナリオ、「トランプ政権下での経済政策」や「世界的な財政支出の拡大」を要因とするリフレーション** ・リスク・シナリオなどが挙げられます。

*スタグフレーション:景気後退と物価上昇が同時に起こること
**リフレーション:デフレーションからは脱したが、インフレーションには達していない状態 

世界の実質GDP成長率見通し



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