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特別対談

ESG

~将来の勝ち組企業選別に不可欠な視点

シュローダー 日本株式チーム ファンドマネジャーの豊田一弘が、BSテレ東「日経モーニングプラス」キャスターの八木ひとみ氏とESGをテーマに対談しました。3回シリーズでお伝えします。

第1回 なぜ、今、ESG投資?

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八木氏:

少し前から、BSジャパンの経済番組「日経モーニングプラス」でも「ESG投資」というキーワードを使うようになってきています。環境(Environment)のE、社会(Social)のS、ガバナンス(Governance)のGをとって「ESG」と、言葉では分かるのですが、これを投資に結びつけて考えると「???」となってしまいます。

最近は、欧米の企業などでプラスチックストローを廃止しようという動きがありますが、これも環境への配慮という点では、ESGの関連になるのかと思います。どうして今、資産運用の世界でESGが注目されてきているのでしょうか?

プロフィール:2008年4月に山口朝日放送へアナウンサーとして入社後、2010年12月に退職。2018年3月からBSテレ東にて、忙しい朝を送る出社前のビジネスパーソン、老後の資金を運用するシニア層、主婦層などを主なターゲットに、「ニュース」「マーケット」「マネー」に徹底的にこだわった最新情報を提供する「日経モーニングプラス」にメインキャスターとして出演中。

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豊田:

将来の勝ち組企業を探すとき、ESGが欠かせない尺度であるからだと考えています。投資先を決めるために企業を評価する材料としては、利益率やキャッシュフロー、バランスシートなど、企業業績を示す財務情報が真っ先に思いつくでしょう。確かに財務分析は重要ですが、過去の実績から予測できるのはせいぜい数年先くらいで、長期投資を行うために10年、20年先の企業の姿を見通すには限界があります。そこで、将来の企業の成長性をはかる尺度として使われるようになってきたのが、「ESG」です。

今、社会や環境はかつてない速さで変化し、気候変動や人口動態の変化、技術革新などが、世界のあり方そのものを変えるような時代にあります。企業が成長を続けるためには、本業で実績を積み上げていくだけでなく、企業を取り巻く環境の変化に対応し、直面する課題を解決していく必要があります。その課題が集約されているのが「ESG」です。今、ESGを考慮せずに、企業の長期的な成長を語ることは難しいといえます。例えば、現在キャッシュフローを生んでいる資産であっても、長期的な需要の減退により、将来は座礁資産となり利益を生み出さなくなる可能性があります。企業がESGの課題にどう向き合っているのかを評価することによって、将来の勝ち組企業を見極めることができる、と考えています。

ウィンウィンの関係構築で中長期的な企業価値を最大化

八木氏:

概念としては理解できますが、投資家目線では、企業がESGの課題に取り組むことが本当に利益につながるのか?ということが気になってきます。

豊田:

ESGの課題解決を、企業をとりまく関係者との関係構築、と考えるとスッキリするのではないでしょうか。企業には、株主以外にも、顧客や従業員、地域社会など、多くの「関係者(ステークホルダー)」がいます。今、企業が成長を続けるには、これらのステークホルダーと良好な関係を築くことが不可欠となっています。

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ESGには、ステークホルダーとの間で企業が直面する課題が集約されています。例えば、日本では、労働力不足によって優秀な人材の獲得が企業にとって重要な課題となっています。競争力の高いビジネスモデルや商品を有する企業でも、労働環境が悪く離職率が高いと、優秀な人材の確保が難しくなり、生産性を高めて中長期的に成長を続けることが難しくなると予想されます。これはS(社会)の観点です。また、不祥事によって、築き上げてきた評判を一瞬にして落としてしまった企業の例は最近でも見られますが、それらはG(ガバナンス)に問題があったといえます。先ほどのプラスチックストローの例はE(環境)ですね。環境への配慮が薄いと、評判を落としたり不買運動に発展したりするなどのリスクがあります。

八木氏:

企業は具体的にどんな取り組みをしているのでしょうか?

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豊田:

面白い「S」の取り組み例では、「ピアボーナス」という仕組みを取り入れている企業があります。従業員に、それぞれ、例えば月間3,000円などの予算が与えられ、「いい仕事」をしたと思う社員に、自分の予算からボーナスを与えるのです。お互いに評価し合うことによって、これまで見えていなかった人の仕事ぶりが「見える化」され、陽が当たらなかった人に陽が当たるなどの効果も出てきます。これが従業員のやる気を高める、というわけです。

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八木氏:

そういった新しい取り組みにはコストがかかりますよね。追加コストは企業にとってマイナスではないでしょうか?

豊田:

一時的にはおっしゃるとおりです。しかし、5年後、社員のやる気を高める取り組みによって優秀な人材を囲い込めた企業と、何もせずに優秀な人材を失ってしまった企業とでは、どちらの企業価値が高いでしょうか?また、低コストでできる取り組みに知恵を絞ることだってできます。中長期で企業価値を高めるために、重要なのはバランスです。パイの奪い合いのように、特定のステークホルダーに大きく配慮したことによって他のステークホルダーにしわ寄せがいく場合、その成長は持続的ではないのです。利益ばかりを追求し、従業員への配慮がないブラック企業や、仕入れ先に不当な安値を要求する企業はその一例といえるでしょう。バランスよくステークホルダーに配慮し、上手にウィンウィンの関係を築くことで、中長期的にパイのサイズを大きくできる、つまり、企業が成長できると考えられます。

八木氏:

なるほど、アンテナを高くはって工夫をすることに頭を使わない企業は、将来の成長を逃してしまうことになってしまうのですね。

次回は、ESG投資がパフォーマンスにつながるのか?というギモンを更に掘り下げていきたいと思います。