日本株運用者の視点

日本独自のコーポレートガバナンス確立に向けて

2019年7月12日

ネイサン・ギブス

ネイサン・ギブス

日本株式インベストメント・ディレクター

日本におけるコーポレートガバナンス改革は独自の強い勢いを持ち、大きく発展してきました。このトレンドを作った安倍政権は称賛されるべきだと思います。コーポレートガバナンスコードとスチュワードシップコードの導入により、経営者と株主のやりとりは構造的に変わりました。この変化のうち、測定可能なものもあります。複数人の社外取締役を選任している企業の割合もその1つです。また、配当や自社株買い等、総還元性向の変化を見ることでもこの変化を確かめることができます。景気サイクルによって収益成長が減速し始めた今年においても、配当や自社株買いが前年より増加したことは、日本のコーポレートガバナンス改革および日本株式市場に更なる自信を持つきっかけとなりました。測定が困難な変化もあります。例えば、経営陣と投資家とのやりとりの質や経営陣による資本政策に関する説明等です。これらを数値的に評価することは難しいですが、企業の長期的な価値創造力と同様に重要な要素だと考えます。ここ数年で我々の運用現場においても企業訪問などを通じて、経営者と株主である私ども投資家とのやりとりにおいて改善傾向が見られました。これにより、我々を含めた投資家は、対話を通じて今後ポジティブな変化を期待できると考える企業とのエンゲージメントにより多大な時間と労力を投資するようになりました。

一方で、特に外国人投資家の間では、企業の改革スピードが遅い、との不満を感じている例も見受けられます。しかしながら、時間をかけて改革することが大事な時があることを認識すべきだと考えます。例えば、社外取締役の選任において、数的要件を満たすことは簡単ですが、社外取締役の質を高めることは一筋縄ではいきません。こういったとき、我々投資家は企業に社外取締役の人数を増やすことだけを迫るべきでしょうか。改善のスピードが多少減速してでも、社外取締役の質を重視すべきではないでしょうか。社外取締役は、少数株主の利益の保護という重要な責務も担っているため、その選任はとても重要です。企業活動、グループの再編が増加する今日において、少数株主の法的保護、独立社外取締役から経営陣への懸念表明等の重要性は増しています。

コーポレートガバナンスの様々な側面において、日本は他の先進国市場に追いつこうとしています。このためには何十年にもわたりガバナンスポリシーを進化させてきた英国やドイツ等、海外のベストプラクティスを採用することが賢明です。しかし、追いつくだけではなく、いくつかの項目においては日本が欧米に対してベストプラクティスになるように努力すべきです。例えば欧米においては過剰な例が見られるCEOの報酬等において、日本独自の道を踏み出すことを恐れてはいけません。日本でよくみられる長期的な枠組みの中で、経営陣と株主の利益が合致するような仕組みを考えることができれば、欧米よりはるかに強力で持続可能なビジネスモデルを生み出すことができます。

日本企業は、少なくとも理論的には取締役や委員会をすぐにでも多様化しやすい制度、環境にはあると思います。しかし、取締役候補となりうるような経験豊富な人材のプールが比較的小さいため、こうした制度的な優位性を生かせるかはまだ今後の課題であると考えます。

 

  本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

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