日本株運用者の視点

サステナビリティと航空業界


森 弘美

森 弘美

日本株式 セクターアナリスト

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2019年は環境活動家のグレタさんが米タイム誌の「今年の人」に選出されるなど、世界中で環境問題への関心がかつてないほどに高まった年でした。また、今の学生は気候変動、海洋汚染、森林破壊などについて詳しく学んでいると聞きますし、最近では未就学児向けにすら国連SDGsをストーリーに盛り込んだ機関車トーマスのアニメ番組が放映されているなど、サステナビリティを重視する傾向はますます強まっています。若い世代の意識・行動が大きく変化する中、企業のサステナビリティ対応はもはや必要不可欠であり、アナリストとして調査対象業界における環境対応の成否や業績への影響を見極めることがより求められていると感じています。

全人類の活動によって生成されるCO2の約2%を排出していると言われる航空業界では、CO2をオフセットする取り組みが2021年から導入されることが決まっています。2016年に国連の一機関である国際民間航空機関(ICAO)が、CO2などの温室効果ガスの排出量純増を伴わない航空業界の成長を公約したことがその背景となっています。この動きをうけ、同枠組みに自主参加する80以上の国々で運行する航空業界では、各社がCO2に応じた排出枠を購入し、その資金が温室効果ガスの削減活動などに充てられることにより、自社排出のCO2が相殺される取り組みを始めます。

現時点では欧州域内の比較的距離の短い路線のみに限定されているものの、環境対応で先行する欧州では同様な仕組みが既に導入されています。消費者が購入する航空券一枚当たりの排出枠購入費用は1~1.5ユーロ程度とごくわずかな上、基本的には利用者に転嫁されているとも言われています。一方で排出枠取引市場の仕組みを利用して数年分の負担額を固定している企業もあるなど、各社の対応も一様ではないようです。いずれにせよ、「飛び恥」なる言葉が注目を集めたように、環境面への配慮は必要不可欠との利用者側の認識も深まっており、今後更にこの仕組みは受け入れられるでしょう。

2021年以降、この仕組みは欧州域外を含むすべての国際線にも適用されますが、詳細はまだ明らかではありません。しかしながら環境対応とそれに伴う費用とその負担割合は、今後の利用者の意識変化、航空業界の供給量増加、代替燃料の入手可能性、省燃費機材の採用、カーボンオフセット市場や排出枠取引市場の設計など、様々な要因によって決まっていくことと思われます。今後は日本のみならずグローバルの航空業界動向にも更なる注意を払い、私の調査対象企業におけるサステナビリティ対応が企業業績・企業価値へ与える影響を見逃さないよう努めて参りたいと思います。

 

  本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

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