日本株運用者の視点

新型コロナウイルスと日本の医療業界


佐藤 円香

佐藤 円香

日本株式 セクターアナリスト

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長く製薬産業担当のアナリストをしています。これを執筆しているのは新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて発令された緊急事態宣言の延長が決まった直後です。

我が国の医療は世界でも突出した高齢化率の割には対GDP社会支出の比率が長期に亘ってうまくコントロールされており、医療へのフリーアクセスや国民健康保険の枠組みがしっかりと維持されている良い仕組みだと感じます。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の報道で各国の医療現場の様子を知る機会が増えました。そこで久しぶりに諸外国と我が国の医療供給の違いについて考えてみました。

日本には160万をこえる病床があり、人口1000人当たりのベッド数は13.1で米国の2.8、英国の2.5など他の先進国の水準を大きく上回ります。もう一つ目を引くのが急性期病床数です。人口比では1000人当たり7.8と概ね2から3の間に収まっている他国と比べて顕著に高い水準です。ところが医師数を比較すると1000人当たり2.4人で先進国の中で上から数えて32番目、OECDの平均の3.5人と比べてもかなり低めです。もう一つ、調べて驚いた点はICUのベッド数が人口10万人に対して7.3床と米国の34.7床、ドイツの29.2床と比べてもかなり低水準であることです。この辺りが非常時の医療のひっ迫状況に大きく関わっていそうです。

加えて日本でのオンライン診療の普及率は「世界から取り残された」という表現が使えるのでは、と感じるほど低いまま推移しており、その差は拡大する一方です。我が国では2018年4月より規制緩和によって保険請求可能となったものの、何がその普及を妨げているのでしょう。実は算定のためにクリアしなければならない要件が厳しすぎること、そして請求できる点数が低すぎて医療機関にとってはオンライン診療の導入が経済的デメリットを招いてしまうという障壁があるのです。

証券市場では既に新型コロナウイルス後の世界がどう変わるかについての議論が始まっています。医療の世界でももちろん今回の危機を引き金として改善される点が多くあるでしょう。それらの変化を経て、より良い社会が実現されることを願いつつ、新たな時流を追い風として成長のきっかけをつかむような面白い投資先発見を心掛けて日々過ごしたいものです。

 

  本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

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