日本株運用者の視点

変わる赤字企業の評価


髙橋 浩太

髙橋 浩太

日本株式 小型株ファンドマネジャー兼アナリスト

すべて見る

ここ数年、新規に株式公開する企業のうち赤字企業の割合が増えております。赤字上場が増えたのは、企業や投資家が当面の利益よりも将来を見据えた先行投資を重視する考えを強めた背景があります。日本では赤字企業が評価されないことが多かったですが、将来の成長が見込めるため短期的に赤字でも評価される企業が出てきています。理屈の上では株価は将来の利益の割引現在価値の合計であると考えられていますが、特にネット関連企業の場合はサービスの急拡大局面では利益が低水準であることが多く、新しい技術やサービスが業績を牽引している場合は将来の利益を予測することが困難です。結果としてPERやPBR等の一般的な投資尺度でネット関連企業の株価を評価することが難しくなり、ネット株のバブル時にはPERを利益の成長率で割って計算するPEGレシオや株価売上高倍率であるPSR等の新しい投資尺度で高い株価を正当化する試みが起きました。最近ではSaaS型のサービスを提供する企業の評価指標として、売上高の伸び率と売上高フリーキャッシュフロー比率を足して40パーセントを上回っていれば投資適格とする40パーセントルールが出てきました。これはネット関連企業のような業績変化の大きい銘柄では、現時点や近い将来の利益水準は参考にならないという考え方が背景にあります。

一方で、最近では赤字上場への株式市場の評価が厳しくなってきています。米国ではユニコーンと呼ばれる未上場の成長企業が上場後に失速する事例が目立ち、投資家が慎重姿勢になってきました。赤字を前提とした事業拡大が難しくなっているため、米国のユニコーンは相次いでリストラに踏み切って損益改善を急いでいます。赤字企業に対する投資家の見方の変化を受けて、日本でも採算を重視する戦略への転換を目指す動きが出ています。ネット関連株の投資判断においては、利益の実現性とその持続性を客観的に評価することが極めて重要なことに変わりはありません。新しいサービスや技術への期待値は高くなりがちですが、成功の確率や収益性に関しては冷静に評価する必要があります。また技術の変化が早く、ビジネスモデルの寿命が短い可能性もあります。特にネット企業に関しては参入障壁が低いケースも多く、類似のビジネスモデルがすぐに立ち上がってきますので、急成長して一時的に大きな利益が出ていても、その後短期間で収益性が低下するケースが散見されます。投資家は健全な赤字を容認しても、赤字を垂れ流す企業や全体は黒字でも赤字部門を抱え続ける企業などの評価は厳しくなります。

今後も高いバリュエーションが付与されている一部の銘柄は引き続き神経質な動きが想定されますが、相場の調整が一巡して株価上昇の過熱感が薄まれば、ビジネスモデルの優位性や利益成長の実現可能性で再評価される銘柄が出てきます。ファンダメンタルズが引き続き良好に推移すると考えられる銘柄は、足元の軟調な相場は魅力的な投資機会になります。引き続き新しい技術やサービスが続々と出現することが期待できる分野であり、長期的な視点と綿密な調査で有望な銘柄を発掘していきたいと思います。

 

  本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

【本ページに関するご留意事項】 本ページは、情報提供を目的として、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社(以下「弊社」といいます。)が作成、あるいはシュローダー・グループの関係会社等が作成した資料を弊社が和訳および編集したものであり、いかなる有価証券の売買の申し込み、その他勧誘を目的とするものではありません。英語原文と本ページの内容に相違がある場合には、原文が優先します。本ページに示されている運用実績、データ等は過去のものであり、将来の投資成果等を示唆あるいは保証するものではありません。投資資産および投資によりもたらされる収益の価値は上方にも下方にも変動し、投資元本を毀損する場合があります。また外貨建て資産の場合は、為替レートの変動により投資価値が変動します。本ページは、作成時点において弊社が信頼できると判断した情報に基づいて作成されておりますが、弊社はその内容の正確性あるいは完全性について、これを保証するものではありません。本ページ中に記載されたシュローダーの見解は、策定時点で知りうる範囲内の妥当な前提に基づく所見や展望を示すものであり、将来の動向や予測の実現を保証するものではありません。市場環境やその他の状況等によって将来予告なく変更する場合があります。本ページ中に個別銘柄、業種、国、地域等についての言及がある場合は例示を目的とするものであり、当該個別銘柄等の購入、売却などいかなる投資推奨を目的とするものではありません。また当該銘柄の株価の上昇または下落等を示唆するものでもありません。予測値は将来の傾向を例示することを目的とするものであり、その実現を示唆あるいは保証するものではりません。実際には予測値と異なる結果になる場合があります。本ページに記載された予測値は、様々な仮定を元にした統計モデルにより導出された結果です。予測値は将来の経済や市場の要因に関する高い不確実性により変動し、将来の投資成果に影響を与える可能性があります。これらの予測値は、本ページ使用時点における情報提供を目的とするものです。今後、経済や市場の状況が変化するのに伴い、予測値の前提となっている仮定が変わり、その結果予測値が大きく変動する場合があります。シュローダーは予測値、前提となる仮定、経済および市場状況の変化、予測モデルその他に関する変更や更新について情報提供を行う義務を有しません。本ページ中に含まれる第三者機関提供のデータは、データ提供者の同意なく再製、抽出、あるいは使用することが禁じられている場合があります。第三者機関提供データはいかなる保証も提供いたしません。第三者提供データに関して、弊社はいかなる責任を負うものではありません。シュローダー/Schroders とは、シュローダー plcおよびシュローダー・グループに属する同社の子会社および関連会社等を意味します。本ページを弊社の許諾なく複製、転用、配布することを禁じます。