経営陣のコミットメント


竹爪 正樹

竹爪 正樹

日本株式 ファンドマネジャー

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新型コロナウイルスの世界的な流行は、世界各国の政府に多くの困難な課題をつきつけ、それらへの対応を通じて、自国民からの高い評価を受けた指導者もいれば、逆に支持を失った指導者もいました。「政治は結果責任」ならば、感染者数や日常生活への制限度合いなどの「結果」においては、日本政府は称賛に値するべきなのでしょうが、政府への支持率は逆に低下しました。その理由はいろいろあると思いますが、一つには日々の政府からの発表が、「コミットメント」をあまり感じさせないものだったなど、メッセージの伝え方の問題もあったのではないかと思います。

さて、4月から5月にかけて多くの日本企業が年度決算を発表しましたが、新型コロナウイルスによる世界景気の先行き不透明感を理由に、大半の企業が今年度の業績見通しの発表を見送るという、やや異例の事態となりました。しかし、そうした中でも、あえて今年度の業績見通しを公表する企業も散見されました。ほとんどの場合、公表された業績見通しの数値は、事前の市場の期待値を大幅に下回るものが多かったのですが、その後の株価の反応は好意的なものが多かったと感じられます。通常であれば、市場の期待値を下回るような業績見通しは、ネガティブサプライズと見なされ、株価は下落することが多いです。しかし、今回の場合は、先行き不透明感が非常に高い中、あえて業績予想を開示し、その説明の中で、経営陣が事業環境の認識や経営戦略などのメッセージを真摯に伝えたことが、株式市場での高評価につながったと思われます。例えば、ある企業は、厳しい業績予想とともに、赤字に陥った2008年の金融危機を上回る売上減少を見込む中で、コスト削減などの緊急対策を取らなくても、黒字が維持できるほど収益体質が強化されたことを強調しました。別の企業は、業績予想と併せて、新型コロナウイルスの収束状況に応じたいくつかのシナリオを準備し、それに基づいた綿密な経営対策を示すことで、経営管理能力の高さや意思決定スピードの速さを再確認させました。これらの例のように、先行き不透明感が高い経営環境においても、経営陣が、自らの環境認識や経営対策などのメッセージを確りと伝えることで、経営陣の「コミットメント」の高さが確認され、その後の株価の高評価に繋がったと思います。また、このように経営陣から確固たるメッセージが伝えられた企業の多くは、日頃から経営の質に対する評価が高く、優良な長期投資の対象と見られている企業である場合が多かったと思います。

新型コロナウイルスの影響による世界景気の低迷を考えると、当面の企業業績は全般に厳しい状況か続くと予想されますが、そうした業績の数字だけに捉われることなく、経営陣からのメッセージを見逃すことなく、その背後にある経営判断をしっかりと評価し、日々の投資活動に挑んでいきたいと思います。

 

  本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

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