新型コロナウイルスとESG


今回は、新型コロナウイルスと日本企業が取り組むESGについて考えてみたいと思います。

最初に環境(E)についてです。今年の化石燃料に由来するCO2排出量は新型コロナウイルスの感染拡大によって最大7%減となり、第二次世界大戦後の最も大きな前年比減少となる見込みだとする研究論文が出ています。この7%という数字は、工業化以前と比べて地球全体の平均気温を1.5%に抑えるために必要な年平均の減少率と整合的です。言い換えると、「非連続的」なアプローチやビジネスモデルの大転換がなければ、1.5%の達成は非常に難しいことを私達は身をもって体験したということです。このような状況の中、役員報酬のKPIにCO2排出量を取り入れたエネルギー関連企業の取り組みは注目に値します。

次に社会(S)についてです。新型コロナウイルスは、”S”の中で最も重要なステークホルダーと考えられる「従業員」と企業との間に様々な課題を提起することになりました。リモートワークなどの対応がとられる中、企業価値に直結する課題として従業員の労働生産性に注目が当っています。この困難な事業環境の下、マネジメントがいかに従業員エンゲージメントを進められるか、即ち、従業員の働くモチベーションの維持・向上を図ることが出来るか、という点で企業間格差は一層広がるものと見られます。その雌雄を決するのはやはり経営トップのリーダーシップであり、そのコメントには特に注意しています。

最後にガバナンス(G)です。株式投資のリターンは配当と株価上昇によるキャピタルゲインですので、投資家にとって配当は最大の関心事の一つであると言えます。今回、配当水準の決定においても企業間で差異が見られました。同じ業種で、同じような財務体質であっても、一方は配当維持、他方は大幅減配といった具合です。株式市場の反応ですが、配当を維持すると見られていた会社が減配とされた場合、大きな株価調整に繋がったケースが多くありました。つまり、バランスシートが強固な日本企業にあっては、これまでの還元水準が低かったこともあり、投資家は一定の還元維持を期待しているということだと思います。

このように見てくると、新型コロナウイルスは、日本企業のESGの取り組みを「ポーズとしてのESG」と「企業価値向上のためのESG」という2つのカテゴリーに峻別するリトマス試験紙になるのではないか、と私は考えています。

 

  本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

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