ホールドするか、フォールドするか


アメリカのカントリーミュージシャン、ケニー・ロジャーズの「The Gambler」はカントリーの名曲で、私のお気に入りの一つです。この曲は、ある若い男が電車の中で会った年老いたギャンブラーから人生のアドバイスを受けるという話です。曲の中の、有名な一節に「あなたは、いつホールド(保持)すべきか、いつフォールド(降りる)すべきか、いつあきらめるべきか、いつ逃げるべきか知っているべきだ。タイミングが大事なんだ。」というアドバイスがあります。この歌詞を歌うのも楽しいですが、このアドバイスは投資にも当てはまると考えています。

まず、株式リサーチに当てはまると思います。その企業にはどのような魅力があるか?現在の市場評価はその企業の本質的な価値に対して割安か?その企業特有のカタリストがあるか?その企業は競争上優位性を持っているか、またはそのビジネスに参入障壁があるか?長期保有できる銘柄か?もし、リサーチしている企業がこれらの基準を満たしていない場合はフォールド、つまり「あきらめる」、もしくは急いで「逃げる」必要があります。

また、ポートフォリオ運営にも当てはまります。綿密な株式リサーチを経てその企業が基準を満たすことを確認し、ポートフォリオに組み入れたとしても、我々は継続して株式を保持し続けるか、またはフォールド(売却)する必要があるかどうかをモニタリングする必要があります。人間は損失回避性、つまり、損失をより回避したいという傾向があると言われています。このため、株価が何らかの明確な理由で下落した場合でもフォールド(売却)して他の投資機会を追求するのではなく、損失が実現しないように反発するのを待って保有し続けることがあります。これは長期投資家の最大の罪の一つだと思います。もし、ファンダメンタルズに変化がない場合は株価が下落してもホールド(保有)し続ける意味がありますが、ファンダメンタルズが本当に変わっていないか、自分にバイアスにかかっていないか、その判断は慎重に考えなければなりません。

最後に、どういったタイミングで事業をホールド(保持)するか、あるいはフォールド(撤退)するかといった判断力は、私たちが投資先企業の経営陣に求めるべき特徴でもあります。私はアナリストとして化学、鉄鋼、石油、商社のセクターを担当していますが、歴史的にこれらの業界の経営陣は、同業他社との競争に直面した際に、レガシーと言える事業をホールド(保持)すべきか、フォールド(撤退)すべきかを見極める判断力に優れていたとは言い難かったと思います。しかし、一部の企業においてこうした状況は変化しており、この見極めに長けた経営者が出てきていると見ています。例えば、ある化学メーカーは化学品事業を再編、ディスプレイ事業を「キャッシュカウ」に転換し、経営資源を半導体・ライフサイエンス事業の成長に集中させています。また、総合塗料メーカーでROIC経営を実践し、資本コストや成長目標を満たさない子会社の閉鎖や売却を進めている会社もあります。他にも、ある鉄鋼大手は競争力の弱いプラントを休止すると発表しました。休止が決定されたプラントの土地はこの企業の時価総額以上の不動産価値があるとみられ、経営陣の判断は企業価値向上につながると市場から評価されています。このような企業、そして経営陣の変化を目にするようになり、日本の経営陣は着実に効率性重視、そしてステークホルダー重視に変わってきていると考えています。日本企業の経営陣は「いつホールドすべきか、いつフォールドすべきか」の判断、つまりこのゲームに長けてきたのではないでしょうか。

 

  本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

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