気候変動対応は「公正な移行」を目指して


今年の夏は、世界各地での猛暑や干ばつといった気候変動の影響が示唆されるような出来事が多くありました。本来であれば、このような物理的影響は気候変動対応の大きく加速を促すものと考えられます。しかし、ロシアのウクライナ侵攻により気候変動対応のあり方に大きく変化が起きています。欧州を中心に多くの国がエネルギー危機に直面し、石炭回帰や原子力発電利用に関する議論も再燃しています。地政学リスク等の要因により、マルチステークホルダーへの影響を考慮した脱炭素社会への移行がより一層重要性を増しています。

ここで注目すべきは、「Just Transition(公正な移行)」という概念です。決して新しいコンセプトではありませんが、元々は脱炭素社会への移行の中で、産業の転換に伴うスキルのニーズ変化や事業撤退・操業停止により影響を受ける人々のことを考慮した移行を目指すというものです。2022年の文脈に戻すと、エネルギーや資源供給の混乱が懸念される中、従業員や地域住民、顧客、サプライヤー、株主を含めた多様なステークホルダーへの影響を考慮した移行計画を立てることが望ましいと考えています。事業会社の温室効果ガス排出削減計画は、年々きれいな下降ラインを描くことにはならないことが現実です。よって、目標達成への取り組みを詳しく説明し、即座に対応が困難な場合であればどのタイミングで対応を取っていくのか、どのような施策なのか、このような移行に関する開示は事業会社の温室効果ガス削減目標を理解する上で重要なものです。また、投資家はマルチステークホルダーへの影響も意識した気候変動分析や投資先とのエンゲージメントが必要と考えています。

長期的に見ると、パリ協定が掲げる世界の平均気温上昇を2℃以下、できれば1.5℃に抑えるという着地点は変わりません。先行きが不透明な中でも、世界では脱炭素の流れが続いています。エネルギー危機に直面する欧州では、脱ロシアを目指すRePowerEU計画により、水素社会の実現に大きく舵を切っています。米国では、今年8月に成立したインフレ抑制法に気候変動対策が盛り込まれました。もちろん日本でも、GXリーグの発足など脱炭素へ向けた様々な取り組みを始まっています。日本では2020年に政府が行ったカーボンニュートラル宣言により、民間でのネット・ゼロ目標の設定も当たり前のことになってきています。一方で、コミットメントの次の段階である、移行計画の公表にはまだ改善の余地があると感じています。日本企業が脱炭素社会に向けてどのように他のステークホルダーとのバランスをとるのか、気候変動対策をグローバルにアピールができるのか、これから注目です。

  本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

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