2020年市場見通し

日本株式


前田 建

前田 建

日本株式運用 総責任者

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  • マクロ経済環境や企業業績には底打ちからの改善傾向が見られることから、底堅い展開を予想します
  • 市場全体としてバリュエーションは過去平均程度まで回復も、国際比較ではディスカウントされた状態です。ガバナンス改革や株主還元の向上は継続中で、日本企業の投資魅力の高まりとともにディスカウントの縮小が期待されます
  • グロース株とバリュー株のバリュエーション格差は歴史的な高水準。当面は更なる格差拡大のシナリオも視野に入れつつ、いずれ本格的な格差縮小に転じると想定します
  • 2020年は、4年に一度の米国大統領選挙を迎える年ですが、従来以上に有力候補者がどのような政策公約を打ち出すのかに世界中の注目が集まりそうです

 

マクロ経済環境は緩やかながらもプラス成長を維持する見込み

2019年10月の消費増税後の日本経済は、短期的にはマイナス成長が避けられないと想定されるものの、東京オリンピック効果に加えて、財政政策に支えらえてプラス成長軌道に回帰すると見込まれます。

足元では鉱工業生産が弱い数字となっているものの、生産に大きな影響を与える輸出については米中貿易摩擦による足踏み状態からは脱する兆しが見えています。米中の貿易交渉については予断を許さないものの、米国、中国政府ともに貿易摩擦による悪影響を抑えながら、政策面では成長を押し上げる方向性が強まると想定されます。設備投資、IT投資については日銀短観でも企業の計画が堅調で、人手不足や働き方改革などを背景として、生産性改善に向けた投資意欲は引き続き強いと見ています。個人消費は、消費増税に伴う駆け込み消費の反動減による落ち込みがあったと見込まれるものの、政策対応による下支え効果などにより、過去の増税時と比べると軽微な落ち込みで済みそうです。今後は株高や東京オリンピックによるマインドの改善もあり、徐々に回復すると期待されます。直近失速気味であった訪日外国人による消費も、旅行者数の増加により今年は再加速が見込まれます。年後半はキャッシュレス・ポイント還元終了、オリンピック効果の剥落で再度失速の懸念が残ります。まだ具体的に見えてはいませんが、そうしたシナリオの可能性が高まった際には、落ち込みを回避するために何らかの政策対応が議論されることになりそうです。

日銀の金融政策については大きく変更されることは想定しづらく、非常に緩和的なスタンスが継続されるとみています。ETFの購入に関して金額や内訳の見直し、出口政策についての議論開始などが話題に上る可能性があるものの、変更があったとしても株式市場への影響を考慮して漸進的な変化に留まると想定されます。

最悪期を脱した可能性のある企業業績とバリュエーションの上昇余地

2019年に製造業を中心に下方修正が相次いで軟調に推移した企業業績は最悪期を脱したとみられます。上期決算の発表において会社予想を下方修正した企業においても株価はむしろ先行きの業績改善を織り込んで上昇するケースが多く見られました。1月後半から発表される四半期決算にはまだ下方リスクが残っていますが、2020年度の業績については減益決算から増益決算への転換が期待されます。世界的に金融緩和が進行したことや、米中貿易摩擦の見通し改善などを受けて9月から年末にかけてTOPIXは約14%上昇しました。来期予想ベースのPERで14-15倍程度と過去平均並まで回復してきましたが、世界の株式市場平均との対比では大きくディスカウントされた状態にあります。その他のバリュエーション指標で見ると割安感はより鮮明になります。景気敏感株の比率が高い日本株式は業績回復時に見直されることが多くありました。相対的に政治が安定していることなども加味すれば、ディスカウント幅はもっと縮小しても良いのではないかと考えます。

ガバナンス改善の継続と日本企業の投資魅力

2019年の株主総会シーズンは、主に機関投資家の議決権行使により株主提案が可決されて経営陣が交代するケースが出てくるなど、コーポレートガバナンスの改善に大きな進展があったと言えます。ガバナンス体制や株主重視、情報開示の姿勢には、まだまだ企業により大きな差異がありますが、ESG投資の興隆も受けて、市場からの圧力は弱まることはないと言えます。

今後も、選別的ではあるものの、ガバナンス改善が株主リターンの向上につながり、ひいては日本企業の投資魅力が高まっていくことが期待されます。日本の上場企業の課題や特徴として、株式持ち合い、過度な内部留保の蓄積、ネットキャッシュ状態にある企業数の多さなどが挙げられます。

2019年は資本政策や株主還元に対する企業の意識の高まりにより、自社株買いが過去最高レベルに達しました。また、グループ再編による親子上場解消や敵対的M&Aなど個別事例で資本市場のダイナミズムを感じさせる事例が増えており、市場の活性化につながる前向きな展開と受け止めています。

過度に偏った物色動向は正常化する方向に

市場の物色動向を見ると、2018年から2019年夏頃にかけてリスク回避的な投資家心理が支配的な中、個別銘柄や業種による選好度の差が激しくなっていました。特に顕著な傾向としてグロース株がバリュー株を大きくアウトパフォームし、両者のバリュエーション格差が過去ピークに近い水準まで拡大しました。その後はいったん揺り戻しの動きが見られたものの、短期的な動きに留まっています。緩和的な金融政策の継続と斑模様の企業業績を背景に、再度両者の格差拡大が加速する可能性も否定できませんが、株式市場の歴史を振り返ると過去そうであったように、将来は本格的な格差縮小局面に転じる展開になると想定しています。

また、小型株についても2018年から大型株に対して下落局面では大きく下げ、上昇局面では出遅れる傾向が続いていましたが、投資家心理の改善にともなって2019年秋頃より急速にパフォーマンスが改善しつつあります。小型株の反転が継続するかについては、利益成長見通しやバリュエーション水準において大型株との格差が大きくない中で予想し難いですが、ボトムアップ運用の投資家にとって、リサーチでの差別化による超過収益の源泉として中小型株の魅力が高いことに変わりはありません。

米国大統領選挙の行方と政策の方向性

2020年は、11月に米国で4年に一度の大統領選挙が行われる年となります。世界に圧倒的な影響力を持つ米国で、現職の共和党トランプ大統領が再選される可能性は高いのか、そして対中国をはじめとした通商政策はどのように展開していくのか非常に気になるところです。また、民主党に有力な対抗馬が現れるとしたらどのような公約で選挙戦を戦うのかなど、かつてなく民意が分断された環境下にあって、今回の大統領選は大きな注目を浴びるイベントとなると考えています。米国経済や金融市場にとってリスク要因と意識されるような政策が現実味を帯びた際には、リスク回避的な投資行動が広まる可能性に留意する必要がありそうです。

 

 

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