投資環境レポート

欧州のインフラストラクチャーデットの貸手に求められること(2008年、2020年の比較)

2008年の金融危機により何が起こったのか

2008年は、銀行にとって困難な年となり、一部の銀行は破綻した中で、インフラデット・コミュニティは生き残るために適応しました。欧州のインフラデット・コミュニティでは、金融危機後、銀行以外の貸手の参入がみられるなど、インフラデットが一つの資産クラスとして認識され、参加者の多様化がみられました。現在、欧州のインフラデットの借手は、銀行への依存を低め、銀行、欧州保険会社、米国やアジアの直接投資家、デットファンドなど、より多様で信頼性の高い資金源に依存しています。資金の供給源は2008年よりもはるかに良好な状態にあります。

  • 2008年時点では欧州のインフラ向けの融資分野での銀行のシェアはほぼ100%でした
  • 金融危機以降、長期融資におけるコスト変更および銀行の融資業務の縮小から新しいプレイヤーの参入がみられました

金融危機後、欧州では保険会社がインフラデットの運用部門を立ちあげ、インフラファイナンスにおける需給ギャップを埋めようとしました。2010年の初頭には欧州で最初となる銀行以外のプレイヤーによるインフラデット取引がみられました。また、資産運用会社もプライベートアセットの優位性を再発見し、クライアントにインフラデット商品を提供するようになりました。これらの新しいプレーヤーは、機関投資家向けインフラデット投資家、または「insto」と呼ばれています。これらのプレイヤーによる機関投資家向けインフラデット市場は、以下のような特徴を持ちます。

  • 機関投資家向けインフラデット市場には金融危機を経験した元銀行員が多く参加しており、困難な時期の存在に神経質になっていると考えられます。
  • 機関投資家向けインフラデット市場は、短期負債、つまり、銀行間市場と顧客預金に依存している銀行とは対照的に「リアルマネー」が資金源となっています。従って銀行よりも安定性が高く、変動の少ない資金源であると考えられます。
  • 機関投資家向けインフラデット市場が欧州よりも発展している米国のPPP市場は危機時においても耐久性が高いことが証明されています。不安定な銀行による市場とは対照的に米国のPP市場は危機時においても閉鎖されなかったと言われています。
  • 現在、欧州インフラデットファンドが利用可能なドライパウダーの量に基づくと機関投資家向けインフラデット市場が閉鎖される可能性は低いと思われます。

資金の供給源が安定すると市場は安定するのでしょうか?

金融的な観点では安定すると考えられますが、実体経済面では必ずしもそうとは限りません。足元のように多くの国家が封鎖状態(ロックダウン)に入り、健康と安全のための基本的な自由(移動の自由)が保留されるとそれらの国のGDPは深刻な打撃を受けるでしょう。このような封鎖状態がどのくらい続くか、そして回復がV字回復、U字回復になるかの答えはまだ出ていません。今回の懸念は、資金の供給不足ではなく、貸し付け対象となっている事業の業績不振から生じるものです。これら2つの回復シナリオと、弊社がそれらの状況をどのように検討しているかをみていきましょう。

1.V字回復:

短期的に急激な経済の下落後、素早く力強い回復がみられるケース。このような状況では、インフラ企業は流動性の問題に直面しますが、支払能力の欠如の問題に直面する可能性は低いと考えられます。インフラストラクチャーの負債構造においては、通常、流動性の強化策(準備金口座の設定)が備わっています。典型的な準備金口座はDSRA(Debt Service Reserve Account)と呼ばれるものです。DSRAは(次回の債務返済支払いを満たすのに十分な)キャッシュを取り置きし、貸手への債務返済支払いを確保し、貸手を保護します。

また、借手はインフラストラクチャーの運営コストまたは債務返済のいずれかに対応するために流動性ライン(通常、銀行が提供するリボルビング信用枠)の恩恵を受けることができます。これらの流動性サポートが十分でない非常に極端なシナリオでは、利息の支払いが延期される可能性があります。しかし、このようなシナリオでは、借り手は依然として支払い能力の欠如には至っていません。弊社では、借手が利用できる流動性を慎重にレビューし、流動性のサポートが実際に得られるように借手への関与を強めています。欧州経済がV字回復を示す場合、このような流動性サポートにより、借手は十分に危機を乗り切ることができると考えられます。

2.U字回復:

いずれ回復する点ではV字回復と同様ですが、回復に時間がかかるケース(回復までの時間軸は現時点では不明瞭です)。このような場合、すべての事業活動が停止するなか、企業の存続を支援できる流動性バッファーには限界があります(3か月、6か月、9か月、それ以上?)。検討するには初期の段階であり、将来は不確実ですが、そのようなシナリオでは、債務の再編は除外されるべき選択肢ではありません。債務の再編は、回収率を最大化することと密接に関連しています。 回収率を最大化するにはインフラストラクチャーマネージャーに以下の3つの経験、資質が備わっていることが不可欠だと考えます。

回収率を最大化するために必要な3つの資質

a.困難な局面での経験:

80年代の米国貯蓄銀行危機、90年代のアジア危機、ドットコムバブル、グローバル金融危機と欧州ソブリン債務危機等の過去の危機局面において、インフラストラクチャー企業のリストラクチャリングに対処した経験を持っていることが重要です。

b.借手であるスポンサーと貸手のことを熟知した上での交渉経験:

インフラストラクチャー企業の債務リストラクチャリング局面において、債権者にとって有利に交渉を運ばせるためには、困難な時期におけるエクイティ投資家の心理状況を良く理解していることが重要です。

c.債務リストラクチャリングについての専門知識:

債務リストラクチャリングにおいては、交渉を有利な方向に導くために適切な条項を文書から指摘することが求められるため、インフラセクターの資金調達契約の交渉とストラクチャリングに係る幅広い専門知識と実務経験が必須となります。また、ポートフォリオ管理の責任者は、詳細なリサーチとデータ分析のために十分なアナリスト・チームの支援を受けられることも重要です。

 

 

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