シュローダー・インサイト

米国に対し優位性を示す欧州バイアウトの市場環境 割安な買収価格が魅力

シュローダーのプライベート・アセット シリーズ①

2019年11月29日

プライベートエクイティ市場は拡大傾向

グローバルのプライベートエクイティ市場の規模は約3.5兆米ドルだ。金融危機後も落ち込むことなく資産額が増加している。しかし、低水準の経済成長やユーロ圏の先行き不透明感などを背景に、プライベートエクイティ市場において欧州は、米国に比べ存在感が薄くなりがちである。2018年のファンドレイズ金額を見ると、地域別では北米の割合が約6割であるのに対し、欧州は全体の約2割と、経済規模に対して低い割合に留まっている。

リターンでは上場株式を年率2%前後上回る

プライベートエクイティの上場株式に対する平均超過リターンは、運用報酬控除後で年率2%程度だ。プライベートエクイティ投資においては、マーケットタイミングや銘柄選択、価格交渉、経営改善、レバレッジなど様々な付加価値創出の源泉がある。一方、上場株式投資の場合は、マーケットタイミングと銘柄選択以外は価値の源泉とすることが難しい。これらの違いが、プライベートエクイティ投資の超過リターンの裏付けと考えることができる。

欧州バイアウトを取り巻く環境の優位性

2013~2018年の米国と欧州の経済環境を比較すると、国内総生産(GDP)成長率は年率約1%程度欧州が米国を下回った。また、欧州株式市場は米国株式市場を過去5年間で年率約4%、過去10年間で年率約4%、過去20年間で年率約2%下回ったが、同期間における欧州バイアウトは米国バイアウトと同等もしくは上回る実績を残している。欧州バイアウト投資は付加的なリターンをもたらしていると言えるだろう。

欧州バイアウトの優位性の1つは、欧州のプライベートエクイティ市場の案件ごとの競争が米国に対し比較的少なく、魅力的なエントリー価格(買収価格)を引き出しすい点だ。M&Aにおける買収価格をEV/EBITDA倍率で見ると、2007~2017年の期間において米国は6.5~10倍程度で推移したのに対し、欧州は4.5~7.5倍程度と、米国に比べて常に一定程度割安となっている。加えて、欧州企業における経営効率性は米国企業に比べて低い傾向があり、企業の経営改善努力による付加価値創出の余地が相対的に大きい点も挙げられる。

また、2008年の金融危機以降、米国の投資案件の負債/EBITDA比率が3~6倍で推移しているのに対し、欧州では同比率が2~4倍で推移している。欧州案件は米国に比べ、保守的なファイナンスが実施されていると言えるだろう。これは、今後のさらなるレバレッジ活用によるリターン増強余地が残されているとともに、将来の金利上昇局面や景気後退局におけるダウンサイドリスクが比較的抑えられていることを示唆している。

もちろんブレグジットやポピュリズム(大衆主義)の台頭など、欧州市場にリスクがないわけではない。しかし、これらの問題に適切に対処できる運用者にとっては、有利な投資環境とも捉えられる。運用者を慎重に選択した上での欧州プライベートエクイティへの投資は、投資ポートフォリオの補強につながると考えられる。

 

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