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流動性問題が引き起こす債券ETFの奇妙な動き


ダンカン・ラモント、CFA

ダンカン・ラモント、CFA

ヘッド・オブ リサーチ&アナリティクス

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先週、債券ETFで奇妙な動きが起きていることに気が付きました。私はその動きについてLinkedInにポストしたのですが、このレポートの執筆中に閲覧数が36,000件を超え、急速に拡散されました。私以外にも多くの人々がその動きについて考えを巡らせているということだと理解しました。流動性悪化が、世界金融危機以来のクレジット市場における最大の問題を前面に押し出したと言えます。

流動性が低い資産を即時流動性を提供する投資ビークルにて組み入れる場合、予期しない動きが起こる可能性があります。

何が起こっているのか?

多くの主要な債券ETFの価格が、ETFが保有する証券の評価額に対して驚くほど大幅なディスカウントで取引されています。通常このようなことは起こりません。

ETFは、一定の証券の集合体、今回のケースでは債券の指数に連動するよう設計された流動性の高い投資ビークルです。よって、ETF価格とETFが保有する証券の評価額は連動して動くことが想定されています。乖離がある場合には、マーケット・メーカーはETFを購入すると同時にETFの投資対象となっている債券を売却することで無リスクで利益を獲得する裁定取引が可能となります。市場が効率的であるとの前提では無リスクでの収益獲得は不可能とされています。よって、今回のETFにおける価格とETFが保有する証券の評価額の乖離は何かおかしなことが起こっていることを示唆しています。

図表1はETFとETFが保有する投資適格社債の直近の下落幅の乖離を表していますが、乖離が約5%にまで及んでいます。この現象は投資適格社債以外の様々な債券クラスでもみられ、バンクローンでは3.8%、エマージング債券では4.8%となっており、国債市場でさえも影響は回避できず、5%ほどの乖離が生じています。

この現象の背景に何があるのか?

この現象の根っこには、社債市場の流動性が金融危機後大幅に低下し、社債の売買を成立させることが金融危機前と比べると非常に難しいということがあります。

クレジット市場は複雑な市場です。株式市場では企業は通常1つのシェアクラスのみを発行します(2種類以上の場合もあります)が、債券の場合、発行日、償還日、クーポン、コベナンツ(特約条項)、資本構造におけるポジション、規模等発行毎に特性が異なります。例としては、Bank of Americaは700以上の債券を発行しています。同じ発行体の債券であっても個別特性を考慮して取引が行われることから、流動性が低下する要因となります。また、発行後6カ月から1年程度を過ぎると取引量は急激に低下します。取引が頻繁に行われない個別の債券の価格は頻繁に取引される類似の債券の価格を参照することとなり、価格決定において推定が必要となります。

また、株式は取引所において取引がなされますが、社債はブローカー・ディーラーのネットワークを通じた相対取引が主となります。そして、金融危機後の規制強化により、ブローカー・ディーラーが在庫としてバランスシート上で債券を保有することが抑制されています。このため、投資家が今債券を売却しようとしても、ブローカー・ディーラーは、他の投資家にすぐに売却できると判断しない限り、取引に対して消極的にならざるをえません。クッションの役割がシステム上から排除されていると言えます。

更に状況を悪くしているのが、このようなブローカー・ディーラーによる流動性提供への消極的姿勢が、社債発行額が記録的な水準まで増加している中で起こっている、ということです。

 

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