銀行の格下げと新型コロナウイルス~格付機関が危機を拡大させるワケ~


リーマンショック以降の銀行に対する厳しい批判

2008-09年に起きた金融危機の間、経営難に直面した銀行は厳しい批判に晒され、そしてその後何年にもわたりその批判を受け続けることとなりました。また、自身の存続のために受けた数々の救済策やその後明らかになった銀行による不適切な行動によって、これらの批判は正当だったとの評価がなされてきました。例えば、英国の銀行は、自身が取り扱っていた返済保証保険(Payment Protection Insurance(PPI)と呼ばれる、借り手が銀行等から借り入れをする際、返済ができない特定の事由が生じた場合に備え締結する保険)において、政府が銀行に行った資本注入額をはるかに上回る金額の保険金支払いを実施していたことが明らかとなり、大きな批判に晒されました。

また、過去の危機時における銀行経営においては、不良債権に議論の焦点が当たることが多かったものの、実際より深刻な問題は銀行のガバナンスの失敗によって発生したとの指摘がなされてきました。例えば、一部の政策当局者が「リーマン・シスターズ」という言葉を用いて指摘したように、銀行経営に女性の登用が進み多用な意見を取り入れる環境が出来ていれば、リーマン・ブラザーズとその前後の金融危機の破綻は防げていたかもしれないという意見も生まれました。

今日、我々が直面している新型コロナウイルスの問題は、銀行と直接的な関係がないものの、銀行の財務健全性には改めてスポットライトが当たっています。しかし、ESG投資家として、シュローダー債券運用チーム(以下、運用チーム)は、銀行の財務分析に留まらず、危機時における銀行のガバナンス にも大きな注目を注いでいます。

格付け機関は銀行のESGに対する取り組みを認識できていない

過去10年間、欧州の銀行は財務改善に多くの時間を費やしてきました。同時に、彼らのESGの取り組みに対する姿勢が大きく変化させてきました。このESGに対する姿勢の変化は、財務健全性だけでなくESGと銀行の関連性をさらに高めており、新型コロナウイルスの感染が拡大する中でも、明確な形で継続的に実践されていくでしょう。

このような中で主要格付け機関が銀行に対し格下げを行うことは、上述の銀行の重要な変化を十分に認識していないことを意味します。格付け機関は、世界が大きく変化する中で自身のESGとの関連性を自ら引き下げており、現在の危機を積極的に深刻化させているとすら言えます。

確かに、今日に至るまで主要格付け機関はESGファクターを適切に評価し統合された形で格付けに反映させることに苦慮してきました。結果、直近の格下げ時に発表されたレポート等でも、銀行が直近実践してきたESGへの取り組みに関しての記載は皆無となっていました。しかし、銀行のESGへの取り組みは、広くは社会全体に対して、また同時に銀行自身に対してより良い結果をもたらすはずです。この点で、格付け機関は、自身のESGに対する取り組みにおける最初のハードルを越えることに失敗していると言えます。

具体的な事例をご紹介しましょう。現在ムーディーズは欧州全体の銀行セクターの見通しを「ネガティブ」としているほか、フィッチは多くの個別銀行の格付け見直しと見通しの引き下げを実施しています。これらの背景として、両社とも、経済活動の低迷が銀行の収益モデルに悪影響を与えることを指摘しています。

両社は、世界各国が大規模な財政出動を実施し、経済活動の下支えが期待されることを認識しつつも、その水準が十分でないと判断し、今後起こりうるローンのデフォルトが与える銀行の収益悪化が銀行の資本比率に悪影響を与えることに着目しているのです。

 

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