【インパクト投資ガイドブック】インパクト投資に必要な5つのステップ

【インパクト投資ガイドブック】インパクト投資に必要な5つのステップ
このガイドブックでは、インパクト投資とは何か、そして、インパクト投資に必要な5つのステップについて説明いたします。特に下記の投資家にとって有用と考えます。
・インパクト投資を検討している投資家
・インパクト投資における多くの定義、専門用語、略語に圧倒されている投資家
・目的に応じたインパクト投資手法やツールを見い出すのに苦労している投資家
インパクト投資とは何か?
「インパクト投資」という言葉は、投資家が社会的/環境的インパクトと同時に経済的リターンを追求することを可能にする投資におけるアプローチを表します。インパクト投資への注目はここ数年で一気に高まりましたが、概念自体は真新しいものではありません。「マイクロファイナンス」(貧困層向けの小口金融)需要の高まりのなかで開発金融機関(DFIs)が民間セクターで誕生し、民間資本を活用して、エマージング市場におけるフィナンシャル・インクルージョン(金融包摂、すべての人が等しく金融サービスを利用できるようにする取り組み)を推し進める動きが、インパクト投資の始まりでした。その後、融資、債券、株式、仕組み商品等幅広い資産クラスにおいて、世界の開発・発展における重要な課題をプライベート市場におけるアプローチを活用して解決しようという動きが拡大していきました。
インパクト投資は、「社会的/環境的インパクトと経済的リターンは互いに相いれないものである」という通説に対して異議を唱えるものです。インパクト投資戦略は、「投資家への経済的リターンの提供と、投資がなされた地域社会への貢献を同時に実現する投資は可能」という考えに基づいています。この二つの要素は補完的に互いを強化し、より幅広い目的の提供を可能とします。
しばしば、「インパクト投資」、「社会的責任投資(SRI)」、「ESG投資」が同義で使われますが、それぞれのアプローチは明確に異なっています。SRIおよびESG投資は、企業の規範やガバナンスを重視し、投資対象における除外や組入れ基準を設定し、適用する投資を意味します。一方、インパクト投資は、測定可能な社会的/環境的インパクト目標および経済的リターン目標を予め定義し、その目標達成に向けた投資を表します。インパクト投資の世界では、この概念は「ダブル/トリプル・ボトムライン・アプローチ」(経済、環境、社会におけるインパクトを管理するアプローチ)として知られています。
なぜインパクト投資なのか?
現在、世界中の各地で経済的・社会的発展における多くの課題に直面しています。インパクト投資は、グローバルの資本市場の力を貧困や不平等、気候変動等差し迫った問題を解決するために活用できる革新的な手法と言えます。この観点では、国際連合(国連)の持続可能な開発目標(SDGs)が、世界中のインパクト投資のステークホルダー(利害関係者)が参照すべき唯一の指標、「北極星指標」のようなものとなっています。SDGsでは、世界中の政府、企業、市民社会に対し、貧困をなくし、すべての人間が尊厳と平等の下に、持っている潜在能力を発揮できることを確保するためのアクションを呼び掛けています。
SDGsの2030年アジェンダを達成するためには、およそ毎年5-7兆米ドルの投資が必要だと推計されています。エマージング国だけ見ても、投資ニーズと投資額の差、投資ギャップが毎年2.5兆米ドル発生しているとみられています。この推計には新型コロナ危機の影響は含まれていません。この推計から極めて明白なのは、政府による拠出だけでこれらの問題を解決することはできない、民間資本はSDGs達成において必須だということです。
民間資本のなかで、慈善団体による資金は全体の資金調達ニーズのごく一部を担えるにすぎません。よって、民間セクターにとって、投資の促進および増加が果たすべき重要な役割となります。
足元、社会や経済が直面する課題や懸念に対する意識はこれまでになく高まっています。この意識の高まりこそが、インパクト投資の成長を実現する原動力になると考えます。
また、2030年までに主役となっていく新しい時代の投資家は、過去に比べて女性の割合が高く、ミレニアル世代や文化的多様性が高いグループが含まれ、このような投資家は経済的リターンだけではなく、投資資金を活用して社会にプラスの変化をもたらし、より持続的で、自ら責任を担っていく世界へと作り変える機会を追求する傾向があると言われます。これまでは個人的・社会的価値体系に合致するような投資は難しいとの考えが一般的でしたが、徐々にこの考え方が退けられるようになってきており、グローバルの資本市場はこの変化に注目し始めています。
また、政府はインパクト投資の促進・規模拡大を企図し、様々な奨励制度を提供しているほか、規制環境もインパクト投資にとって好ましいものとなってきています。一例としては、欧州連合(EU)によるEUタクソノミーが挙げられます。これは、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ(カーボン・ニュートラル)の実現、というEUの目標達成に向けた欧州グリーンディール(脱炭素と経済成長の両立を図る一連の政策)の実施のため、適格な投資分野を特定、分類する仕組みです。真に環境貢献度の高い分野に運用資金や設備投資を振り向ける目的で制定されました。その他、規制関連の動きの例としては、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)が挙げられます。これは、透明性と標準化を高めることで比較を容易にするほか、EUのカーボン・ニュートラル目標に貢献しない「グリーン・ウォッシュ」を防ぐ目的となっています。この規則では投資プロダクトをサステナブル・テーマ投資、ESGインテグレーション、インパクト投資に分類し、ESG若しくはインパクト投資としてプロダクト紹介する場合にはSFDRの条文の下で開示が求められます。
このような環境下、インパクト投資の業界規模が過去数年で4倍超になったというのも納得できると思います。個人投資家のほか、年金基金や保険会社、銀行、ファミリー・オフィス、財団、宗教法人等の機関投資家がインパクト投資への資産配分を大幅に増やしてきています。様々な資産クラスにおいて魅力的で投資可能な投資機会が増加していることもこのような目覚ましい成長に寄与していると言えます。業界の規模が拡大したことでインパクト投資において大規模な投資も行うことも可能となり、投資家需要に応えることができるようになってきています。
インパクト投資の業界規模は直近数年で4倍超に拡大
グローバルのインパクト投資サイズの推移 (単位:10億米ドル)
GIIN:グローバル・インパクト投資ネットワーク。社会的投資の活性化を目的にロックフェラー財団を中心とした投資家によって創設されたネットワークであり、ブルーオーチャードおよびシュローダーも参画しています。
プラスのインパクトを創出するための5つのステップ
それでは、いよいよ5つのステップを見ていきましょう。このステップは、目的に合ったインパクト投資を行うために、5つの質問に答えながら進めていきたいと思います。
1.どのインパクトを達成したいですか?
インパクト投資では、社会的・環境的課題に取り組む方法は幅広く、様々なアプローチが存在しています。よって、投資家が一番最初にすべきなのは、どのインパクト・テーマをターゲットにするかをはっきりと定義することになります。社会的テーマとしては、フィナンシャル・インクルージョン、女性のエンパワーメント、雇用創出、低所得者向け住宅、教育、医療が挙げられ、環境的テーマとしては、気候変動対応、エネルギー効率化、再生可能エネルギー、サステナブル・インフラストラクチャー、グリーン・ビルディング、サステナブル農業が挙げられます。
投資家は、一つ若しくは複数のインパクト・テーマを選定し、その目標達成のために、特定のテーマ解決に向けた投資プロダクトや、複数のインパクトやサステナビリティを重視した投資選択を実施するポートフォリオを選択していくことになります。
国連のSDGsのフレームワークをガイドとして活用するのも分かりやすいかもしれません。SDGs自体は大枠の理解にフォーカスしていますが、各目標においては達成のためのフレームワークが設定され、具体的で、計測可能なインパクト投資を可能とする手助けとなるでしょう。最終ページの投資事例では、SDGsとインパクト投資プロダクトのマッピングを図示しています。
2.どの程度の流動性やリスクを求めていますか?
幅広い資産クラスにおいて、様々なインパクト投資戦略が提供されています。よって、2つ目のステップとしては、投資家の流動性やリスクの許容度をクリアにすることが必要になります。このステップにおいては、インパクト投資を、資産クラス別、公開/プライベート市場の観点から理解し、投資家の目標に適切にアプローチする形態はどれかを見定めていきたいと思います。
上場株式は、幅広くアクセス可能な流動性の高い投資ツールとして、インパクト投資において活用することが可能です。公開市場で取引され、当局による規制がなされており、投資家のインパクト投資ポートフォリオにおいて、リスクや社会的投資目的の観点から分散効果が期待されます。投資家が上場企業に対するエンゲージメントを行いたい場合や、企業行動に一定の影響を及ぼしたいと考える場合、議決権行使により行動改善や社会的インパクトにおける貢献を求めることが可能となります。
債券は、最も大きな資産クラスの一つであり、2019年末時点で100兆米ドル超の債券が発行されています。よって、大規模な資金流入を消化するキャパシティがあり、流動性は発行体やストラクチャーによって異なるものの、相対的に高い傾向があります。そして、リスクを格付けやデュレーション等により定量的に測ることができます。格付けに関しては、安全性が非常に高い最上級の債券や、クレジット・リスクが相対的に低めとされる投資適格債券のほか、高いデフォルト・リスクを反映し、期待リターンが高いハイ・イールド債券まで、幅広い選択が可能です。ポートフォリオ構築プロセスにおいては、金利リスクやクレジット・リスクが主なリスクとなるほか、景気サイクルやデフォルト・サイクルを考慮に入れる必要があります。エマージング債券投資の場合は、企業のファンダメンタルズ以外に対象国のリスクも分析することが必須となります。債券投資家はインパクト目標達成のために投資先企業と双方向で対話を行うことが可能です。また、モニタリングを実施し、インパクト基準を満たす企業にのみ投資を行うことで、インパクトへの意識が高い発行体が債券市場でより良い条件で資金調達ができる方向へと導くことができると考えます。更には、グリーン・ボンド、ソーシャル・ボンド、サステナビリティ・ボンド、パンデミック・ボンド等の場合、資金使途は厳密に精査することができ、プラスのインパクトが実現可能なプロジェクトに対してのみ資金提供することが可能となります。
プライベート・デットは、銀行以外からの負債での資金調達を指し、この債務は公開市場では取引がされません。このプライベート・デット市場は非常に深さがある一方、投資先企業と投資家の間の関係構築と、投資先企業の資金調達需要が同時に求められるため、参入障壁が高いエリアといえます。また、プライベート・デット市場および投資先企業のビジネス・モデルに対する広範な知識と理解が必要とされ、投資開始前の入念なデューデリジェンスが必須です。ローンは通常貸し手によって満期まで保有されます。プライベート・デットは、テーラーメイドでインパクト目標に合わせて調整が可能なことから、インパクト投資においては、重要な投資ツールといえます。プライベート・デット投資において最初に行うのは投資先候補の選定であり、そのプロセスにおいて、対象企業とインパクト目標をすり合わせ、その内容を契約やパフォーマンス目標に組み入れることで、当該案件におけるインパクト要素の重要性を強調することができることも重要なポイントと考えます。プライベート・デットによるインパクト投資が最も普及している市場はマイクロファイナンスのエリアで、貸し手はマイクロファイナンス機関や他のエマージング国の金融仲介機関に対して資金提供を行い、それらの機関が個人や小規模事業者等に運転資金や日常生活に必要な資金を融資します。このセクターにおけるインパクト投資は、フィナンシャル・インクルージョン推進の基盤をなしており、成長資金へのアクセスを提供することは個人や地域のエンパワーメント(社会的地位の向上)につながり、エマージング地域における持続的な経済発展を促進するという信念を明示するものといえます。
サステナブル・インフラストラクチャーは、エネルギー革命、スマートシティ、e-モビリティ、デジタル化といった今日のメガトレンドを実現に結びつける重要なセクターとして位置づけられています。この資産クラスは現代社会の機能において必須となる耐久財や実物資産への投資を行い、生活の質向上や経済的発展における直接的なプラスのインパクトが期待できます。経済的リターンの観点からは、魅力的な利回りと他の資産クラスとの低相関により、魅力的なリスク調整後リターンの享受が期待できます。インフラ資産は、長期投資を前提としたストラクチャーであること、そして提供されるサービスが必要不可欠な特性を有することにより、一般的には景気サイクルに左右されにくい特徴があります。投資対象資産のキャッシュフローは、中長期の契約や規制で守られた収益によって、予測可能で安定的であることが多いことも魅力です。なお、投資家のリスク選好度によりますが、プロジェクトの開発や建設段階においては資金提供の期間が延長される場合があるほか、プロジェクトが運営段階へと進んだ場合、借り換えを行い、当初の資金提供者に資金返還を行うケースもあります。輸送や発電等のインフラストラクチャーのプロジェクトは温室効果ガス排出を左右する大きな要因となり得ることから、インフラ投資における選択によって、排出水準や気候へのインパクトを今後数十年にわたって抑え込むことができる可能性を有しています。
不動産は、商業用および居住用共にグローバルに市場規模が大きく、経済的にも重要性の高いセクターです。不動産への投資により分散効果のほか、戦略によって異なりますが株式若しくは債券水準のリターン獲得が期待されます。流動性が低いことから、長期での投資が求められるほか、対象国、地域、都市の市場構造について深い理解が必要となります。例えば、エマージング国の不動産への投資では、人口動態の変化、都市化、経済成長等から恩恵を受けられると考えます。また、不動産開発、対象資産の購入、若しくは賃貸と、投資戦略も幅広く選択できます。インパクトの観点からも豊富な機会が存在しています。人口増加や都市化の流れに対して、低所得者向け住宅や商業施設の充実が求められているほか、学生寮、託児所、病院等公的サービスの関連施設も不足しています。その他、不動産の質の向上やエネルギー効率性改善における機会も多く存在しています。
プライベート・エクイティは、インパクト投資においては比較的新しい資産クラスであり、世界金融危機後に発展し、現在でも規模としてはまだ小さい状況です。しかしながら、プライベート・エクイティによるインパクト投資は、リスク・リターンやインパクトの特性等の観点で、他のインパクト投資とは異なる選択肢を提供することができます。また、上場株式よりも幅広い業種や国を投資対象とすることが可能になります。そして、プライベート・エクイティは投資ホライズンが一般的に長期であることから、消費者やビジネスにおける基礎的な需要に対応した必要不可欠なサービスをターゲットにする傾向があります。さらに、長期の投資ホライズンによって、循環的な景気後退に対しても概して耐性が強いといえます。よって、パフォーマンスは市場タイミングの影響は受けにくく、投資先企業やセクターの選別によって変わることになり、適正価値との乖離による収益機会を見出しやすいとも言えます。プライベート・エクイティによるインパクト投資は、投資家にとっての経済的価値創造の面からも、投資先企業のサービス提供を受ける地域社会への好影響の面でも魅力的な可能性を有しています。
3.どの地域にフォーカスを置きますか?
インパクト投資の投資機会はグローバル各地に存在しています。投資家は先進国若しくはエマージング市場を選択することができますし、さらに特定の地域や国に絞って投資を行うこともできます。GIIN(グローバル・インパクト投資ネットワーク)によると、インパクト投資の資産のうち、約40%がエマージング市場に配分されています。
エマージング市場には、明白で幅広いインパクト投資ニーズが存在しています。新興国では電力が利用できない人が依然として約10億人に上ります。また、エマージング国は先進国に比べて約8倍も気候変動による影響を受けやすいと推計されています。多くの国で農業セクターが占める割合が高いうえに、預金、保険、その他の金融商品へのアクセスも不足していることから、気候変動が原因による異常気象等に対して非常に脆弱な状況となっています。
このような課題はある一方、エマージング市場は今後大幅な人口増加が見込まれ、力強い経済成長が期待されています。現在50億人超のエマージング国の人口は速いペースで増加が続いています。エマージング国は2020年から2030年の10年間で人口が約10%増加すると見込まれており、また、サハラ以南の人口は2050年までに倍増すると推定されています。国民総生産(GDP)に関しては、2023年にはエマージング国が世界のGDPの63%を占めると予想されています。このような環境のなかで、エマージング市場にはインパクト投資の機会があふれています。
エマージング市場に対する投資は、先進国の投資に比べて失敗しやすいと考える人が多くいますが、これは誤解と考えます。確かにエマージング市場固有の様々なリスク要因が存在し、市場参入への難しさがありますが、経済的リターンおよび社会的インパクトの影響の大きさの観点からみると、非常に魅力的だと言えます。
もちろん、先進国においても社会、環境面での課題に直面しており、地域開発、低所得者向け住宅、ヘルスケア、教育、サステナブル・インフラストラクチャー等のインパクト投資の機会は豊富に存在しています。
4.適切な投資ビークルはどれでしょうか?
インパクト投資においても、投資家の様々なニーズに対応するために、多様な投資ビークルが提供されています。適切な投資形態を選択するためには、各ビークルがどのような構造なのかを理解することが肝要です。
個別口座による直接投資:国やプロジェクトを選別し、直接投資によって行うインパクト投資は、投資家のインパクトおよび経済的リターン目標とのアラインメント(方向性の一致)を最も高めることできる形態と言えます。ただし、プライベート・デット、プライベート・エクイティ、インフラストラクチャー等への投資は、ソーシング(案件発掘)、投資実行、投資モニタリングにおいて非常に高い専門性が求められるほか、担当組織へのリソース配分が必要とされます。また、最低投資額も一般的には高水準となります。
インパクト・ファンド:インパクト・ファンドは、複数の投資家の資金を集めたうえで、ソーシング、投資実行、投資モニタリングをアウトソーシング(外部委託)する形式で、インパクト・ファンドが上記の直接投資を行います。インパクト投資における専門性を有する運用会社がファンドの運用を担い、インパクトと経済的リターンのアラインメントを図ったうえで、ファンドの目標を設定し、、豊富な投資経験を生かして投資先候補の選別、投資実行、モニタリングを行います。特にエマージング国に対するインパクト投資を行う上では、この投資ビークルが最適であると一般的に考えられています。
ファンド・オブ・ファンズ:ファンド・オブ・ファンズは、複数ファンドへの投資により、幅広いインパクト戦略、インパクト・テーマ、資産クラスへ投資を行うことが可能となり、ポートフォリオ構築における高い分散が期待できます。一方で、投資家のインパクト目標とのアラインメントは図られにくいと言えるほか、費用負担が相対的に重く、結果としてリターンが低くなる可能性があります。
ブレンデッド・ファイナンス:ブレンデッド・ファイナンスは、フロンティア国やエマージング国における社会的・環境的インパクト実現のために、開発金融機関や国際開発銀行、二国間貸し付け、財団等からの資金を戦略的に活用し、民間資本を呼び込むためのファイナンス手法で、民間投資家が低リスクで投資を行えるように、保証、損失吸収やリスク・シェアリングの仕組みを組入れ、提供します。ブレンデッド・ファイナンス商品は、数々のユニークな特徴を有し、投資家のリスク・リターン選好に合った形で、経済的/社会的リターンおよびリスク、ストラクチャリングによる資産保全等を提供することができます。更にブレンデッド・ファイナンス商品では、いわゆるテクニカル・アシスタンス・ファシリティ(TAF)と呼ばれる、投資先の技術的支援や能力強化支援の仕組みを備えていることがよくあります。これは、各商品の目的に沿った形でファンドの投資先の強化を行うことで、ポートフォリオの質の向上につながり、結果としてリスク特性も改善されるという考えに基づいています。
パッシブ投資:ある特定の指数に連動する投資信託やETFへのパッシブ投資も徐々に広まってきています。運用がおおむね機械的に行われることから、パッシブ運用のコストはアクティブ運用に比べて一般的に低くなります。また、ETF等のビークルによって、個人投資家にとってもインパクト投資がアクセス可能となるという点もメリットと言えます。しかしながら、個別の投資機会の評価、選別を行わないことから、インパクトおよび経済的リターン両面において、好ましい結果が得られないリスクを有しています。
5.どのようにインパクトを測定しますか?
適切な投資ビークルを選択した後に重要なのは、選択したビークルが達成したインパクトについてどのように評価し、報告するのかをしっかりと理解することです。インパクト評価には徹底的かつ厳格な手法が必要とされ、これによって投資におけるアプローチの有効性が担保され、また、すべてのステークホルダーに対して透明性と信頼性を提供することが可能となります。インパクトの計測は、達成されたプラスの変化を具体的に示すための重要なカギになります。現在、インパクト創出およびインパクト目標の達成を測るために数多くのアプローチや手法が存在しており、インパクト投資業界において標準化を推し進めています。これによって、ファンドや機関のインパクト管理システムの有効性が共通の基準で評価できるようになることを目指しています。この活動は国際金融公社(IFC)が策定した「インパクト投資の運用原則 (Operating Principles for Impact Management、the Principles) 」が先導し、進められています。この原則では、多様なインパクト投資アセット・マネジャー(運用者)、アセット・オーナー(資金提供者)、アセット・アロケーター(資産配分を行う者)、開発金融機関のベストプラクティス(最良の実践例)を活用し、様々な機関やファンドの目的に合うように設計され、それぞれの異なった水準での適用が可能となっています。当原則には3つのコアとなる要素があります。
戦略上の意図(Intent)
社会的/環境的なインパクト目標を、長期的な投資戦略に沿って定義します。この目標には意図しないマイナスの影響を及ぼすことを回避することも含みます。
貢献(Contribution)
投資が投資先に対してどのような貢献を実現するのかを明確にします。このインパクトへの貢献は、経済的、非経済的どちらでもよく、例えば、テクニカル・アシスタンスや投資家への積極的なエンゲージメントを通じて達成できる貢献もあり得ます。
測定(Measurement)
意図と貢献を結び付け、投資家がインパクトを、投資前の推定ベースおよび投資後の実現ベースで測定できる計測手法を定義します。指標は資産クラス、インパクト・テーマ、投資プロダクト、入手可能データによって異なってきます。
インパクトの計測においては、投資家は、投資意図、適切なインパクトKPI(重要評価指標)、当該投資によって恩恵を受ける対象、貢献、投資によって起こり得る意図せざるマイナスの副作用、等を完璧に理解し、評価する必要があります。
次ページに、投資事例と共に、インパクトと国連SDGsおよびSFDRとのマッピングを示します。どのSDGs・SFDR条項がどのインパクト・テーマと関連しているのかが分かりやすく図示されていますので、ご参考頂ければと思います。
また、「インパクト投資の運用原則」や下記に挙げた様々な業界イニシアティブが、投資家にとっての投資を行う上での指針や、また、横断的にインパクトを計測、管理できる包括的なフレームワークの策定において助けとなる材料を提供しています。
IFC(国際金融公社):途上国の民間セクター開発に特化した世界最大の国際開発機関で、主要なインパクト投資家と共に「インパクト投資の運用原則」を策定、100以上の機関が運用原則に署名しています。
IMP(インパクト・マネジメント・プロジェクト):事業や投資の分野でのインパクト・マネジメントに関する国際イニシアチブで、インパクトの理解、測定、報告をするための一般的な原則の策定を行っています。2,000を超える団体が加盟しています。
IRIS+(インパクト・レポーティング・インベストメント・スタンダード): インパクトの測定、管理、最適化のための指標で、GIIN(グローバル・インパクト投資ネットワーク)が策定しています。GIINは、社会的投資の活性化を目的にロックフェラー財団を中心とした投資家によって創設されたネットワークであり、ブルーオーチャードおよびシュローダーも参画しています。
GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ): サステナビリティ報告のガイドラインを発行しています。
SASB(サステナブル会計基準審議会):米国の非営利組織で、業種ごとの情報開示基準の策定を行っています。
HIPSO(ハーモナイズド・インディケーター・フォー・プライベートセクター・オペレーション):約25のDFIによるワーキング・グループが、民間セクター共通の測定指標を策定し、インパクト投資における報告業務の負荷低減を目指しています。
重要なお知らせ:
本ページは、情報提供を目的として、Schroder Investment Management Limitedが作成したページをシュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社が抄訳したものであり、いかなる有価証券の売買の申し込み、その他勧誘を目的とするものではありません。英語原文と本ページの内容に相違がある場合には、原文が優先します。本ページに示されている運用実績、データ等は過去のものであり、将来の投資成果等を示唆あるいは保証するものではありません。投資資産および投資によりもたらされる収益の価値は上方にも下方にも変動し、投資元本を毀損する場合があります。また外貨建て資産の場合は、為替レートの変動により投資価値が変動します。本ページは、作成時点において弊社が信頼できると判断した情報に基づいて作成されておりますが、弊社はその内容の正確性あるいは完全性について、これを保証するものではありません。本資料中に記載されたシュローダーの見解は、策定時点で知りうる範囲内の妥当な前提に基づく所見や展望を示すものであり、将来の動向や予測の実現を保証するものではありません。市場環境やその他の状況等によって将来予告なく変更する場合があります。シュローダー/Schroders とは、シュローダー plcおよびシュローダー・グループに属する同社の子会社および関連会社等を意味します。本ページを弊社の許諾なく複製、転用、配布することを禁じます。
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