米ドルの下落トレンドはなぜ長期化する可能性があるのか


新型コロナウイルスの世界的蔓延が起きて以降、金融市場参加者はジェットコースターに乗っているかのような数カ月を過ごしました。そして、このような混乱が起きると、米ドルの動向は従来から常に主要トピックとして取り上げられてきましたが、今回も同様に注目が集まりました。

混乱が深まった2020年3月、安全通貨として認識されていた米ドルは、10営業日のうちに約10%急上昇しました。この期間中、米ドル建て負債を抱える多くの企業が自身の財務安全性を維持すべく米ドルを調達しようとしたことが、事態の悪化に拍車をかけたと考えられ、通貨市場では米ドルの調達コストが急上昇しました。

4月以降、混乱が落ち着くにつれ、米ドルは下落に転じ、3月の上昇分を失うに至りましたが、今後、新型コロナウイルスの感染第二波が本格化した場合、米ドルは安全通貨としての役割が復活し再び上昇するリスクはあります。しかしながら、シュローダー・グローバル・マルチセクター債券チーム(以下、運用チーム)では、3月以降の米ドルの下落はまだ序章に過ぎず、中長期的な米ドル下落トレンドが今後も継続する可能性があると考えます。以下では、その要因となるいくつかの点をご紹介します。

短期的視点:通貨市場全体に影響を与える、注目すべきマクロ要因

欧州と米国の経済成長格差の縮小

直近発生した米ドル安が、新型コロナウイルス対策として実施された景気刺激策と関連の深いものであるということは、疑いようがない事実でしょう。景気刺激策と同時に市場に注入された潤沢な流動性は、リスク性資産の急反発を招き、米ドル安も同時に引き起こしたと考えられます。

加えて、パンデミックが深刻化して以降、アジアおよび欧州地域が、米国よりもウイルスの感染拡大防止に成功している点は、米ドル安の支援材料となっています。つまり、米国以外の地域は、経済活動が米国より早く再開され、一足先に経済回復へと向かい始めているだけでなく、従来は米国が優位だった経済成長に関しても格差が縮小する可能性があるでしょう。これは、資金フローの観点から米ドル安、ユーロ高を引き起こす可能性があります。

同時に、経済回復スピードにおいて材がサービスを上回っている点も、製造業への依存度が相対的に高いアジアや欧州の回復をサポートしていると考えます。債券市場では2015年以降拡大してきた2年債利回りの米独格差が直近縮小しており、一部市場において欧州と米国の経済成長格差縮小の織り込みが始まっていると言えるでしょう。

欧州復興基金を通じた財政出動と、欧州統合の機運の高まり

新型コロナウイルスの感染第二波懸念をはじめ、今後の経済回復軌道には不確実性および脆弱性が高いことから、現在世界の主要中央銀行と政府は、大規模な金融政策および財政出動が重要という認識を共有しています。

そのような中、欧州では、総額7,500億ユーロにのぼる欧州復興基金の設立で合意され、経済下支え体制が整った点は、域内経済成長に対して構造的な改善をもたらすと考えます。当基金の設立は、欧州全体を支えるという力強い政治的意志を持っており、今後の道のりは長いものの、真の経済同盟構築に向けた重要な一歩だったと言えるでしょう。この同盟は、将来的な域内の財政移転を許容するものと考えられ、財政出動の効率が上昇することが期待されます。

 

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