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ボラティリティの高い時代を乗り切るために–ベンチャー・キャピタル投資を成功させる5つの秘訣


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現在、高成長テクノロジー株を中心に、上場株式市場の大幅な調整が行われています。2022年の上場株式市場はこれまで高いボラティリティを経験しており、ナスダックは年初来で26%下落しています(2022年5月15日時点)。高成長のSaaS(Software-as-a-Service)銘柄はより大幅な下落となっており、Bessemer EM Cloud指数1 は年初来で44%下落しています。この背景には、1) 米連邦準備制度理事会(FRB)によるインフレ対策としての利上げ、2) 潜在的な景気後退懸念、3) ウクライナ戦争、4) ハイテク企業に対する「コロナブーム」の衰退、5) ヒストリカルに高いマルチプルの調整、など様々な要因があります。

このようなマクロ経済の逆風にもかかわらず、我々はベンチャー・キャピタルと、このアセットクラスが長期的にもたらす強力なリターンを信じています。ベンチャー・キャピタル業界の10年間のプールド・リターンは21%であり、上位四分位のファンドはこれを大きく上回っています2。 以下の図1は、過去15年間における上位四分位のベンチャー・キャピタル・ファンドの強力なパフォーマンスを示しており、上位四分位のファンドマネージャーは、2010年から2019年の間に25%を超える(時にはそれを大幅に上回る)3 ネットIRRを獲得しています。2005年から2016年のビンテージの間(ベンチャー・キャピタルのポートフォリオが発展するのに通常5年かかるため、直近の数年間は除外)では、上位四分位のベンチャー・キャピタル・ファンドは、下位四分位のファンドを年平均で18%アウトパフォームしていました。ベンチャー・キャピタル・ファンドの10~12年の運用期間中の複利ベースでは、パフォーマンスの差はさらに顕著になります。

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1.  出所:Bessemer Venture Partners Emerging Cloud Index、Yahoo!ファイナンス、シュローダー・キャピタル、2022年5月12日時点。詳細については、Bessemer Venture Partners Emerging Cloud IndexのWebサイトを参照

2. 出所:Cambridge Associates、シュローダー・キャピタル、2021年第3四半期時点(Cambridge Associatesから入手可能な最新データ)。詳細については、Cambridge Associatesのレポートを参照

3. 出所:Cambridge Associates Global Venture Capital Benchmark、シュローダー・キャピタル、2022年。2021年9月30日時点(入手可能な最新データ)

直近では未公開企業の評価額も下がり始めているため、未公開企業に投資する魅力的な時期であると考えています。イノベーションは不確実な時期でも継続し、成功した企業のいくつかは、上場株式市場が下落している時期に誕生し、規模を拡大させました(2010年のストライプ、2004年のフェイスブックなど)。ベンチャー・キャピタルは、現代に我々が恩恵を受けているテクノロジーセクターで最大限に成功をおさめた、いくつかの企業に資金を提供してきました。実際、今日の時価総額上位10社を見ると、その内の6社は過去にベンチャー・キャピタルから出資を受けていました(アップル、マイクロソフト、アルファベット/グーグル、アマゾン、テスラ、メタ/フェイスブック)4。 ベンチャー・キャピタル投資で成功するためには、最高のファンド、および最高の企業へのアクセスが不可欠です。資産選択の重要性は、上記のパフォーマンスの数値にも表れています。

我々は、ベンチャー・キャピタル市場のアーリーステージおよびアーリーグロース部分に焦点を当てた戦略を推奨します5。 これは、アーリーステージおよびアーリーグロース市場が、レイトステージのプレIPO市場に対して、より有利なダイナミクスを有していることに起因します。過去5年間(2016年から2021年)、IPO前のレイトベンチャー案件におけるプレマネー・バリュエーション(資金調達前の企業価値)の中央値は、アーリーグロース案件に比べて、2.4倍以上の速さで上昇しました6。 これは、ヘッジファンドやクロスオーバー投資家からの資金流入によるもので、その後これらの投資家は、ベンチャー・キャピタル市場から大きく撤退しています。アーリーグロース企業は、一般的にライフサイクルが短く、さらに3~5年以上非公開のままである可能性が高いため、高い成長率で企業を拡大させることができます。一方、IPO前のレイトステージ企業は、通常、6~18ヶ月以内に上場することを前提に資金を調達しています。IPOという選択肢が閉ざされたように見える現在、そのようなエグジットのタイミングは現実的とは思えません。足元、アーリーステージのベンチャー・キャピタルでも、高成長、高い粗利益、バランスシートに潤沢な資金を持つ革新的なテクノロジー、ヘルスケア企業が調整されたバリュエーション水準で取引されており、この市場で成功する可能性がある最良の投資対象であるように思われます。

4.  2022年5月12日時点、出所:Companiesmarketcap.com、企業ウェブサイト、Pitchbook、シュローダー・キャピタル、2022年

5. アーリーステージとは、シードからシリーズAラウンド、アーリーグロースとはシリーズB~Eラウンド、レイトステージのプレIPOラウンドとは、シリーズF以降のラウンドを指す

6. 出所:Pitchbook, CB Insights、シュローダー・キャピタル、2022年。IPO前のレイトステージとアーリーグロースは上記の定義に基づく

ベンチャー・キャピタルは単一の案件が高いリスクプロファイルを持つため、投資家はリスクが高いと考えがちです。しかし、十分に分散されたベンチャーのポートフォリオでは、個々の企業の特異的なリスクは互いに相殺されます。そのため、ベンチャー・キャピタルは投資家が考えるほどリスクが高くはありません。また、トップ・ファンド/企業へのアクセスも可能です。では、どうすれば成功するベンチャー・キャピタルのポートフォリオを構築することができるのでしょう?ここでは、ベンチャー・キャピタル投資を成功させるための、5つの秘訣を紹介します。

第1に、グローバルなアプローチが肝要です。グローバルにユニコーン企業の総数を見ると、米国に拠点を置く企業は50%以下に過ぎず、残りの半分は米国外です6。欧州やアジアなどの地域にはユニコーン企業が集中しているため、ベンチャー・キャピタルに投資する際には、グローバルな視点を持つことが重要です。

第2に、未来のトピックに注目することです。 人工知能(AI)や機械学習(ML)は、複数の産業セクターにおいて破壊的な影響を及ぼしています。また、「ローコード/ノーコード」ソフトウェアといった最近のトレンドは、コーディング経験がないビジネスラインの管理者であっても、ソフトウェア製品を構築し、使用することを可能にしています。これらのテクノロジーは、市場を破壊するだけではなく、新しい市場を創造する力も持っています。

第3に、選択と分散の適切なバランスを見出すことが大切です。ベンチャー・キャピタル市場のリターンの約80[(は上位20) was not found]の企業で占められるため(これは数十年にわたり不変)7、「ポートフォリオのクオリティの密度」を最大化する必要があります。しかし、ベンチャー投資のポートフォリオを分散して持つことも重要です。通常、構築されたポートフォリオでは15-20社以上となります。全ての企業が勝者になるとは限らないため、個々の企業のリスクを打ち消すためには、分散されたポートフォリオが必要です。

第4に、需要の高まりで資産価格が実質的価値よりも上昇し始めた市場には、慎重になることが不可欠です。前述したように、アーリーステージとアーリーグロースに焦点を当て、バリュエーションが過熱しているレイトステージのプレIPO市場への投資は避けるべきでしょう。

第5に、共同投資、プライマリー投資、セカンダリー投資を組み合わせることです。ベンチャー・キャピタル投資はリターンのばらつきが大きいため、複数の企業やGPに分散投資するポートフォリオ・アプローチが、リスクを軽減し、リターンの確実性を高めると考えます。セカンダリー投資(LPから既存ファンドの持ち分を購入)及び共同投資(LPがファンドを通じてではなく、GPと一緒に特定の案件に投資)も、大きな付加価値を生む可能性があります。

7.  シュローダー・キャピタルが1994年まで遡って行ったベンチャー・ポートフォリオ企業の調査による

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