不動産デットにおける複雑性プレミアム


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銀行は規制変更によって以前のようには貸付ができなくなり、10年以上にわたって不動産貸付から継続的に撤退してきました。銀行の撤退は、代替的な貸手である保険会社、または資産運用会社に対して商業用不動産デットという巨大な市場をもたらしました。

欧州大陸では、商業用不動産デットの市場規模は約1兆ユーロですが、英国では約2,000億英ポンドであり、その一部は銀行以外の貸手からの投資を必要としています。Covid-19危機は銀行の撤退を加速させ、投資機会をさらに拡大させています。

銀行以外の貸手にとっての投資機会はどれくらい大きくなる可能性があるでしょう?英国では、銀行以外による貸付が商業用不動産デット市場の27%近く(540億英ポンド)を占めています。欧州でははるかに低く、銀行以外による貸付は、市場全体(720億ユーロ)の6%未満にとどまります。しかしながら今後10年間に、両市場は米国市場に匹敵するレベルまで成長すると見込まれています。米国では12兆米ドルの商業用不動産デット市場の40%にあたる約4.8兆米ドルを銀行以外の貸手による貸付が占めています。

同時に、低金利と株式市場のバリュエーション水準の上昇は、投資家がリスク・エクスポージャーを多様化し、安定したリターン源泉をこれまでよりも必要とすることを意味します。 他のプライベートアセットと同様に、商業用不動産デットは同格付の社債よりもリターンの優位性があり、投資家の関心は高まり続けています。

このレポートではいわゆる非流動性プレミアムと、「複雑性プレミアム」と呼ばれる専門スキルに依存するリターンを区別して、その超過リターンの要因を分析していきます。

リターンプレミアムの要因分解

商業用不動産デットについては、何よりもまず、得られうるリターンに対してリスクを最小限に抑えることに集中しなければなりません。デットは全体的にはリスクの低い資産クラスですが、様々なダウンサイドリスクがあるほか、エクイティに期待されるようなリターンの大幅なアップサイドは見込めません。不動産デットが提供するペイオフは、他のデットと同様に確度の高いキャッシュフロー、一定の期間内における元本の償還が中心となり、案件によっては追加収益が見込めることもあるでしょう。

非流動性プレミアム・・・そしてそれを超えて

公開市場にアクセスできない借手は、資金調達にプレミアムを支払います。投資適格不動産デットへの投資は、ポートフォリオに追加のリスクを加えることなく、投資適格社債を約100〜150ベーシスポイント上回るピックアップが期待できます(もちろん、非流動性を受け入れる必要があります)。このピックアップは、より流動性の高い同格付のクレジットプロダクトと比較をすることで、最も的確に非流動性プレミアムに起因すると説明できるでしょう。商業用不動産デット市場は引き続き「貸手市場」であり、そのため最も貸手フレンドリーな条件であるフル・コベナンツ・パッケージ(財務維持条項と追加負担制限条項を有するローン)からの緩みやマージンの縮小、リスクの増加などは見られていません。これは前述したように、需給バランスの不均衡と「資金ギャップ」によるものです。

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プライベートデットの中で、商業用不動産デットは最大かつ最もアクセスしやすいデットプロダクトの1つであり、投資家の投資ニーズに合わせた幅広いリスク/リターンを提供します。これはすなわち、投資家が投資のリスクと条件の両方を自ら設定し、管理する上で高い柔軟性を持つことを意味します。

投資家は、不動産エクイティ投資から不動産デット投資に移行することでリスクを軽減できます。また投資ニーズに応じて、不動産デットプロダクトの中からハイ・イールド戦略、シニア・ローン戦略、またはインベスメント・グレード戦略を選択することで、リスクをさらに調整できます。また、商業用不動産デットは、変動金利エクスポージャー(金利上昇時やインフレに対するヘッジ機能)または固定金利エクスポージャー(ポートフォリオにおけるライアビリティ・マッチング機能)のどちらも提供可能です。

流動性が市場の上下時にのみ主に課題となることをふまえると、商業用不動産デットの持つ柔軟性は、非流動性への懸念を低下させます。投資家がポートフォリオの流動性プロファイルをプライベートデットで自社に最適なものに調整した場合、流動性の高い市場で起こる、流動性懸念に振り回される必要はないでしょう。

商業用不動産デットの複雑性プレミアム

欧州の不動産デット市場における透明性の欠如と参入障壁の高さは、非流動性を超えたプレミアムの一因となっています。インベスメント・グレード戦略の商業用不動産デットは、非流動性プレミアムの割合が高くなりますが、シニア・ローン戦略やハイ・イールド戦略への投資は複雑性が増すため、期待されるリターンがより高くなります。

経験豊富なチームは、長年にわたり構築したネットワークを通じて市場へのアクセス、適切なストラクチャリングを可能にします。そして最も重要なこととしては、不動産デットが有する複雑なダウンサイドリスクを管理する知識を持ち合わせています。資産の移行局面や開発局面での資金調達には、ダウンサイドリスクのある潜在的なイベントの予測に加えて、建設リスク、賃貸リスク、および借手に関するリスクを軽減する手法への深い理解が含まれます。

不動産デットに特有なこととして、エネルギー性能表示や認証など、環境、社会、ガバナンス(ESG)の開示における重要な改善もあります。これによりインパクトの測定が可能となり、極めて具体的なESG目標を追求できます。英国政府は、2030年までに炭素排出量を68%削減することを約束しています。不動産業界は、英国の二酸化炭素排出量の42%が建築環境に関連しており、建築ストックの75%はエネルギー効率が悪いことを認識しています。

それでも2020年の不動産のグリーンまたはサステナブルな貸付の合計は、世界全体でわずか141億ドルでした。最近の気候変動調査によると、欧州の大手銀行の40%は依然として従前通りの投資行動をとっており、気候関連リスクマネージャーとして認定されたのはわずか15%でした。サステナブルな投資プログラムは、より良いテナントを誘致し、業績の改善につながります。これにより、長期的には地域社会、環境、そしてより広い社会において、利益の向上及び目に見えるプラスのインパクトをもたらすでしょう。

これらは、非流動性よりも複雑性プレミアムに起因すると思われる、不動産デットの超過リターンのほんの一部の要素にすぎません。不動産デットでは流動性が依然として重要な考慮事項であり、実際に他の投資においてもそうであるように投資家はプライベートアセットのリターンを生み出す要因をより深く理解することで、恩恵を受けられると考えています。

 

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