ハイイールド不動産デットのリスクは何でしょうか?


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インカム志向の投資家にとって現在の長期化する低金利環境は、極めて困難な運用環境といえます。足元では米国ハイイールド社債でさえ、インフレ率よりも低い利回りとなっています。適切なリスク/リターンを有する投資機会を見つけることは投資家にとって喫緊の課題であり、今後もしばらくの間、低金利環境は続くことでしょう。

このような低金利環境を背景に、魅力的なリターンを提供する欧州および英国のプライベート・ハイイールド不動産デット市場は、新規の投資家からの注目もひきつけています。本稿では、新しいアセットクラスに内包される主要なリスクの評価と管理について考察します。

なぜプライベート不動産デット市場が拡大しているのか?

世界金融危機以降、銀行は不動産デットへの融資を縮小してきました。金融危機後の規制強化を背景に、資本コストの観点から、銀行にとって不動産デット市場の魅力はますます低下しており、ハイイールド不動産デット市場において特に深刻な影響をもたらしています。

不動産デット市場における需要と供給の不均衡は、伝統的な貸手の融資能力と新規ローン需要との間に、資金調達ギャップを生み出しました。この需給ギャップは、伝統的な貸手の代わりとなる、代替的な貸手に良好なリターンをもたらす機会を提供しています。

ハイイールドローンの種類

銀行にとって、ハイイールド不動産市場での特定領域への資金融資は特に困難となっています。たとえば、リスクが高いとみなされる開発案件などは、投資適格不動産を投資の中心に考えている銀行には適さないでしょう。また、「稼働が安定局面に達していない資産」または「移行局面にある資産」に対するリスク選考度も不足しています。これらの資産は、テナントの占有率が低い資産、またはオフィスビルから小売店、レストラン、アパートなどの多目的ビルに不動産特性を変化させている場合など、大幅な変更が行われている資産を指します。

このセクターにおける、投資経験が豊富な銀行等の伝統的な資金提供者からの構造的な融資資金の減少は、貸手優位な市場をもたらし、強力なリターンを生み出す機会を創出しています。

ダウンサイドリスクの管理

ハイイールド市場において、不動産デットの投資家が実施しなければならない最も重要な判断の1つは、リスクの取り方です。シュローダーでは、投資家は、不動産リスク、またはストラクチャリングリスク(レバレッジの利用)のいずれかのリスクを選択的に負担するのが賢明であり、同時に両方のリスクを取ることは避けるべきであると考えています。

前者の不動産リスクを負担する場合は、優良物件に対して高い債務水準を許容することになります。後者のストラクチャリングリスクを負担する場合は、保守的な債務パッケージによりプロテクションを確保しつつ、不動産資産の不確実性を許容することになります。

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不動産リスク

不動産を改築、再開発、または新規に建設する可能性のある借手への融資は、必然的に相応に高いリスクを伴います。従って不動産リスクを負担するということは、借手の事業計画を分析し、前提となる仮定に対して十分に納得する必要があります。投資家は、コスト、タイミング、賃貸の競争力、売却時の資産価値など、提案された取引におけるあらゆる側面を分析する必要があります。そのため、投資家は内部の情報と第3者機関のアドバイザーの両方を活用して取引対象を詳細まで理解し、リスクを軽減するようにローンのポートフォリオを構築することになるでしょう。

不動産デット投資家は、所定のリスクレベル内での投資であることを担保するためにLTC(開発総費用に対する借入金額比率) およびLTV(物件評価額に対する借入金額比率) を含む一連のコベナンツ(財務制限条項) を設定します。また、優れた実績を持つ経験豊富な借手と連携することが極めて重要です。コベナンツ違反または支払遅延が発生した場合、資産を完全に管理することが可能なコベナンツが設定された、適切な事業計画を有する借手を特定することが不可欠です。そうすることによって、デフォルト時の回収率が非常に高くなるでしょう。

以下は、オランダの開発案件ローンにおける不動産リスクの例です。当該資産は、コア市場におけるESGの観点での優良不動産になります。不動産リスクは、開発戦略の実施時点から発生します。

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  • 資産-アムステルダムのコア・オフィスエリアに位置し、アムステルダムの中心部とスキポール空港の両方へのアクセスが 良好な10,000平方メートルを超える多目的施設の開発。開発はBREEAMで Outstanding(最高ランク) を受賞予定。オフィス、手頃な価格帯の住宅およびレジャー空間で構成。建設は2021年1月に開始、2023年完工予定。
  • 負債-リース/販売までの開発資金
  • 特徴-好立地の多目的施設の開発案件。建設に着手するための追加的資本を経験豊富な機関投資家およびディベロッパーが投資

出所:シュローダー、2021年7月、BREEAMは、建築プロジェクトや建築物のサステナビリティを評価する、世界をリードする環境性能認証制度

債務のストラクチャリングリスク

不動産デットの投資家は、不動産リスクが低い一方で、レバレッジが高い案件を選択できます。安定的で優良な不動産に対する、高いレバレッジは、投資家がより高いリターンを得るための代替手段を提供します。場合によっては、超過リターンを得るための手段として、シニアバンクローン(最大50〜55%LTV)とエクイティの中間にあたる、メザニンローンも魅力的です。

以下は、LTVが85%のメザニンローンの例です。物件は非常に立地に優れており、占有率が高く、収入基盤も多様化しています。

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  • 資産-英国の複数の工業地域に所在する4つの複数賃貸型インダストリアル施設のポートフォリオ。稼働率92%、平均有効契約期間約4年、約40のテナントに賃貸
  • 負債-11.3百万ポンドのメザニンローン (LTV 55-85%に相当。20.7百万ポンドのシニア・バンク・ローンに劣後)
  • 特徴-優れた実績を持つ経験豊富なスポンサーが所有する、十分に分散された収入基盤と賃料上昇の潜在性を持つ

出所:シュローダー、2021年7月

 

リスクを調整する

インカム志向の投資家にとってリスク調整後ベースで魅力的なリターンが得られるプライベート・不動産デットは、今後、運用手段の選択肢の一つとなりうるでしょう。レバレッジリスクと原資産である不動産リスクのいずれかを選択することで、投資家はさまざまなリスクプロファイルを持つ、多様なローンポートフォリオを構築することができます。十分な経験を持つレンダーは、それぞれの資産ごとにオーダーメイド型の引受を実施し、ポートフォリオでの棄損やダウンサイドリスクを適切に管理することで、不動産デット投資家に対して、二桁のグロスリターンと一桁後半の分配を提供することができることでしょう。

 

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