市場概況
11月、長期金利の低下や米国インフレ鈍化を背景に世界株式は上昇しました。米国では、インフレが鈍化し、利上げ局面が終了したとの見方が拡がったことから、米国株式は大きく上昇しました。欧州についても、ユーロ圏のインフレ率が予想以上に鈍化し、利下げ期待から欧州株式は上昇しました。ただし、欧州中央銀行(ECB)総裁は市場の利下げ期待をけん制する発言をしています。日本株式は、金利低下や堅調な企業業績を背景に上昇しました。新興国株式は、米国のソフトランディングや利下げへの期待の高まりが支援材料となり上昇しました。債券については、経済減速やインフレ圧力の緩和、欧米での利上げ局面の終了の可能性を背景に主要国の金利は低下しました。米国では連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を据え置き、相対的にハト派的なトーンであったことから、米国10年国債利回りは大きく低下しました。
主な投資行動
ポートフォリオ・デュレーションの引き上げ
景気減速の進行が見込まれることなどを背景に、米国債を通じてポートフォリオ・デュレーションの引き上げ
株式プットオプションの調整
株式市場の上昇を受け、米国株式プットオプションのストライクプライスを引き上げると同時に米国株式先物の組入比率を引き上げ
日本円比率を引き下げ
高金利の長期化見通しが拡がるに伴い、株式バリュエーションの調整が進む中、今後見込まれる金利の安定化が株式の支援材料となるほか、底堅い経済成長見通しの下、堅調な企業業績が見込まれることから、足元の水準は魅力的なエントリーポイントと判断し、月中に米国株式の組入比率を引き上げ
その後、金利ボラティリティの安定化が進まず、株式は短期的に変動性が高まると判断し、リスク管理の観点から米国株式の組入比率を引き下げ
日本円比率を引き下げ
10月末に日銀の金融政策決定会合を控え、リスク管理を企図して日本円比率を引き上げていたが、月初に引き下げ
レラティブトレードの解消/構築
米国10年国債ロング/カナダ10年国債ショートのポジションを構築
日本株式ロング/ドイツ株式ショートについて、ドイツ株式ショートのポジションを解消
エネルギーセクター株式ロングのポジションを追加
今後の資産配分と運用戦略
米国のインフレ率は低下基調が継続しており、米金利はピークに達したと考えられるほか、労働参加率の上昇により労働市場の圧力が緩和しています。これらを背景に、ソフトランディングを我々のベースシナリオとしていますが、市場でもソフトランディングが織り込まれていることには留意する必要があります。足元では株式について選別的にポジティブの見方をしています。地域別には、欧州株式について、欧州経済減速は徐々に市場に織り込まれていると判断しており、ポートフォリオでは、ドイツ株式ショートのポジションを解消し、より中立な見通しとしています。米国株式については、一部の株式がけん引している状況であるほか、日本株式については、相対的に緩和的な金融政策が維持されると考えることから、日本株式ロングのポジションを維持しています。
金利は安定化が進み、経済成長は今後数ヵ月で減速することが見込まれます。デュレーションは、経済減速局面にあることを考慮すると、シクリカル面では支援材料となりますが、インフレ低下ペースの鈍化や、中期的には利回りが構造的に高くなる可能性には注意する必要があると考えます。ポートフォリオでは、引き続き金利の影響や中央銀行の金融政策の動向に注視しつつ、機動的な資産配分を行う方針です。
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