市況
12月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは上昇しました。米国は、11月の消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化したことや小売売上高の市場予想を超える減少を受けて米国債利回りは月前半に低下しました。月後半は連邦準備制度理事会(FRB)の利上げの道筋や中国の経済再開の影響を見極める動きのなか利回りが上昇に転じました。日銀が長期金利の許容変動幅拡大を決定したことも米国債利回りの押し上げ要因になりました。欧州は、エネルギー危機や新型コロナウイルス感染拡大による影響に関連した費用を賄うため、ドイツ政府が来年過去最大の国債発行を実施する計画が明らかとなったほか、欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏のインフレ見通しを引き上げ、追加利上げが引き続き検討されるとの見解を示したこと等からドイツ国債利回りは月を通じて上昇となりました。英国も、イングランド銀行が0.50ポイントの追加利上げを実施し、インフレ圧力が持続するとの予測を示したことから英国債利回りは上昇しました。
12月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.61%から3.87%、ドイツ10年債の利回りは1.93%から2.57%、英国10年債の利回りは3.16%から3.67%に上昇しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは0.42%と、国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
12月の超過収益は0.27%となりました。金利戦略は、米国経済への悲観的な見方を強めるなかで、米国のオーバーウェイト(利回りの低下を見込むポジション)をデュレーション戦略で構築し、このポジションはマイナスに寄与したものの、米国の対ドイツでのオーバーウェイトや英国の対ドイツでのオーバーウェイトはプラスに寄与しました。なお、米国の対ドイツでのオーバーウェイトは利益確定で解消しました。通貨戦略は、ユーロを対米ドルや対英ポンドでオーバーウェイトとし、奏功しました。欧州エネルギー危機の緩和や中国の経済活動再開等を背景に欧州経済に対して慎重ながらも楽観的な見方とします。また、メキシコ・ペソの対ニュージーランド・ドルでのオーバーウェイトも小幅にプラス寄与しました。クレジット戦略は、米国利上げペース緩和観測がリスク選好姿勢改善につながり、社債スプレッドは縮小しました。欧州クレジットの小幅なオーバーウェイトがプラスに寄与した一方、米国社債についてはコミュニケーション・セクター等がマイナスに寄与しました。クレジットについては、小幅なオーバーウェイトを継続しています。
投資行動・投資方針
[テーマ1]ディスインフレ・レジームの扉が開く:主導するのは米国
- 米国で財インフレの鈍化の兆候が継続すると予想します。一方で、サービスのインフレは粘着質でインフレ収束には時間がかかると考えられます。なお、インフレ率を主要中銀の目標金利(2%)まで抑制することは困難なプロセスであり、労働市場が更に軟調となる必要があると考えますが、2023年前半には初期段階の改善が比較的急速に進むと見込まれます。
- 金利戦略において、米国をオーバーウェイトといたします。クレジット戦略においては、投資適格社債をオーバーウェイトといたします。
[テーマ2]米国の経済成長率の低下:その他地域の減速に”追いつく”
- インフレ率が持続的な水準まで低下するには、景気後退が必要であると考えます。景気先行指数(ソフトデータ)は既に軟化傾向となっており、一致指数(ハードデータ)や労働市場を含む遅行指数も今後同様に軟化が見込まれ、金融政策に影響を及ぼすと予想します。欧州ではエネルギー危機が緩和しつつあり、米国の成長見通しに対する失望が相対的に大きくなる可能性があります。
- 金利戦略において、米国をオーバーウェイトといたします。また、通貨戦略において米ドル、加ドルを対ユーロ等でアンダーウェイトとします。
[テーマ3]世界的な利上げサイクルの成熟:金融政策スタンスの格差が拡大
- 中央銀行の利上げサイクルが終盤に突入するなかで、各国中銀の政策スタンスのばらつきが拡大する可能性があります。家計のバランスシートのレバレッジが高い国で、インフレのピークアウトが確認された国の中央銀行は、ハト派的な金融政策スタンスになる可能性が高いと考えます。一方、インフレ上昇が継続し、住宅市場の懸念が限定的な国の中銀は、タカ派的になる可能性があります。
- 金利戦略において、カナダをオーバーウェイトとするほか、米国、スウェーデン、英国を対欧州でオーバーウェイトといたします。また、通貨戦略において、ニュージーランド・ドル、英ポンド、加ドルをアンダーウェイトとする方針とします。
[テーマ4]中国の唐突なゼロコロナ解除:経済回復の期待が徐々に高まる
- 中国がゼロコロナの政策方針を唐突に撤回したことはサプライズとなりました。まだ安心はできませんが、中国経済は現在の非常に弱い状態から正常化する可能性があります。中国の景況感が改善し、需要が本格的に回復すれば、国内だけでなく、アジア地域や多くのコモディティ産出国の成長見通しを押し上げることが期待されます。
- 通貨戦略において、アジア通貨のオーバーウェイトを組み入れる方針といたします。また、コモディティ関連通貨についてもオーバーウェイトの機会を模索いたします。
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