市況
1月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは低下しました。米国は、雇用統計で賃金の伸びが鈍化したほか、12月の消費者物価指数(CPI)が前月比低下し、前年比でも伸び鈍化が継続したことから米国債利回りは低下しました。また、2か月連続で減少した小売売上高等軟調な経済指標も利回りの低下要因になりました。欧州でも、月前半にドイツ国債利回りは低下しました。ただしその後は、欧州中央銀行(ECB)当局者による市場の利上げペース減速観測をけん制する発言や、1月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)速報値が50を上回り、欧州景気後退が回避される可能性があるとの見方がなされたこと等も影響し、月後半は月前半の利回り低下の一部を相殺する展開となり、月を通じてもドイツ国債利回りの低下幅は米国債に比べて小幅となりました。英国は、12月CPIの伸びが2か月連続で減速し、イングランド銀行のベイリー総裁がインフレが年内に急速に低下する可能性があると発言したこと等が影響し、英国債利回りは低下となりました。
1月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.87%から3.51%、ドイツ10年債の利回りは2.57%から2.29%、英国10年債の利回りは3.67%から3.33%に低下しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは1.15%と、国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
1月の超過収益は0.42%となりました。金利戦略は、米国のスティープ化(長期と比べて短期部分の相対的な低下を見込むポジション)はマイナスに寄与したものの、英国や米国の対ドイツでのオーバーウェイト(米英の相対的な利回り低下を見込むポジション)や、英国のスティープ化が主にプラスに寄与しました。通貨戦略は、スウェーデン・クローナはインフレ上振れを受けて上昇したことから、アンダーウェイトがマイナス寄与となったものの、米ドルの対豪ドルや対日本円でのアンダーウェイトが主にプラスに寄与しました。その他、ブラジル・レアルやメキシコ・ペソ等選別的なエマージング通貨のオーバーウェイトもプラスとなりました。クレジット戦略は、米国の利上げペース緩和観測がリスク選好姿勢改善につながり、投資適格社債のスプレッドは縮小しました。米欧クレジットの小幅なオーバーウェイトがプラスに寄与しました。
投資行動・投資方針
[テーマ1]ディスインフレ・レジームの扉が開く:主導するのは米国
- 米国で財インフレの鈍化の兆候が継続すると予想します。一方で、サービスのインフレは粘着質でインフレ収束には時間がかかると考えられます。なお、インフレ率を主要中銀の目標金利(2%)まで抑制することは困難なプロセスであり、労働市場が更に軟調となる必要があると考えますが、2023年前半には初期段階の改善が比較的急速に進むと見込まれます。
- 通貨戦略において、選別的にエマージング通貨をオーバーウェイトとする方針といたします。クレジット戦略においては、投資適格社債をオーバーウェイトといたします。
[テーマ2]米国の経済成長率の低下:その他地域の減速に”追いつく”
- インフレ率が持続的な水準まで低下するには、景気後退が必要であると考えます。景気先行指数(ソフトデータ)は既に軟化傾向となっており、一致指数(ハードデータ)や労働市場を含む遅行指数も今後同様に軟化が見込まれ、金融政策に影響を及ぼすと予想します。欧州ではエネルギー危機が緩和しつつあり、米国の成長見通しに対する失望が相対的に大きくなる可能性があります。
- 金利戦略において、米国を対欧州でオーバーウェイトといたします。また、通貨戦略において米ドルを対日本円等でアンダーウェイトといたします。
[テーマ3]世界的な利上げサイクルの成熟:金融政策スタンスの格差が拡大
- 中央銀行の利上げサイクルが終盤に突入するなかで、各国中銀の政策スタンスのばらつきが拡大する可能性があります。家計のバランスシートのレバレッジが高い国で、インフレのピークアウトが確認された国の中央銀行は、ハト派的な金融政策スタンスになる可能性が高いと考えます。一方、インフレ上昇が継続し、住宅市場の懸念が限定的な国の中銀は、タカ派的になる可能性があります。
- 金利戦略において、スウェーデン、英国をオーバーウェイトとするほか、英国のスティープ化のポジションを継続します。
[テーマ4]中国の唐突なゼロコロナ解除:経済回復の期待が徐々に高まる
- 中国がゼロコロナの政策方針を唐突に撤回したことはサプライズとなりました。まだ安心はできませんが、中国経済は現在の非常に弱い状態から正常化する可能性があります。中国の景況感が改善し、需要が本格的に回復すれば、国内だけでなく、アジア地域や多くのコモディティ産出国の成長見通しを押し上げることが期待されます。
- 通貨戦略において、アジア通貨のオーバーウェイトを組み入れる方針といたします。また、コモディティ関連通貨についてもオーバーウェイトの機会を模索いたします。
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