市況
2月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは上昇しました。米国は、雇用統計において雇用者数が市場予想を上回る大幅増となったほか、1月の消費者物価指数(CPI)が前月比で上昇したことから、連邦準備制度理事会(FRB)が長期にわたって利上げを継続するとの見方が強まり、米国債利回りは上昇しました。小売売上高や購買担当者景気指数(PMI)等経済指標も堅調となり、月を通じて利回りの上昇が継続しました。欧州では、欧州中央銀行(ECB)理事会の声明を受けてドイツ国債利回りは月初に低下して始まりましたが、その後は金融引き締めの早期終了観測が後退し、利回りは上昇に転じました。月末には、フランスやスペインのCPIの伸びが加速したことを受けて、ドイツ国債利回りは一段の上昇となり、月を終えました。英国は、月初に0.5ポイントの利上げを実施し、政策金利を4%まで引き上げました。英CPIは前年比の伸びが鈍化したものの、一部当局者が利上げ継続の必要性を示したこと等から英国債利回りも月を通じて上昇しました。
2月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.51%から3.92%、ドイツ10年債の利回りは2.29%から2.65%、英国10年債の利回りは3.33%から3.83%に上昇しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは-0.20%と、国債をアンダーパフォームしました。
パフォーマンス
2月の超過収益は-0.37%となりました。金利戦略は、米国の利上げ長期継続の見方から米国国債利回りが短期部分を中心に上昇しました。米国のオーバーウェイト(利回り低下を見込むポジション)や米国のスティープ化(長期と比べて短期部分の相対的な低下を見込むポジション)が主にマイナス寄与しました。通貨戦略は、月後半に対ニュージーランド・ドル等で米ドルをオーバーウェイトに転じたことや月前半のメキシコ・ペソのオーバーウェイトはプラス寄与となったものの、月前半の対日本円、豪ドル、韓国ウォンでの米ドルのアンダーウェイトが主にマイナス寄与となったほか、機動的に構築したノルウェー・クローネのオーバーウェイトもマイナスとなりました。クレジット戦略は、米国の投資適格社債はスプレッドは拡大した一方、欧州クレジットは堅調となったことから、米欧クレジットの小幅なオーバーウェイトによる寄与はほぼ中立となりました。
投資行動・投資方針
[テーマ1]ディスインフレ・レジームの扉が開く:主導するのは米国
- 米国で財インフレの鈍化の兆候が継続すると予想します。一方で、サービスのインフレは粘着質でインフレ収束には時間がかかると考えられます。なお、インフレ率を主要中銀の目標金利(2%)まで抑制することは困難なプロセスであり、労働市場が更に軟調となる必要があると考えますが、2023年前半には初期段階の改善が比較的急速に進むと見込まれます。•労働市場の強さを示す指標とスポットインフレの上昇を受けて、当テーマの確信度を弱めています。通貨戦略における選別的なエマージング通貨のオーバーウェイトを縮小しています。クレジット戦略においては、投資適格社債の小幅なオーバーウェイトは継続いたします。
[テーマ2]米国の経済成長率の低下:その他地域の減速に”追いつく”
- インフレ率が持続的な水準まで低下するには、景気後退が必要であると考えます。景気先行指数(ソフトデータ)は既に軟化傾向となっており、一致指数(ハードデータ)や労働市場を含む遅行指数も今後同様に軟化が見込まれ、金融政策に影響を及ぼすと予想します。欧州ではエネルギー危機が緩和しつつあり、米国の成長見通しに対する失望が相対的に大きくなる可能性があります。
- 足元の米経済指標の堅調さが経済成長の変化の兆候を表すのか、単純にデータの歪みの問題であるのかを見極める必要があるとして、当テーマの確信度を引き下げています。金利戦略において、米国をオーバーウェイトとする方針を継続しますが、ポジションは小幅とします。
[テーマ3]世界的な利上げサイクルの成熟:金融政策スタンスの格差が拡大
- 中央銀行の利上げサイクルが終盤に突入するなかで、各国中銀の政策スタンスのばらつきが拡大する可能性があります。家計のバランスシートのレバレッジが高い国で、インフレのピークアウトが確認された国の中央銀行は、ハト派的な金融政策スタンスになる可能性が高いと考えます。一方、インフレ上昇が継続し、住宅市場の懸念が限定的な国の中銀は、タカ派的になる可能性があります。
- 金利戦略において、英国をオーバーウェイトとするほか、英国のスティープ化のポジションを継続いたします。
[テーマ4]中国の唐突なゼロコロナ解除:経済回復の期待が徐々に高まる
- 中国がゼロコロナの政策方針を唐突に撤回したことはサプライズとなりました。まだ安心はできませんが、中国経済は現在の非常に弱い状態から正常化する可能性があります。中国の景況感が改善し、需要が本格的に回復すれば、国内だけでなく、アジア地域や多くのコモディティ産出国の成長見通しを押し上げることが期待されます。
- 通貨戦略において、アジア通貨のオーバーウェイトを組み入れる方針といたしますが、足元は投資家センチメントの振れ幅を考慮し、対ニュージーランド・ドルでの米ドルのオーバーウェイト等リスク相殺取引を機動的に組み入れます。
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