市況
3月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは低下しました。米国は、月初10年債利回りが4%を超える水準に上昇しましたが、シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスのUBSによる買収を受けて投資家のリスク回避姿勢が強まり、利回りは大幅に低下しました。月下旬は、当局による対応等を受けて銀行システム不安が和らぐ一方、連邦準備制度理事会(FRB)は0.25ポイントの利上げを実施したものの、パウエル議長の発言等がハト派として市場で受け止められ、米利上げ早期終了への期待が強まったことから、利回りの上昇は抑えられ、月を終えました。欧州でも、クレディ・スイスのUBSによる買収等が影響し、月半ばにかけてドイツ国債利回りが大幅に低下しました。ただし、欧州中央銀行(ECB)により0.5ポイントの利上げが決定され、インフレ対応を優先する姿勢が示されたこと等から月末にかけては、短期債利回りを中心にやや戻して月を終えました。英国は、イングランド銀行が0.25ポイントの利上げを実施し、インフレが持続する場合は更なる利上げが必要だと言明しました。英国債利回りも米欧同様に低下となりましたが、英2年債利回りの低下幅は米欧と比べて小幅となりました。
3月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.92%から3.47%、ドイツ10年債の利回りは2.65%から2.29%、英国10年債の利回りは3.83%から3.49%に低下しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは-0.66%と、国債をアンダーパフォームしました。
パフォーマンス
3月の超過収益は-0.51%となりました。金利戦略は、米国のスティープ化ポジションが月上旬にマイナスとなったものの、米国および英国の小幅なオーバーウェイト(利回り低下を見込むポジション)がプラスとなりました。通貨戦略は、月前半は米ドルに対して強気とし、主に対英ポンドでオーバーウェイトとしていましたが、米ドルが弱含んだことから、マイナス寄与となりました。また、スウェーデン・クローナの対ユーロでのアンダーウェイトは、スウェーデンのコアインフレの上振れと中銀の姿勢を受けてマイナス寄与となり、ポジションを解消しました。その他、月上旬に解消した韓国ウォンの対ユーロでのオーバーウェイトもマイナスとなりました。クレジット戦略は、米欧銀行システム不安等を背景に、銀行セクターを中心に社債のスプレッドは拡大し、米投資適格社債の小幅なオーバーウェイトがマイナスに寄与しました。ただし、証券化商品でのセクター配分はプラスに寄与し、マイナスの一部を相殺しました。
投資行動・投資方針
[テーマ1]グローバル経済成長に対するダウンサイドリスクが高まる
- グローバルに経済成長に対するリスクは下方に傾いており、米国は今年後半に景気後退に陥る可能性が高いとみています。金融政策の効果はタイムラグをもって現れるため、金融引き締めの本格的な影響はこれから表面化すると見込まれます。また、銀行の貸出基準の厳格化は、引き続き経済成長への逆風となることが予想されます。
- 金利戦略において、グローバル・デュレーションをオーバーウェイトといたします。また、通貨戦略においては、景気循環通貨対比で米ドルおよび/もしくはユーロをオーバーウェイトといたします。
[テーマ2]ディスインフレ期間に突入:米国が先行
- 先行指標は今後数ヶ月間のインフレ見通しが改善することを示唆しています。コモディティ価格の下落に加え、今年前半はベース効果が前年同月比のインフレ率において強力な下押し圧力として作用すると考えられます。地域や国のインフレの乖離は今後も続き、米国はディスインフレが先行して発生すると見込んでいます。欧州コア国のインフレのピークは今年半ばと予想します。
- 金利戦略において、米国をオーバーウェイトといたします。通貨戦略では、ユーロを対米ドルでオーバーウェイトとする方針といたします。クレジット戦略では、投資適格社債をオーバーウェイトといたします。
[テーマ3]米欧銀行でのストレス発生:利上げの最終到達点は予想より早く、そして低く
- 米シリコンバレー銀行の破綻に端を発した銀行システム不安は、銀行融資や信用基準のさらなる引き締めにつながり、経済成長にとってさらなる逆風となるとみています。さらに金融政策にも影響を及ぼし、政策金利のピークが以前よりも早く、そして低くなる可能性があります。なお、ユーロ圏の循環的インフレサイクルは米国に遅行しているため、ECBの利上げは相対的に長引くと見込まれます。
- 金利戦略において、米国をオーバーウェイト(単独、もしくは対欧州)とするほか、米国のスティープ化ポジションを構築する方針といたします。
[テーマ4]一部国は利下げサイクル入り間近
- 世界の金融引き締めサイクルが成熟するにつれて、金融政策の乖離拡大が予想されます。大幅な引き締めを行った一部の中央銀行(特に米国)は、急激な経済減速に直面した場合の金融緩和の余地が大きいと考えられます。一方、豪州は、景気サイクルが米国に遅行しており、今度コアインフレが上振れする可能性があるとみています。また、住宅市場の脆弱性等金融引き締めに制約のある国の中央銀行は、使用可能な対応手段が限定され、結果、金融政策によるサポートが長期に及ぶ可能性があります。
- 金利戦略において、米国を対カナダ等でオーバーウェイトといたします。通貨戦略において、対英ポンドや対スウェーデン・クローナでユーロをオーバーウェイトとする方針といたします。
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