市況
5月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りはまちまちの動きとなりました。米国は、連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利上げを決定したものの、地方銀行に対する懸念が継続し、月初は利回り低下しました。その後、堅調な経済指標やインフレ期待の上昇等を受けて追加利上げ観測が台頭し、利回りは上昇に転じました。また、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者のタカ派的な発言も影響し、短期債を中心に利回りの上昇基調が継続しました。なお、債務上限は月半ば以降市場の不透明要因となりましたが、上限引き上げが基本合意に達したことが安心感につながり、月末は利回りは低下しました。欧州は、経済指標で製造業の低迷が示されたほか、月末にかけて発表された欧州域内各国のインフレ率が市場予想以上に鈍化したことから、利回りは月末にかけて低下し、ドイツ10年債利回りは前月末比でも小幅低下で終えました。英国は、4月の消費者物価指数(CPI)は前月から鈍化したものの、依然としてインフレ圧力の根強さが示されたこと等から英国債利回りは短期部分を中心に米欧を大幅に上回る上昇となりました。
5月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.42%から3.64%に上昇、ドイツ10年債の利回りは2.31%から2.28%に低下、英国10年債の利回りは3.72%から4.18%に上昇となりました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは-0.03%と、国債を小幅にアンダーパフォームしました。
パフォーマンス
5月の超過収益は-0.32%となりました。金利戦略は、豪州のアンダーウェイト(利回り上昇を見込むポジション)や月末にかけて機動的に構築したドイツのオーバーウェイト(利回り低下を見込むポジション)はプラスに寄与したものの、米国および英国のオーバーウェイトが主にマイナスに寄与しました。通貨戦略は、スウェーデン・クローナのアンダーウェイトはプラスに寄与したものの、欧州の経済指標で製造業の低迷が示されたことから、ユーロの対米ドルや対加ドルでのオーバーウェイトが主にマイナスに寄与しました。クレジット戦略は、米国投資適格社債や米国政府関連債における銘柄選択がマイナスに寄与しました。
投資行動・投資方針
[テーマ1]グローバル経済成長に対するダウンサイドリスクが高まる
- グローバルに経済成長に対するリスクは下方に傾いており、米国は今年後半に景気後退に陥る可能性が高いとみています。金融政策の効果はタイムラグをもって現れるため、金融引き締めの本格的な影響はこれから表面化すると見込まれます。また、銀行の貸出基準の厳格化は、引き続き経済成長への逆風となることが予想されます。
- 金利戦略において、グローバル・デュレーションをオーバーウェイトといたします。また、通貨戦略においては、英ポンドをアンダーウェイトといたします。
[テーマ2]ディスインフレ期間に突入:米国が先行
- 先行指標は今後数ヶ月間のインフレ見通しが改善することを示唆しています。コモディティ価格の下落に加え、今年前半はベース効果が前年同月比のインフレ率において強力な下押し圧力として作用すると考えられます。地域や国のインフレの乖離は今後も続き、米国はディスインフレが先行して発生すると見込んでいます。欧州コア国のインフレのピークは今年半ばと予想します。
- クレジット戦略では、投資適格社債を機動的にオーバーウェイトとする方針といたします。
[テーマ3]米欧銀行でのストレス発生:利上げの最終到達点は予想より早く、そして低く
- 米シリコンバレー銀行の破綻に端を発した銀行システム不安は、銀行融資や信用基準のさらなる引き締めにつながり、経済成長にとってさらなる逆風となるとみています。さらに金融政策にも影響を及ぼし、政策金利のピークが以前よりも早く、そして低くなる可能性があります。なお、ユーロ圏の循環的インフレサイクルは米国に遅行しているため、ECBの利上げは相対的に長引くと見込まれます。
- 金利戦略において、米国のスティープ化ポジションを構築する方針といたします。
[テーマ4]一部国は利下げサイクル入り間近
- 世界の金融引き締めサイクルが成熟するにつれて、金融政策の乖離拡大が予想されます。大幅な引き締めを行った一部の中央銀行(特に米国)は、急激な経済減速に直面した場合の金融緩和の余地が大きいと考えられます。一方、豪州は、景気サイクルが米国に遅行しており、今度コアインフレが上振れする可能性があるとみています。また、住宅市場の脆弱性等金融引き締めに制約のある国の中央銀行は、使用可能な対応手段が限定され、結果、金融政策によるサポートが長期に及ぶ可能性があります。
- 金利戦略において、豪州を対ニュージーランドでアンダーウェイトといたします。
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