市況
7月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りはまちまちの動きとなりました。米国は、堅調な雇用関連指標を受けて米国債利回りが上昇して始まりましたが、その後、消費者物価指数(CPI)の伸びが市場予想を下回ったことを受けて、月半ばには前月末の水準付近まで低下しました。月下旬は、堅調な経済指標を受けて再び上昇基調に転じました。なお、連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25ポイントの利上げが実施されました。月を通じては、2年債利回りは低下、10年債利回りは上昇となりました。欧州は、月半ば過ぎまでは米国と同様の動きとなりました。月下旬に実施された欧州中央銀行(ECB)では0.25ポイントの利上げが実施されましたが、欧州主要国のインフレが鈍化するなか、次回会合では利上げを一時停止するとの見方が強まり、ドイツの短期債利回りは低下で月を終えました。ドイツ10年債利回りは月間で上昇となりました。英国は、6月CPIの前年比上昇率が予想以上に鈍化したことを受けて、次回会合での追加利上げ幅がこれまでの予想よりも小幅となるとの見方から、英国は短期債を中心に利回りが低下し、10年債利回りも低下で終えました。
7月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.81%から3.95%、ドイツ10年債の利回りは2.39%から2.47%に上昇した一方、英国10年債の利回りは4.39%から4.31%に低下しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは0.85%と、国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
7月の超過収益は0.10%となりました。
金利戦略は、カナダの対米国でのアンダーウェイト(相対的な利回り上昇を見込むポジション)や、月半ばに構築した欧州の対米国でのオーバーウェイト等の国別選択がプラス寄与となりました。イールドカーブでは、金融政策の乖離を見込み、豪州のフラット化と米国のスティープ化を組み合わせるポジションを構築しました。当ポジションの寄与は当月は限定的となりました。
通貨戦略は、高利回り通貨のキャリー獲得のために組み入れたメキシコ・ペソのオーバーウェイト(対加ドル)が当月もプラスに寄与しました。なお、スウェーデン・クローナの対豪ドルでのアンダーウェイトを構築しました。
クレジット戦略は、リスク性資産が当月も堅調に推移するなか、米欧の投資適格社債の小幅なオーバーウェイトや政府関連債の保有がプラスに寄与しました。なお、低ボラティリティ環境でのインカム追求を目的に欧州を中心に投資適格社債の保有を維持しました。また、年前半の発行増を受けて利回りが魅力的な水準になったとみる欧州カバードボンドの購入を実施しました。
投資行動・投資方針
堅調な米国経済とインフレの鈍化を受けて、少なくとも当面は景気後退が回避される可能性との市場の見方が足元高まりつつあります。しかしながら、6月のユーロ圏コア・インフレ率改定値の上方修正に対しては市場がネガティブに反応しており、今後も引き続きインフレの動向に注意が必要と考えます。中央銀行が緩和姿勢に転じる主なカタリストの一つに労働市場の悪化が挙げられますが、雇用は底堅さが続いており、債券市場は当面は方向感を欠く展開となることが見込まれます。
インフレと経済成長の道筋が明確になるまでは、全体的な市場の方向性が見えてくる可能性は低いと考える一方、地域的な乖離は継続すると予想します。ECBは経済成長の減速に敏感になっており、フォワード・ガイダンスで金融政策の柔軟性を示唆する可能性が高まっています。このような環境下、欧州デュレーションをオーバーウェイトとする方針といたします。その他、スウェーデンは金利感応度の高い経済の一つであることから、金利上昇の経済への影響が懸念されます。一方、豪州については、インフレ第二波のリスクを勘案すると、金融引き締めに関する市場の織り込みは不足しているとの見方をしています。よって、スウェーデン・クローナを対豪ドルでアンダーウェイトとするほか、豪州イールドカーブのフラット化ポジションを構築いたします。
なお、現在は資本市場のボラティリティが低下しており、インカム追求にとって好環境といえます。しかしながら、景気後退リスクは依然存在しているとの見方を維持し、保守的な姿勢で質を追求することが賢明だと考えます。相対的にディフェンシブなセクターを選好し、質の高いクレジット(証券化商品を含む)に投資機会があるとみています。
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