市況
1月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは概ね上昇しました。米国は、堅調な経済指標や当局者の発言等を受けて早期の利下げ観測が後退し、国債利回りは上昇基調で推移しました。ただし、米財務省が1-3月期の連邦政府の借り入れ見通しを下方修正したこと等が影響して月末は国債利回りが低下しました。月を通じては長期債利回りは上昇の一方、短期債利回りは低下となりました。欧州では、複数の欧州中央銀行(ECB)当局者による発言等を受けて、早期利下げ観測が後退し、月半ば過ぎまでドイツ国債利回りの上昇基調が継続しました。ECB理事会では政策金利が3会合連続で据え置かれましたが、ラガルド総裁が夏以降に利下げがあり得るとの考えを改めて示したことから、月末にかけてドイツ国債利回りは短期債を中心に低下しましたが、それまでの上昇を相殺するには至らず、月を終えました。英国は、12月の消費者物価指数(CPI)前年比上昇率が10カ月ぶりに加速したことから、英国10年債利回りの上昇幅は米欧に比べて大きくなりました。
1月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.87%から3.95%、ドイツ10年債の利回りは2.03%から2.16%、英国10年債の利回りは3.54%から3.80%に上昇しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは0.44%と、国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
1月の超過収益は0.11%となりました。
金利戦略は、米国およびカナダでのスティープ化ポジションが奏功したほか、国別選択でのカナダのデュレーションのU/W (利回りの相対的な上昇を見込むポジション)もプラスに寄与しました。
通貨戦略は、米国早期利下げ観測の後退に伴い、米ドルが主要通貨に対し上昇したため、豪ドルの対米ドルでのO/Wがマイナスに寄与しました。
クレジット戦略は、欧州の投資適格社債やカバードボンドの保有がプラスに寄与しました。また、米国投資適格社債における銘柄選択もプラスの寄与となりました。
投資行動・投資方針
マクロ経済シナリオ分析では、インフレ見通しの改善、金融環境の緩和のほか、主要先行指標(銀行貸出等)に経済安定の兆しがみられていること等を理由に、ソフトランディングの実現可能性が上昇した一方、ハードランディングの実現可能性が低下しています。インフレ鈍化の流れが継続しているほか、米国の賃金上昇率等の主要な指標は引き続き低下傾向にあり、退職率等の先行指標も、今後もさらなる改善が期待できるという楽観的な状況を示唆しています。このような状況を受けて、中央銀行の当局者は、金融引き締めではなく、金融緩和の方向に目を向けることができるようになりました。
ソフトランディングの実現可能性が上昇していることは、米国、ユーロ圏、英国の循環的経済成長のスコアが改善していることとも合致しています。金融環境の緩和を受けた良好な見通しと相まって、経済循環性が高く、資本集約的な特性を持つ製造業で、底打ち若しくは上方シフトの兆しが確認されています。
インフレ率の低下を受けて中央銀行が金融政策を緩和できる余地が生じていることは、ソフトランディングの実現可能性を高める重要な要素と言えます。なお、市場はすでに金融緩和に対する織り込みを進めており、金融引き締めが経済に与える影響のピークはすでに過ぎた可能性があります。このような背景から、ノーランディングの実現可能性は維持した一方で、ハードランディングの実現可能性を低下させています。
このような見通しに基づき、金利戦略では、全体的なデュレーションについては中立とする一方、イールドカーブのスティープ化への選好を維持いたします。その他、先進国に先んじて利上げを実施したエマージング国ではインフレの落ち着きに伴って利下げ可能性が高まっており、選別的に強気といたします。クレジット戦略では、証券化商品やカバード・ボンド等高クオリティながら同等の格付けの国債に比べて相対的に高い利回りを提供するセクターを引き続き選好します。社債では、欧州の投資適格社債を選好いたします。通貨戦略は、米ドルは若干の弱気方向でみておりますが、インフレ鈍化の価格への織り込みが進んだとみて、確信度はやや弱めています。
注記:ソフトランディングは、グローバル経済が緩やかに減速し、市場も緩やかな景気後退を織り込むシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル小幅下落、スプレッド堅調となります。ハードランディングは、グローバル経済が急激に悪化し、市場のリスク許容度が急低下するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル上昇、スプレッド軟調となります。ノーランディングは、経済の堅調さが継続、インフレは鈍化も目標は上回り、利上げが長期化するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、国債利回り上昇、クレジット・スプレッド小幅軟調となります。
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