市況
5月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りはの動きはまちまちとなりました。米国は、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が次の政策変更が利上げになる可能性は低いと発言したことや、労働市場の緩和が示されたことを受けて、月初に米国債利回りは低下しました。月半ばには消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化し、利回りの低下が進みました。月後半には堅調な先行指標を受けて短期債利回りを中心に上昇する場面がありましたが、国内総生産(GDP)の下方改定や個人消費支出(PCE)コア価格指数鈍化等を受けて、月末は再び利回りは低下し、月を終えました。欧州は、欧州中央銀行(ECB)による6月の利下げがほぼ確実視されるなか、月前半は米国の動きに伴ってドイツ国債利回りは低下しました。しかし、月後半は一部当局者により7月以降の利下げ継続に対して慎重な発言がなされたことや、ドイツのインフレ率が再加速していること等を受けてドイツ国債利回りは上昇し、月を通じても上昇となりました。英国は、ベイリー英イングランド銀行総裁が、今後数カ月の緩和ペースを市場が過小評価している可能性があると示唆したこと等が影響し、短期債利回りを中心に低下しました。
5月の国債市場では、米国10年債の利回りは4.68%から4.49%に低下、ドイツ10年債の利回りは2.58%から2.65%に上昇、英国10年債の利回りは4.35%から4.32%に低下となりました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは0.30%と、国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
5月の超過収益は0.01%となりました。
金利戦略は、米国の対ドイツでのO/W (相対的な利回り低下を見込むポジション)および英国の対ドイツでのO/W等国別選択が奏功したほか、インドネシア等選別的なエマージング債券の保有もプラス寄与となりました。
通貨戦略は、月を通じて通貨リスクを抑制したことから、寄与はほぼ中立となりました。
クレジット戦略は、米国投資適格社債のU/Wはマイナスに寄与したものの、欧州の投資適格社債のO/Wのほか、米国モーゲージ債のO/Wやカバードボンドの保有がプラスに寄与しました。
投資行動・投資方針
マクロ経済シナリオ分析では、ソフトランディング・シナリオをベースケースとして維持し、その実現可能性を引き上げた一方、ノーランディング・シナリオの実現可能性を引き下げています。これは米国経済減速の兆しが見え始めたことやインフレに関しても改善が見られたことを反映しています。
欧州中央銀行(ECB)が6月に政策金利を引き下げ、英イングランド銀行(BoE)もそれに続くと可能性が高いとみています(2024年6月14日時点)。もちろん、ECBやBoEの動きは重要と考える一方、米連邦準備制度理事会(FRB)の動向が世界の金融市場にとって最も重要であることは明らかです。FRBが金融環境、コモディティ価格、為替動向などに与える影響を考慮すると、米国以外の中央銀行の金利の動向が、今後数ヶ月のFRBの動きに影響されないとは考えにくいでしょう。
米国経済については、減速の兆しが見え始めています。5月に発表された経済指標は第1四半期の労働市場の過熱が一時的なものであったことを示唆しています。ただし、労働市場は依然健全な状態と言えることには注意が必要です。なお、米インフレ率についても改善の兆しが見えてきました。コア・インフレ率は絶対的な水準では依然として高いものの、1-3月期からの改善は好材料と言えます。米国経済成長の鈍化が継続すれば、FRBが年内に政策金利の引き下げを開始する道が開けるとみられます。
このような見通しに基づき、金利戦略では、グローバルのデュレーションおよび他地域比での米国債に対して強気の見方といたします。また、英国債に対しての選好も継続いたします。その一方でカナダやドイツは相対的に弱気姿勢といたします。イールドカーブについては、スティープ化への選好も継続いたします。クレジット戦略では、証券化商品やカバード・ボンド等高クオリティながら同等の格付けの国債に比べて相対的に高い利回りを提供するセクターを引き続き選好します。社債については、年限が短めの欧州投資適格社債についての選好も維持いたします。米国投資適格社債については、スプレッドが歴史的にタイトな水準になっており、弱気の見方を維持いたします。
注記:ソフトランディングは、グローバル経済が緩やかに減速し、市場も緩やかな景気後退を織り込むシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル小幅下落、スプレッド堅調となります。ハードランディングは、グローバル経済が急激に悪化し、市場のリスク許容度が急低下するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル上昇、スプレッド軟調となります。ノーランディングは、経済の堅調さが継続、インフレは鈍化も目標は上回り、利上げが長期化するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、国債利回り上昇、クレジット・スプレッド小幅軟調となります。
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