市況
6月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは低下しました。米国は、月初に発表された経済指標により経済の減速が意識されたことや、5月の消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化したことを受けて米国債利回りは月前半に低下しました。ただし、連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者による2024年中の利下げ回数の予想中央値が1回に引き下げられたことや、月下旬には豪州CPIが半年ぶりの高い伸びとなったこと等も影響し、米国債利回りはやや戻し、月を終えました。欧州は、欧州中央銀行(ECB)は事前予想通り0.25%の利下げを決定しましたが、ドイツ国債利回りは月初に低下した後、前月末の水準まで戻しました。その後、欧州議会選挙での結果を受け、フランスのマクロン大統領が国民議会の解散を決定したことから、政治不透明感を背景にフランス国債利回りは上昇する一方、ドイツ国債利回りは安全資産需要から低下する展開となりました。月を通じてもドイツ国債利回りは低下の一方、フランス国債利回りは上昇し、独仏10年債の利回り格差は2012年来の水準まで拡大し、月を終えました。英国では、政策金利の据え置きが決定されましたが、市場では今後数ヵ月内に利下げが実施されるとの期待が高まり、英国債利回りは低下しました。
6月の国債市場では、米国10年債の利回りは4.49%から4.37%、ドイツ10年債の利回りは2.65%から2.49%、英国10年債の利回りは4.32%から4.18%に低下となりました。クレジット市場については、クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは-0.47%と、国債をアンダーパフォームしました。
パフォーマンス
6月の超過収益は0.29%となりました。
金利戦略は、米国の対カナダでのO/W (相対的な利回り低下を見込むポジション)はマイナスに寄与したものの、米国のO/Wや英国の対ドイツでのO/Wが主にプラスに寄与しました。また、機動的に構築し、月半ばに解消した米10年ゾーンのO/W対欧州30年ゾーンのU/Wも奏功しました。
通貨戦略は、月を通じて通貨リスクを抑制したことから、寄与はほぼ中立となりました。
クレジット戦略は、米国投資適格社債のU/Wがプラスに寄与した一方、カバードボンドの保有や欧州投資適格社債のO/Wがマイナスに寄与し、全体では小幅ながらマイナスとなりました。
投資行動・投資方針
マクロ経済シナリオ分析では、米国インフレの改善を理由に、ソフトランディングシナリオの実現可能性をさらに引き上げた一方、ノーランディング・シナリオの実現可能性を引き下げています。なお、ハード・ランディングの実現可能性は非常に小さいとの見方を維持しています。
主要な中央銀行の会合は概ね予想通りで通過しました。欧州中央銀行(ECB)は緩和サイクルをスタートさせましたが、この動きは事前に十分に認識されていました。しかしながら、最近のユーロ圏サービス・インフレの根強さと経済成長の回復基調を考慮すると、ECBの次の動きは慎重なものになると予想されます。米連邦準備制度理事会(FRB)については、金利見通しを修正し、年内の利下げ回数の示唆は中央値では年内1回に引き下げられました。ただし、最頻値では、8人の委員が2回の利下げを示唆しており、市場もこちらを織り込んでいます。
運用チームでは様々な経済指標を考慮しますが、現在の環境下では、米国のインフレ動向が最も重要と考えます。5月発表の米消費者物価指数(CPI) は、住居費は粘着性を示したものの、全体としては明るい兆しを示しました。そして、住宅を除くサービス(いわゆるスーパーコア)指標は大幅に改善し、前月比ベースでは下落となりました。よって、ソフトランディング・シナリオの実現可能性をさらに高めています。
このような見通しに基づき金利戦略では、ソフトランディング・シナリオの実現可能性を高めたものの、市場の織り込みも進んだため、ここからの更なるラリーの可能性は高くはないとみて、デュレーションに対しての強気姿勢は弱め、イールドカーブに関しても機動的なポジション構築を行う方針といたします。クレジット戦略では、欧州における政治不透明感を警戒し、カバードボンドに対する強気姿勢をやや弱めています。ただし、国際機関債その他政府関連債対比では引き続き選好する姿勢といたします。なお、エージェンシー・モーゲージ債は高クオリティのクレジットとして選好を継続いたします。社債については、欧州投資適格社債を対米国で選好する姿勢を継続しています。米国投資適格社債については、スプレッドが歴史的にタイトな水準になっており、国債対比でのリスク・リターンの魅力度が薄いと考え、全体的に弱気の見方を維持いたします。
注記:ソフトランディングは、グローバル経済が緩やかに減速し、市場も緩やかな景気後退を織り込むシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル小幅下落、スプレッド堅調となります。ハードランディングは、グローバル経済が急激に悪化し、市場のリスク許容度が急低下するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル上昇、スプレッド軟調となります。ノーランディングは、経済の堅調さが継続、インフレは鈍化も目標は上回り、利上げが長期化するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、国債利回り上昇、クレジット・スプレッド小幅軟調となります。
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