市況
7月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは低下しました。米国は、労働市場のひっ迫緩和やインフレの伸び鈍化を示す経済指標を受けて、月を通じて米国債利回りの低下基調が継続しました。月末には連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、政策金利は据え置かれたものの、会合後の記者会見でパウエル連邦準備制度理事会(FRB)理事長が次回の会合で政策金利の引き下げが選択肢となり得ると述べたことから、米国債利回りは月中の最も低い水準で月を終えました。欧州は、フランス国民議会選挙において中道の与党連合と左派連合が協力し、極右の躍進を抑える動きがみられるなか、安全資産需要によるドイツ国債の選好の巻き戻しが起こり、ドイツ国債利回りは月初上昇しました。決戦投票は左派連合が最大勢力となり、極右を抑えたものの、明確な過半数を獲得した政党がなく、新政権成立に関する不透明感が継続する結果となりました。その後は、ユーロ圏の景況感やインフレに関する指標を受けて欧州中央銀行(ECB)の追加利下げ観測が強まり、ドイツ国債利回りは低下しました。英国は、サービスインフレの高止まりが示されたものの、賃金の伸びは抑えられたことや当局者の発言等も影響し、英国債利回りは低下しました。
7月の国債市場では、米国10年債の利回りは4.37%から4.06%、ドイツ10年債の利回りは2.49%から2.30%、英国10年債の利回りは4.18%から3.97%に低下となりました。クレジット市場については、クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは0.19%と、国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
7月の超過収益は-0.32%となりました。
金利戦略は、利回り追求を目的に継続した選別的なエマージング債券の保有がプラスに寄与したほか、月中に機動的に構築、解消した豪州の対米国でのO/Wもプラスとなったものの、ソフトランディングシナリオの織り込みが十分に進んだとみて構築した米国のU/W(利回り上昇を見込むポジション)がマイナスに寄与し、全体でもマイナスとなりました。
通貨戦略は、米ドルの対ユーロでのO/Wが小幅にプラスとなったものの、ノルウェー・クローネのスウェーデン・クローナに対するO/Wはマイナスとなり、全体でも小幅にマイナス寄与となりました。
クレジット戦略は、カバードボンドのO/Wがプラスに寄与したほか、社債についても、欧州投資適格社債のO/Wがプラスに寄与したほか、米国投資適格社債は全体ではU/Wとしましたが、銘柄選択が奏功し、小幅ながら小幅なプラスとなりました。
投資行動・投資方針
マクロ経済シナリオ分析では、ソフトランディング・シナリオの実現可能性をさらに引き上げています。このような変更を行った背景としては、ディスインフレがさらに進展し、労働市場に軟化の兆しがみられることから、米連邦準備制度理理事会(FRB)が急激な景気後退を回避するために十分な金融緩和を行うことが出来るという見方が強まったことがあります。
米国経済は2023年に好調なパフォーマンスを示し、楽観的な見方が強まりましたが、2024年は相対的に期待外れとなる可能性があります。期待の高まりに反してデータの軟化が反映され、シティ米国エコノミック・サプライズ指数は歴史的な低水準まで低下し、コンセンサスに対するデータの下振れ幅が大きくなりました。これは米国経済が軟調であることを示しているわけではなく、楽観的な経済予測に比べて、モメンタムが徐々に弱まってきていることを反映しています。なお、重要な点として、短期的には期待外れのデータが続いたとしても、景気後退圧力が高まる可能性は限定的であると運用チームではみています。世界的な製造業サイクルの改善、緩やかな金融環境、中立的な信用状況、実質所得の緩やかな上昇等の要因は、経済成長の小幅な鈍化のみを示しています。
なお、政治的な不透明感については主要国で継続しています。フランスについては、新政権樹立への道筋は依然不透明ですが、膠着状態が続いているため、以前議論されていたような極端な予算案の成立の可能性が低下していることは、現時点では投資家の安心感につながっています。また、米国大統領選挙については、ここ数週間で情勢が大きく変化しており、今後数か月間は不透明感が継続することが見込まれます。
このような見通しに基づき、金利戦略では、ソフトランディング・シナリオの実現可能性を高めたものの、市場の織り込みも進んだため、全体としてはリスクを抑制する姿勢といたします。米国については、利回りの低下が急速に進んだことから機動的にU/Wといたします。エマージング債券については、米国の利下げタイミングが近づいてきていることはエマージング市場にとって好材料と考え、選別的な保有を継続いたします。クレジット戦略では、エージェンシー・モーゲージ債およびカバードボンドは高クオリティのクレジットとして選好を継続いたします。社債については、欧州投資適格社債を対米国で選好する姿勢を継続しています。米国投資適格社債については、スプレッドは依然としてタイトな水準にあるとみて、全体的に弱気の見方を維持いたします。通貨戦略は、通貨リスクは全体としては引き続き抑制し、中央銀行のスタンスの相対的な違い等を捉えるポジションを機動的に構築してまいります。
注記:ソフトランディングは、グローバル経済が緩やかに減速し、市場も緩やかな景気後退を織り込むシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル小幅下落、スプレッド堅調となります。ハードランディングは、グローバル経済が急激に悪化し、市場のリスク許容度が急低下するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル上昇、スプレッド軟調となります。ノーランディングは、経済の堅調さが継続、インフレは鈍化も目標は上回り、利上げが長期化するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、国債利回り上昇、クレジット・スプレッド小幅軟調となります。
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