市場環境
3月は、日銀がマイナス金利解除など金融政策の正常化を決定したものの緩和的な金融環境は継続するとの見方の中で円安が進行、インフレ定着への期待も広がり3か月連続の上昇となりました。TOPIX(配当込み)で+4.4%の上昇でした。年度初来では+41.3%となっています。
出所:Bloomberg
主要戦略運用パフォーマンス
市場動向としては、不動産が大幅上昇し、石油・石炭製品など資源関連、電気・ガス、保険など金融、建設や機械なども大きく上昇しました。一方で、大きく反落した海運の他、精密機器、医薬品、陸運、情報・通信などが軟調でした。スタイルではバリュー優位が強まりグロース株は軟調、規模別では、大型株の小型株に対するアウトパフォームが継続したものの、そのパフォーマンス格差は大きくありませんでした。
弊社の主要戦略のパフォーマンスは、前月の逆風のトレンドが継続し全般的に厳しい結果となりました。バリュー優位の中でイールド、オポチュニティについてはベンチマーク並みのパフォーマンスとなりましたが、コア、小型、マイクロ、グロース、サステナブルについてはアンダーパフォーマンスとなりました。
パフォーマンス一覧速報(対ベンチマーク超過収益)
出所:Bloomberg、シュローダー、各戦略コンポジット(運用報酬控除前)、超過収益は対ベンチマーク、TOPIX配当込及びRussell/Nomura Small Capインデックス、Micro Capインデックス
今こそ中小型株の投資機会
古谷 卓也
アナリスト
本コラムでは、日本株式運用チームのファンドマネジャー、アナリストが毎月入れ替わりで市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。
2024年に入り小型株の対大型株、対市場でのアンダーパフォームが加速しています。これは株式市場全体の大きな上昇トレンドが一握りの大型株に牽引されている事の結果で、需給要因が大きいと思っています。かたやファンダメンタル、特に今年度、来年度の一株当たり利益の成長率は中小型株が大型株を凌駕しています。結果として、大型株に対する中小型株の割安度が歴史的に見ても大きくなっています。こういった定量的な視点に加えて日頃のボトムアップ調査の洞察から感じる産業ファンダメンタル、企業ファンダメンタルの変化は大企業優位という株式市場の相場付きと逆の事を示唆していると感じています。
代表的な例として、人的リソースの慢性的な不足から価格交渉力の構造的上昇と経済的付加価値が中期的に中小企業へシフトする可能性を感じています。具体的には建設業界、ITサービス業界、製造業では自動車業界などで徐々に進んでいますが、株式市場には認識されていないように感じています。特に今後の賃金上昇の製品・サービス価格への転嫁が構造的に進み、これが下請け構造からの脱皮につながり過去から現在も継続する対大型株に対するバリュエーションディスカウントの適正化が進むことにより大きなアルファが得られる可能性を感じています。
これに加えてESGの観点、ガバナンス向上による株主価値の向上余地とオポチュニティは小型株により存在しますし、脱炭素・脱グローバル化の動きが売り上げ成長の構造的な上昇につながるケースも散見されます。資本コストとそれを上回るリターンを上げることへの意識が強くなれば大企業からのむげな値引き要請、不採算取引を自粛する動きが強くなると思いますので、中小型株の構造的なROICの改善につながり、割安なバリュエーションの是正につながると考えています。加えて小型株の中には、脱炭素を志向するユーザーへそれに対応する製品・サービスを提供できる会社、水素社会への移行から恩恵を受ける会社など検挙にいとまがないぐらい豊富なオポチュニティが存在します。
ここ数年の主要証券会社のリソース縮小から小型株銘柄のカバレッジは低下傾向にあり、株式市場に認識されていない投資機会は今まで以上に多くなっていると思います。結果として、上記のファンダメンタルトレンドが認識されていないための情報ギャップが拡大しています。このような状況下において、今こそボトムアップリサーチからの銘柄選択の強みが発揮できる環境であると感じています。
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