市場環境
7月は、上旬には日経平均で史上最高値を更新しましたが、米国におけるFRBによる利下げ開始を織り込む状況下での円高進行により、輸出関連を中心に中旬以降は売りに押されました。TOPIX(配当込み)では-0.5%と若干の下落となりました。
出所:Bloomberg
主要戦略運用パフォーマンス
業種動向としては、調整局面にあってディフェンシブ業種が強く、医薬品、食料品などが上昇し、建設や不動産も強かった他、銀行や保険も金利上昇の恩恵を受けるとして引き続き堅調でした。一方で、円高進行を受けて輸送用機器、電気機器、機械などの外需関連が下落しました。上旬の上昇局面ではグロースが強かったものの、下落局面ではバリュー優位で月を通してはバリュー、そしてサイズでは小型が大型に対してアウトパフォームする結果となりました。
弊社の主要戦略のパフォーマンスは、全般的に良好で、指数が極端に強くなった小型はアンダーパフォームしたものの、コアでは大きくアウトパフォームして、オポチュニティ、イールドなども良好なパフォーマンスとなりました。
パフォーマンス一覧速報(対ベンチマーク超過収益)
出所:Bloomberg、シュローダー、各戦略コンポジット(運用報酬控除前)、超過収益は対ベンチマーク、TOPIX配当込及びRussell/Nomura Small Capインデックス、Micro Capインデックス
8月の急落は相場史にどう名を刻むか?
前田 建
日本株式 ファンドマネジャー
本コラムでは、日本株式運用チームのファンドマネジャー、アナリストが毎月入れ替わりで市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。
8月初旬の株価急落に際して、一体今回の歴史的な下落はどう捉えたら良いのだろう?類似事例からの学びは得られるだろうか?といった思いから、過去のTOPIXの日次ベースでの下落率が高かった日を抽出し、そのきっかけとなった出来事や金融経済情勢について振り返ってみました。あらためてデータを眺めてみると、やはり今回の下落の異常さが目につきました。過去に同程度に下落率が大きかった際には歴史に残るような大きな出来事が発生していたことが大きかったのですが、今回はそれと比べると比較的軽微な印象が拭えません。未だに記憶に深く刻み込まれているのがリーマンショック発生後の市場環境です。当時は100年に一度の危機とされ、連日歴史的な急落や反動高などを繰り返していました。TOPIXの下落率の大きかった日を順に並べて20番目までを拾ってみると、うち6回をこの時期が占めています。その他で複数回登場しているのは原発事故を伴って甚大な被害をもたらした東日本大震災、朝鮮特需の終焉を嫌気して下落したスターリンの死去後の混乱期位でした。その他にも米国同時多発テロ、BREXITなどの主要イベントやバブル崩壊、ITバブル崩壊などの相場史に残る下落相場が登場していますが、日次ベースの下落率で6%を超えたのはそれぞれ1日だけでした。8月2日の下落率がこれらの歴史的な下落率に並ぶ急落となったことで意外感を覚えたのですが、週明け5日はさらに輪をかけた急落で、円高を理由にした下落だとしても、それに見合った株価の下落率を大きく上回る規模のもので非常にアンバランスな印象を受けました。一方でVIX指数の瞬間風速的な急上昇は見られたものの、すぐに落ち着きを取り戻した欧米の株式市場の下落率は比較的穏当なものに留まりました。その後の日本株の反騰が急だったことからも1日の下落率、或いはそれまでの3営業日の累計の下落率が過剰だった印象を深めています。夏休み期間、しかも欧米時間に開催されているオリンピック期間中ということで参加者が限られる中でポジション調整が殺到した結果起こった単なる相場のあやなのでしょうか?先物も含めてインデックス投資が隆盛を極め、市場の価格発見機能が損なわれている証でしょうか?それとも後世に渡って語り継がれる重大な相場イベントだったのでしょうか?
複数の候補が挙がる中、今回の急落が後世に何と刻まれるのか定かではありませんが、事象としては2013年のテーパリングに関わるバーナンキ発言に端を発するテーパータントラム(バーナンキショック)が一番近い印象です。すると「植田ショック」の当てはまりが良さそうです。そこからは長い上昇相場の中での一時的な小休止という示唆が得られます。また、下落率の大きさや、月曜日の出来事だったことから8/5の下落を「令和のブラックマンデー」と称する向きもあるようです。本家ブラックマンデーでも上昇基調への回帰が早期に達成されていますが、二番底を模索する動きが2-3か月継続しました。「円キャリーバブル崩壊」はどうでしょうか? 7月が転換点となり円安トレンドの終焉に発展するケースの場合は、再度急激な株価の調整を伴うものになるかもしれず、リスクシナリオとして燻っています。ただ過去常に円安=株高という関係が成り立っていたわけでもなく、過度に株安を恐れるよりは、選好される業種等の変化を伴って新たな上昇トレンドを模索する動きに期待したいと思います。
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