市況
4月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りはまちまちの動きとなりました。米国は、月初は市場予想を下回るISM製造業・非製造業景況指数を受けて利回り低下で始まりましたが、その後、堅調な雇用統計や総合購買担当者景気指数(PMI)等を受けて追加利上げ観測が台頭したほか、債務上限問題も意識されたことから、月半ば過ぎまで利回りは上昇しました。しかし、月下旬には米地方銀行に対する懸念が再燃し、投資家の安全資産志向から利回りは低下の流れとなりました。月を通じては、月初と月下旬の動きが影響し、米10年債利回りは低下となりました。欧州では、イースター休暇後の月中旬に米経済指標や欧州中央銀行(ECB)のタカ派姿勢を背景にドイツ国債利回りは上昇しました。月下旬は軟調な欧州銀行決算やドイツのインフレ率鈍化を受けて利回りは低下しました。月を通じては、ドイツ10年債利回りは小幅な上昇で終えました。英国は、3月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比10.1%上昇と高止まりが確認され、追加利上げ観測が高まったことから、英国債利回りは短期部分を中心に、米欧比大幅な上昇となりました。
4月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.47%から3.42%に低下した一方、ドイツ10年債の利回りは2.29%から2.31%、英国10年債の利回りは3.49%から3.72%に上昇となりました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは0.35%、グローバル・ハイイールド債の対国債超過リターンが0.37%と、国債を上回るリターンとなりました。
パフォーマンス
4月のパフォーマンスは0.28%となりました。金利戦略は、米国のスティープ化ポジションが月下旬にかけて小幅にプラスに寄与したものの、対欧州や豪州で構築した英国のオーバーウェイト(利回り低下を見込むポジション)がマイナスに寄与しました。通貨戦略は、ユーロのオーバーウェイトや加ドルのアンダーウェイトはプラスに寄与したものの、日本円のオーバーウェイトが、植田日銀総裁初の政策決定会合で金融政策が維持されたことを受けて、円安となったことからマイナス寄与となりました。クレジット戦略は、米欧投資適格社債の保有を継続したことから、社債スプレッドの縮小とキャリーがプラスに寄与しました。
投資行動・投資方針
[テーマ1]グローバル経済成長に対するダウンサイドリスクが高まる
- グローバルに経済成長に対するリスクは下方に傾いており、米国は今年後半に景気後退に陥る可能性が高いとみています。金融政策の効果はタイムラグをもって現れるため、金融引き締めの本格的な影響はこれから表面化すると見込まれます。また、銀行の貸出基準の厳格化は、引き続き経済成長への逆風となることが予想されます。
- 金利戦略において、グローバル・デュレーションをオーバーウェイトといたします。また、通貨戦略においては、景気循環通貨対比で米ドルおよび/もしくはユーロをオーバーウェイトといたします。
[テーマ2]ディスインフレ期間に突入:米国が先行
- 先行指標は今後数ヶ月間のインフレ見通しが改善することを示唆しています。コモディティ価格の下落に加え、今年前半はベース効果が前年同月比のインフレ率において強力な下押し圧力として作用すると考えられます。地域や国のインフレの乖離は今後も続き、米国はディスインフレが先行して発生すると見込んでいます。欧州コア国のインフレのピークは今年半ばと予想します。
- 金利戦略において、米国をオーバーウェイトといたします。通貨戦略では、ユーロを対米ドルでオーバーウェイトとする方針といたします。クレジット戦略では、投資適格社債をオーバーウェイトといたします。
[テーマ3]米欧銀行でのストレス発生:利上げの最終到達点は予想より早く、そして低く
- 米シリコンバレー銀行の破綻に端を発した銀行システム不安は、銀行融資や信用基準のさらなる引き締めにつながり、経済成長にとってさらなる逆風となるとみています。さらに金融政策にも影響を及ぼし、政策金利のピークが以前よりも早く、そして低くなる可能性があります。なお、ユーロ圏の循環的インフレサイクルは米国に遅行しているため、ECBの利上げは相対的に長引くと見込まれます。
- 金利戦略において、米国をオーバーウェイト(単独、もしくは対欧州)とするほか、米国のスティープ化ポジションを構築する方針といたします。
[テーマ4]一部国は利下げサイクル入り間近
- 世界の金融引き締めサイクルが成熟するにつれて、金融政策の乖離拡大が予想されます。大幅な引き締めを行った一部の中央銀行(特に米国)は、急激な経済減速に直面した場合の金融緩和の余地が大きいと考えられます。一方、豪州は、景気サイクルが米国に遅行しており、今度コアインフレが上振れする可能性があるとみています。また、住宅市場の脆弱性等金融引き締めに制約のある国の中央銀行は、使用可能な対応手段が限定され、結果、金融政策によるサポートが長期に及ぶ可能性があります。
- 通貨戦略において、対英ポンドや対スウェーデン・クローナでユーロをオーバーウェイトとする方針といたします。
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