市況
8月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りはまちまちの動きとなりました。米国は、卸売物価指数(PPI)の伸び加速や堅調な経済指標を受けて、政策金利が長期にわたって高水準で維持されるとの観測が高まり、月半ば過ぎまで長期債を中心に利回りが上昇し、10年債利回りは一時世界金融危機時以来の高水準に達しました。ただし、月末には、雇用関連指標で軟化の兆候がみられたことを受けて国債利回りは低下し、これまでの上昇を一部相殺して月を終えました。月を通じては、2年債利回りは低下、10年債利回りは上昇となりました。欧州は、欧州中央銀行(ECB)発表の月次調査でインフレ期待が低下したことが利回りの低下要因となった一方、月中旬は米国の動きに伴い利回り上昇の展開となりました。月下旬は、低調な購買担当者景気指数(PMI)を受けて、翌月のECB理事会での利上げ見送りの可能性が意識され、利回りは再び低下しました。月を通じては、ドイツ10年債利回りは前月末比変わらずとなりました。英国は、賃金上昇率が集計開始後で最高を記録したことを受けてインフレ圧力の継続が懸念されるなか、中期債を中心に利回りが上昇しました。
8月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.95%から4.10%に上昇、ドイツ10年債の利回りは2.47%で変わらず、英国10年債の利回りは4.31%から4.36%に上昇しました。 クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは-0.13%となりましたが、グローバル・ハイイールド債の対国債超過リターンは0.03%と国債並みのリターンとなりました。
パフォーマンス
8月のパフォーマンスは0.22%となりました。
金利戦略は、欧州の対米国でのオーバーウェイト(相対的な利回り低下を見込むポジション)は、月末にドイツ国債利回りの低下が進む中でプラスに寄与しました。また、スペインのオーバーウェイトも小幅にプラスとなりました。一方、米国のスティープ化ポジションや、月初に解消した豪州のフラット化ポジションはマイナスに寄与しました。
通貨戦略は、メキシコ・ペソのオーバーウェイト(対加ドル)はエマージング通貨が全般に軟調となる中、小幅にマイナス寄与となりました。ポジションは月初に解消しました。スウェーデン・クローナの対豪ドルでのアンダーウェイトは寄与は中立となりました。
クレジット戦略は、リスク性資産が軟調となったことから、米欧の投資適格社債の小幅なオーバーウェイトがマイナスに寄与しました。銀行シニア債を中心とした保有を継続しました。
投資行動・投資方針
インフレの鈍化に伴う米国経済の力強さを受けて、短期的には景気後退懸念は大幅に後退し、ソフトランディングの見方がますます大勢を占めています。一方で、政策金利が長期にわたって高水準を維持するとの見方が台頭しています。中央銀行が緩和姿勢に転じる主なカタリストの一つとして労働市場の軟化が挙げられますが、現時点では、雇用情勢は顕著な悪化には至っておらず、ヘルスケアなど一部のセクターでは雇用を拡大する余力がある状況です。多くの主要経済指標は、米国とその他地域との乖離が広がっていることを示しています。中国の不動産問題は、国内と海外(特にユーロ圏全体)の両方でより広範な脆弱性を生み出していることから、その影響を注視しています。景気刺激策の観点からは、中国当局の対応は今のところ比較的慎重なものであり、市場に対する支援材料としては力強さに欠ける状況です。
利上げサイクルは成熟しつつありますが、インフレ率を目標に近づけるという政策当局の決意を示す表現は残されています。賃金上昇による二次的なインフレの影響により、インフレがピークに上昇するまでのスピードに比べてディスインフレの勢いは緩やかとなる可能性が高いと考えます。よって、当面、債券市場は当面は方向感を欠く展開となることが見込まれます。このような環境においては市場間の乖離を捉える相対価値トレードの有効性が高いと考えます。また、資本市場のボラティリティ(変動性)の低下継続が見込まれることから、インカム追求にとって好環境が継続すると考えます。質の高いクレジットセクターへの選好姿勢を維持いたします。
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