市況
2月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは上昇しました。米国は、堅調な経済指標や当局者の発言等を受けて早期の利下げ観測後退の動きが継続したほか、1月の消費者物価指数(CPI)でインフレ圧力の根強さが示されたことも影響し、短・中期債を中心に米国債利回りは大幅上昇となりました。欧州も、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が賃金上昇圧力は依然強いと指摘し、早急な利下げに対して警戒を示したこと等を受けて早期利下げ観測が後退し、ドイツ国債利回りの上昇が継続しました。ただし、月末に発表されたユーロ圏主要国の2月のインフレ率が一段と低下したことを受けてドイツ国債利回りはやや低下し、月を終えました。英国は、1月のCPIを「朗報」とするイングランド銀行のベイリー総裁の発言や昨年10-12月期の国内総生産(GDP)が7-9月期に続いて前期比で減少したこと等が材料視され、英国債利回りは月半ばに低下する場面もありましたが、月を通じては米欧の流れを受けて中長期債利回りを中心に上昇となりました。
2月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.91%から4.25%、ドイツ10年債の利回りは2.17%から2.41%、英国10年債の利回りは3.79%から4.12%に上昇しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは0.15%、グローバル・ハイイールド債の対国債超過リターンは1.26%と国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
2月のパフォーマンスは-0.67%となりました。
金利戦略は、選別的なエマージング国のO/W(利回り低下を見込むポジション)やカナダの対豪州でのU/W (利回りの相対的な上昇を見込むポジション)は小幅にプラスに寄与したものの、米国や英国におけるデュレーションのO/Wやスティープ化ポジションが主にマイナスに寄与しました。
通貨戦略は、豪ドルの対ニュージーランド・ドルでのO/Wが小幅にマイナスに寄与したものの、スイス中銀による為替介入の終了を予想し、スイス・フランを対ユーロでU/Wしたことがプラスに寄与しました。
クレジット戦略は、欧州の投資適格社債の保有が主に奏功したほか、ハイイールド債の小幅な保有もプラス寄与となりました。
投資行動・投資方針
マクロ経済シナリオ分析では、地銀セクターには潜在的なリスクが残っているものの、米国経済が堅調であることを背景に、ハードランディングの実現可能性を引き下げ、ノーランディングの実現可能性を引き上げています。依然としてソフトランディングのベースケースを覆すものではありませんが、このシナリオの実現可能性を小幅に引き下げています。
米国の労働市場は、一部のセクターが顕著に加速し、家計消費を支えています。現在の伸びのペースが続いた場合、労働市場が再び引き締まり始めるリスクがあります。運用チームでは財のディスインフレ(物価上昇ペースの鈍化)はほぼ一巡し、物価上昇圧力が今後さらに緩和するためにはサービス部門が役割を果たす必要があると指摘してきました。住宅セクターはこの点で引き続きサポートとなると期待されるものの、経済環境が再び活気づいているため、他のサービス関連セクターにおけるインフレ鈍化の勢いを抑制するリスクがあるとみています。よって、インフレを中央銀行の目標水準まで抑制するプロセスは緩やかに進むとみられ、「最後の1マイル」の達成には時間がかかる可能性があります。
金融環境の緩和は、経済成長見通しをサポートする材料となっています。グローバル製造業の改善に、この状況がある程度反映され始めています。とはいえ、景気後退の可能性を完全に排除することはできません。政策金利がターミナル・レート(利上げの最終到着点)に達した後であっても、利上げの実体経済への影響は時間差をもって波及するため、ニューヨーク・コミュニティ・バンコープや広範な米地銀セクターの苦境は、これまでの金融引き締めが今後予期せぬ結果をもたらす可能性があることを注意喚起するものであると考えます。しかしながら、現時点では、ハードランディングの実現可能性は引き下げています。
このような見通しに基づき、金利戦略では、全体のデュレーションの長期化を継続するほか、イールドカーブのスティープ化への選好を維持いたします。その他、先進国に先んじて利上げを実施したエマージング国ではインフレの落ち着きに伴って利下げ可能性が高まっており、選別的に強気といたします。クレジット戦略では、欧州を中心に投資適格社債の保有を継続いたします。その他、証券化商品等高クオリティながら同等の格付けの国債に比べて相対的に高い利回りを提供するセクターも選好いたします。通貨戦略は、長期的には米ドルに対して弱気の見方とするものの、現時点では米ドルの方向性を左右するのは米国債利回りの動向となっており、利回りが上昇基調にあるうちは米ドルの支援材料になるとみられることから、米ドルを若干の強気といたします。
注記:ソフトランディングは、グローバル経済が緩やかに減速し、市場も緩やかな景気後退を織り込むシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル小幅下落、スプレッド堅調となります。ハードランディングは、グローバル経済が急激に悪化し、市場のリスク許容度が急低下するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル上昇、スプレッド軟調となります。ノーランディングは、経済の堅調さが継続、インフレは鈍化も目標は上回り、利上げが長期化するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、国債利回り上昇、クレジット・スプレッド小幅軟調となります。
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