市況
3月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは低下しました。米国は、一部の経済指標が低下したことを受けて米国債利回りは月初に低下して始まりました。月半ばにはインフレの根強さが示されたことで利回りは上昇したものの、連邦公開市場委員会(FOMC)参加者による経済見通しにおける年内3回の利下げ予想が維持されたこと等も影響し、月下旬は再び低下基調となり、月を終えました。欧州は、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁による6月の利下げ可能性を示唆する発言や、欧州域内のインフレ率は鈍化が継続する見通しとの発言等が材料視され、ドイツ国債利回りは低下し、米国債に比べて利回りの低下幅が大きくなりました。英国は、予算案の公表を受けて減税が市場の混乱を引き起こす可能性は低下したとの見方から英国債利回りは低下しました。2月の英消費者物価指数(CPI)上昇率の鈍化を受けて6月の利下げ観測が高まる中、月下旬も低下基調を維持し、英国債利回りは米欧を上回る低下となりました。
3月の国債市場では、米国10年債の利回りは4.24%から4.21%、ドイツ10年債の利回りは2.40%から2.29%、英国10年債の利回りは4.12%から3.94%に低下しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは0.51%、グローバル・ハイイールド債の対国債超過リターンは0.58%と国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
3月のパフォーマンスは1.66%となりました。
金利戦略は、米国や英国を中心としたデュレーションのO/W (利回り低下を見込むポジション) が主にプラスに寄与しました。米国のO/W幅を月半ばに増加したことも奏功しました。
通貨戦略は、豪ドルの対ニュージーランド・ドルでのO/Wがプラスに寄与しました。
クレジット戦略は、欧州および米国投資適格社債の保有が主にプラス寄与となったほか、エージェンシーMBS債等証券化商品の保有もプラスに寄与しました。
投資行動・投資方針
マクロ経済シナリオ分析では、ソフトランディングシナリオを基本シナリオとして維持しています。ノーランディングシナリオは引き続き主なテール・リスクとして認識しているものの、その実現可能性は低下し、一方でハードランディングシナリオの実現可能性はわずかながら上昇しています。
グローバル製造業サイクルの先行指標の改善は先行指標に明確に表れてきていますが、このような改善は金融環境の緩和、景気刺激的な財政政策、地政学的緊張が高まるなかでの防衛関連支出という強力な組み合わせによってもたらされています。これらの要因はすぐに反転する可能性は低いとみています。運用チームでは、このグローバル製造業サイクルの先行指標の改善は、ソフトランディングシナリオに沿った緩やかな回復を示しているとの見方をしており、2021年と2022年に財(商品)セクターが直面したような過熱の問題につながる可能性は低いと考えます。また、労働市場もシナリオの実現可能性を判断するうえで重要な要素ですが、米国の労働市場に対して過熱の懸念は低いとみています。
ユーロ圏でも、金融引き締めの影響のピークが過ぎ去るなかで、先行指標は明らかな改善を示しています。ユーロ圏の経済成長見通しが低水準となっているため、ポジティブ・サプライズで上方修正となることは比較的起こりやすいとみられます。ただし、2023年のディスインフレの勢いは今年は弱まるとみられ、根強いインフレは警戒材料として認識しています。なお、インフレ動向が悪化したとしても欧州の金融緩和サイクル開始の妨げになるとは考えにくいとみています。欧州中央銀行(ECB)は、状況にかかわらず6月の利下げを実施する可能性は高いと予想していますが、6月以降の利下げの回数とタイミングについて、市場の織り込みは早急すぎると考えています。
このような見通しに基づき、金利戦略では、全体のデュレーションの長期化を継続いたします。なお、ユーロ圏経済見通しの改善やインフレが持続する可能性等を考慮すると、ドイツ国債は他の国と比べて相対的に弱気にみています。イールドカーブのスティープ化についてはまだ収益獲得の余地があると考え、選好を維持しています。クレジット戦略では、欧州を中心に投資適格社債の保有を継続いたします。その他、証券化商品等高クオリティながら同等の格付けの国債に比べて相対的に高い利回りを提供するセクターも選好いたします。通貨戦略は、長期的には米ドルに対して弱気の見方とするものの、現時点では米ドルの方向性を左右するのは米国債利回りの動向となっており、利回りが上昇基調にあるうちは米ドルの支援材料になるとみられることから、米ドルを若干の強気といたします。
注記:ソフトランディングは、グローバル経済が緩やかに減速し、市場も緩やかな景気後退を織り込むシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル小幅下落、スプレッド堅調となります。ハードランディングは、グローバル経済が急激に悪化し、市場のリスク許容度が急低下するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル上昇、スプレッド軟調となります。ノーランディングは、経済の堅調さが継続、インフレは鈍化も目標は上回り、利上げが長期化するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、国債利回り上昇、クレジット・スプレッド小幅軟調となります。
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