市況
4月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは上昇しました。米国は、中東情勢の緊迫化を受けて安全資産需要が高まる局面はあったものの、経済指標が堅調であったことや、3月の米コア消費者物価指数(CPI)が3カ月連続で上振れとなり、連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ開始が後ずれするとの観測が再び高まったことが影響し、米国債利回りは月を通じて上昇基調が継続しました。欧州では、米国の動きに伴ってドイツ国債利回りも上昇しました。ただし、主要格付け機関がフランスおよびイタリアの格付けを維持したことが一定の安心感につながったほか、コアインフレ率が鈍化するなか、欧州中央銀行(ECB)の早期利下げ開始に対する市場の期待が相対的に高く維持されたこと等を背景に、ドイツ国債利回りの上昇幅は米国債を下回りました。英国は、3月の英CPI上昇率は鈍化が継続したものの、市場予想を上回ったこと等を背景に早期利下げ観測が後退し、英国債利回りは上昇しました。
4月の国債市場では、米国10年債の利回りは4.21%から4.68%、ドイツ10年債の利回りは2.29%から2.58%、英国10年債の利回りは3.94%から4.35%に上昇しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは0.23%、グローバル・ハイイールド債の対国債超過リターンは0.25%と国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
4月のパフォーマンスは-1.47%となりました。
金利戦略は、米国債利回りの上昇幅が他国比大きくなったことから、米国の対ドイツや対カナダでのO/W (相対的な利回り低下を見込むポジション)がマイナスに寄与したほか、グローバル全体で利回り上昇の動きとなったことから、ブラジルやインドネシア等エマージング債券の保有もマイナスとなりました。その他、英国の対ドイツでのO/Wもマイナスとなりました。
通貨戦略は、日本円の対スイス・フランでのO/Wや、ブラジル・レアルの対ユーロでのO/Wが主にマイナスに寄与しました。
クレジット戦略は、米国モーゲージ債の保有はマイナスに寄与したものの、欧州および米国の投資適格社債の保有や、機動的に構築したハイイールド債の小幅なエクスポージャーがプラスに寄与しました。
投資行動・投資方針
マクロ経済シナリオ分析では、ソフトランディングシナリオを引き続きベースケースとして維持しています。ただし、米国で複数のインフレ指標が上振れとなり、また、グローバルの製造業サイクルが上向きの流れとなっています。このような環境においては、コモディティ価格が上昇する可能性があり、ノーランディングシナリオのリスクが上昇したと認識しています。
最近の米国の根強いインフレ指標の発表は、年内の利下げ開始を否定するものではないと考えられるものの、米連邦準備制度理事会(FRB)が一旦立ち止まり、様子見する理由ができたことは明らかで、6月に利下げを実施する可能性は相対的に低下したと考えます。また、パウエルFRB議長が重視するインフレ指標である住居を除くコア・サービスCPIは、3月分は前月比で0.7%上昇、3ヵ月変化率は年率換算で8%を超えています。より幅広いインフレ指標をみてみても、足元のインフレはFRBが利下げを近々開始するには高すぎる水準で推移しています。
しかしながら、債券投資家として楽観的となる理由が労働市場にあると考えます。賃金上昇率は低下傾向にあり、欠員率も徐々に低下しているほか、離職率の低下が継続していることは特に重要だと考えます。離職率は賃金上昇の先行指標であり、離職率が低下すれば、企業が労働者を確保し、引きつける圧力が弱まるため、賃金上昇の速度も弱まることになります。また、世界の製造業は改善を続けています。中国からのニュースは良好であり、今後数ヶ月間、主にユーロ圏の経済成長に恩恵をもたらす可能性が高いと考えます。
このような見通しに基づき、金利戦略では、全体のデュレーションの長期化を継続いたします。なお、イールドカーブのスティープ化についてはまだ収益獲得の余地があると考え、選好を維持しています。国別選択に関しては、米国や英国を、ドイツやカナダに対して相対的に選好する姿勢といたします。クレジット戦略では、欧州を中心に投資適格社債の保有を継続いたします。その他、証券化商品等高クオリティながら同等の格付けの国債に比べて相対的に高い利回りを提供するセクターも選好いたします。通貨戦略は、米金利動向が米ドルを動かす主要因となる状況が継続しており、通貨リスクは引き続き抑制いたします。
注記:ソフトランディングは、グローバル経済が緩やかに減速し、市場も緩やかな景気後退を織り込むシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル小幅下落、スプレッド堅調となります。ハードランディングは、グローバル経済が急激に悪化し、市場のリスク許容度が急低下するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル上昇、スプレッド軟調となります。ノーランディングは、経済の堅調さが継続、インフレは鈍化も目標は上回り、利上げが長期化するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、国債利回り上昇、クレジット・スプレッド小幅軟調となります。
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