市況
10月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは上昇しました。米国は、経済の底堅さを示す指標を受けて大幅利下げ観測が後退したほか、月後半には、米国大統領選挙が近づく中で、共和党候補のトランプ前大統領が勝利するとの見方が強まり、財政赤字拡大の可能性が懸念されたことから、米国債利回りの上昇が月を通じて継続しました。欧州では、欧州中央銀行(ECB)が2会合連続で0.25ポイントの追加利下げを決定しましたが、ドイツの10月のインフレ率が前年同月比で加速したほか、同国の7-9月期の国内総生産(GDP)が前期比マイナスを回避し、拡大となったこと等を受けて月末にかけてドイツ国債利回りの上昇の勢いが増しました。ただし、月を通じては米国債に比べて利回り上昇幅は緩やかとなりました。英国は、労働党政権が発表した秋季予算案において歳出拡大が示されたことや、英債務管理庁が2024/25年度の国債増発計画を発表したこと等を受けて、英国債利回りは月後半に大きく上昇しました。
10月の国債市場では、米国10年債の利回りは3.79%から4.28%、ドイツ10年債の利回りは2.13%から2.39%、英国10年債の利回りは4.01%から4.45%にそれぞれ上昇しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは0.35%、グローバル・ハイイールド債の対国債超過リターンは0.82%と国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
10月のパフォーマンスは-1.22%となりました。
国別選択での欧州の対米国でのO/W (相対的な利回り低下を見込むポジション)はプラスに寄与したものの、米国を中心にデュレーションをロングとしたことが主にマイナスに寄与しました。また、これまで堅調に推移してきた選別的なエマージング債券の保有も、当月は米国の大幅利下げ観測が後退するなかで、マイナスとなりました。
通貨戦略は、豪ドルの対米ドルでのO/Wがマイナスに寄与しました。
クレジット戦略は、米国モーゲージ債が市場のボラティリティ上昇を背景にマイナスに寄与したものの、欧州を中心とした投資適格社債の保有が奏功したほか、ハイイールド債の小幅な保有もプラスに寄与しました。
投資行動・投資方針
マクロ経済シナリオ分析では、中国による景気刺激策が世界経済を下支えすると見込まれるほか、米国経済が堅調な中でのFRBによる利下げを鑑みると、グローバルのハードランディング・シナリオの実現可能性が低下しただけではなく、ノーランディング・シナリオの実現可能性が再び高まったと考えています。ただし、ソフトランディング・シナリオを基本シナリオとする見方は維持しています。
米国については、トランプ前米大統領勝利および上院での共和党過半数獲得を受けて、減税、規制緩和、関税引き上げ、不法移民規制強化等の実施により企業寄りかつインフレ圧力が強まる環境となる可能性が見込まれています。なお、10月の利回り上昇は米国選挙の影響だけではなく、労働市場および米国経済に関する指標が堅調であったことや、ディスインフレ進行に若干の足踏みがみられたことも要因であったことは改めて認識する必要があります。そして、来年には財政や貿易政策が米連邦準備制度理事会(FRB)の政策判断に影響してくることは間違いないと言えるものの、年末までの短期的には影響は限定的になるとみられます。
欧州に関しては、ドイツの製造業は極めて低調であり、欧州中央銀行(ECB)が来年までにさらに5回以上利下げを行うと市場は見込んでいます。米国が報復的な関税を発動する場合、欧州経済にとってはさらに不利な展開となるとみられます。英国については、英予算責任局が5年間の実質GDP見通しはほぼ変わらないと示したことに加え、追加借り入れが示唆されていることが、市場のネガティブな反応を引き起こしました。ファンダメンタルズの観点では英国経済は底堅さを維持しているほか、市場の利下げ期待が後退しています。インフレ低下や賃金の伸び鈍化を考慮すると、現在の英国債利回りの水準は魅力的な投資機会を提供していると考えます。
このような見通しに基づき、金利戦略では、今後米国選挙の世界経済への影響が見えてくる中で投資機会が増加するとみています。現時点では、英国債利回りの対ドイツでのスプレッドが大幅に拡大したことを受けて、英国を対ドイツでO/Wとする方針とするほか、エマージング債券については、米国の利下げ開始を好材料と考え、選別的な保有を継続いたします。資産配分については、エージェンシー・モーゲージ債およびカバードボンドについて、確信度をやや弱めながらも選好を維持しています。社債については、米国投資適格社債のスプレッドは過去10年間で最も縮小した水準にあることから、弱気姿勢を維持しているほか、欧州投資適格社債の対米国での選好姿勢も継続しています。通貨戦略は、通貨リスクは全体としては引き続き抑制し、中央銀行のスタンスの相対的な違い等を捉えるポジションを機動的に構築してまいります。
注記:ソフトランディングは、グローバル経済が緩やかに減速し、市場も緩やかな景気後退を織り込むシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル小幅下落、スプレッド堅調となります。ハードランディングは、グローバル経済が急激に悪化し、市場のリスク許容度が急低下するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、金利低下、米ドル上昇、スプレッド軟調となります。ノーランディングは、経済の堅調さが継続、インフレは鈍化も目標は上回り、利上げが長期化するシナリオを指します。このシナリオにおいて想定する主な市場の動きは、国債利回り上昇、クレジット・スプレッド小幅軟調となります。
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