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- 世界経済成長率および米国10年国債利回りは3%以下で推移
- 米国以外の企業業績が堅調となる可能性、株式のリターンは一桁台を予想
- 低位で推移する金利は、市場および経済のボラティリティを抑制
2019年初、マルチアセット・チームの景気サイクル分析モデルは、世界の景気減速局面への突入を示唆していました。通常、このようなシグナルはリスク資産、特に株式にとって警戒を高める必要が出ると考えられます。
通常景気サイクル後期では、それまで経済成長率が高水準で推移してきたことから、企業にとっては、原材料費や人件費などの投入コストや借入コストの上昇がみられるほか、失業率の低下に伴い賃金などの労働コストの上昇がみられます。こうした環境下においては、中央銀行はインフレ上昇に対応するため、金利を高水準で維持する必要があります。このため、通常このような環境は株式市場にとって重しとなります。
しかし、今回の景気サイクルは通常とは異なると考えます。低位で推移するインフレ率は、中央銀行が経済成長を促進するために行う利下げをより速いペースで実施することを可能にし、企業業績が芳しくないなかでも株式市場を下支えしてきました。とはいえ、一部でコストの上昇がみられている点には留意する必要があります。
株式市場
2020年については、国債などの安全資産と呼ばれる資産と比べ、株式は魅力的であると考えますが、さらなる株価の上昇には企業業績の成長が必要になると考えます。
米国企業の業績に対する市場期待は、高いバリュエーション、またコスト上昇により企業業績が圧迫される可能性から判断して楽観的であるといえます。米国以外の企業業績が市場期待を上回る可能性もあり、一桁台後半の株式リターンを見込んでいます。
例えば、新興国市場については、製造業調査結果の改善から判断してより楽観的な見通しに傾きました。
債券市場
2020年の世界経済成長率および米国10年国債利回りは、3%以下での推移を見込んでいます。
米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする各国中央銀行によってもたらされた流動性は、景気後退のリスクを軽減しましたが、民間銀行による貸出は抑制されたままとなっています。経済回復を見込むにはこの銀行貸出の増加が必要となると考えます。
経済減速懸念がインフレ上昇懸念を上回ることから、引き続き国債は魅力的なヘッジ手段であると考えます。経済減速は通常、企業や株式市場にとってマイナス要因である一方で、国債価格は上昇する傾向があります。
ドイツ10年国債利回りや日本10年国債利回りがマイナス圏で推移する中、米国国債利回りはプラスであることから、米国債を選好します。また、米国債は経済的リスクに対して相対的に感応度が高いため、景気減速局面では、他国の国債のリターンを上回る傾向があります。
国債利回りが低位で推移することを見込むもう一つの理由として、年金基金が引き続きリスクを引き下げることが挙げられます。つまり、株式などのリスク資産の組入比率を引き下げ、債券などの相対的に安定的な資産を選好するということです。この動向から生じる、債券に対する需要は利回り水準を抑制し、社債と国債のスプレッドの縮小をもたらします。
依然として残る政治リスク
経済成長が抑制され、各国の経済成長状況もまちまちである環境下、政治リスクが市場に大きな影響を与える状況は、今後も継続すると考えます。貿易摩擦の再激化は世界経済成長率を2%以下に押し下げる可能性のある、最も注視すべきリスクであると考えます。
米政権が左派寄りに傾いた場合、その影響は経済成長率見通しに対しては限定的と考えますが、米国企業見通しに対してはより大きいと考えます。
また、足元投資家の間で財政政策について議論されることが多くなっています。マルチアセット・チームでは、英国については拡張的な財政政策を見込む一方、米国で実施された財政刺激策の効果は徐々に薄れ、ドイツについては、大規模な財政拡張に対する政治的な動機は乏しいと考えます。総体的に、2020年に大規模な拡張的財政政策が実施される可能性は低いと考えています。
世界経済に顕著な回復がみられない間は、資産配分を大幅に変更する必要はないと考えます。低金利は、市場および経済のボラティリティを抑制し、投資の継続を後押しします。経済的リスクを過度に取ることなく、流動性の高い環境から恩恵を受けることを企図した運用方針を引き続き維持します。
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