サステナビリティ

2019年12月20日
melting-iceberg-sustainability-outlook-2020

著者

ジェシカ・グランド
スチュワードシップ グローバル・ヘッド
  • 気候変動は、従来の単に「興味深い」問題から、投資に実際に影響を及ぼす問題へ変化しています。
  • この背景には、社会的関心や規制当局による圧力の高まり、企業による気候変動関連のリスクや機会に関する情報開示に対する需要の増加等があります。
  • 我々はまだ、気候変動投資という巨大な氷山の一角に到達したに過ぎない、とみています。

 

2020年は、気候変動が投資における課題であると広く認識され、アクティブ運用戦略にとっては投資機会につながると考えます。

見通しを作成する際、新しいことや革新的なことを検討するために想像もできないようなことを考えるようにとよく頼まれるものですが、実際には過去12か月のトレンドのうち今後も継続しそうなことを分析することが、最も核心を突いた見通しの作成につながると考えます。サステナビリティの分野において、2020年の見通しは、気候変動が投資に対し実際に影響を及ぼすようになることです。その理由として、以下3点が挙げられます。

1.社会的関心の高まり

シュローダーが個人および機関投資家に対して実施したグローバル投資家意識調査においても、気候変動に対する関心が高まっていることがわかります。例えば、2019年に機関投資家に対し実施した調査では、最も重要視するエンゲージメントの課題がそれまでの企業戦略に代わって気候変動となりました。個人投資家への調査でも経済の繁栄や技術革新、または貧困や人権といった問題よりも地球環境の課題解決を優先する傾向が見られました。

このように社会的な関心が高まっていることから、今後気候変動関連への投資に対する資金の流入が予想されます。一方、気候変動に対して懐疑的な人は大幅に減少したものの、気候変動を投資における課題として認識している人は依然として少数派です。

2.規制当局による圧力の高まり

金融規制当局は、気候変動問題を自らの視野に入れており、しばらくの間はそれぞれが異なるアプローチを議論するという状況が継続しそうではあるものの、2020年には正式に投資規制の対象となり始めることが想定されます。例えば、英国の健全性規制機構(Prudential Regulatory Authority)は、保険会社に対する気候変動のストレステストを導入し、欧州の規制当局も同様の対応をとることを表明しています。

さらに、欧州連合(EU)のサステナブルファイナンスパッケージの一部は、環境・社会・ガバナンス(ESG)リスクと機会を投資における意思決定プロセスに組み込むことを求める内容となっています。このように規制当局からの圧力が高まっていることから、今後投資家がポートフォリオを変更する流れが強まる可能性があるとみています。

3.企業による情報開示に対する需要の高まり

企業は、気候変動に関するリスクや機会についてさらなる情報開示をするよう求めるプレッシャーにさらされています。このことは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の署名企業数が867にまで増加していることからもわかります。なお、そのうち日本の署名機関数が最多となっています(2019年9月時点)。

企業からの情報開示が増えるにつれ、投資家は気候変動の持つ副次的な影響が当初の想定より大きいことを認識するようになるでしょう。低炭素化社会等への移行に伴う政策や法律、技術、市場の変化等による財務リスクのことを移行リスクと呼びます。シュローダーでは、投資の観点から気候変動リスクを分析するために、炭素価格の上昇が企業業績にどの程度影響を及ぼすのかを測定するツールとして「カーボンVaR(バリューアットリスク)」を開発し、このツールに基づく分析によると、移行リスクだけでもグローバル株式全体の利益のうち最大15%が毀損する可能性があることがわかりました。一方、影響が大きい企業と少ない企業の差は大きく、石油・ガスや鉱業、旅客航空輸送業、建設資材、資本財といったセクターへの影響が大きくなると考えます。

 

気候変動に伴うリスクや機会は、株式に限定されるものではありません。気候変動を投資の世界で取り扱うということは、単に化石燃料関連企業の株式を除外するということに止まらず、債券やバンクローンといった資産についても影響が広がり、それぞれ精査が必要になってくるでしょう。

今後気候変動は投資に実際に影響を及ぼす問題となることが想定され、アクティブ投資家にとっては投資機会の創出につながると考えます。気候変動は広く認識されているものの理解は不十分であり、特にその波及効果についての理解が不足しているといえます。今から10年が経過して気候変動に関する投資リスクを振り返ってみる頃には、この問題とは既に共生していると捉えるようになっているとみています。まるで、過去10年間の間に我々が低金利環境下に慣れていったように。

10代のグレタ・トゥーンベリが世界の注目を集めたことがこの問題のピークであり、気候変動は2019年の話題として終わると考える人もいるかもしれません。しかし、2020年に向けた大胆な見通しとして、我々はまだ、気候変動投資という(正しく行動しなければ氷解してしまう危険のある) 巨大な氷山の一角に到達したに過ぎない、と見ています。

 

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