デジタル・インフラストラクチャーが最もエキサイティングな投資テーマの一つである5つの理由
データセンター、マクロタワー、光ファイバー接続は、新興国のデジタル経済の発展に伴い、回復力のある成長分野の一つとなるでしょう。
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2016年のローンチからわずか6年で、30億回以上ダウンロードされた短編動画アプリ「Tik-Tok(ティックトック)」。新型コロナウィルスの大流行を受けて、物理的な交流が減少したことから、同社の爆発的な成長をもたらしましたが、その人気は今も勢いを増し続け、毎日7億人のアクティブユーザーによって10億本以上の動画がこのプラットフォームで視聴されています。これと並行するように、世界中でビジネスオペレーションを変革するようなトレンドが起きています。
1.デジタル・インフラストラクチャーが可能にする新しいコミュニケーションの形が急成長
ロックダウンにより、オフィスや災害復旧拠点は閉鎖され、社員が出社できない中、企業もクラウドコンピューティングやビデオ会議を導入し、デジタル化を進めました。ビデオ会議プラットフォーム「Microsoft Teams」のダウンロード数は10倍以上に増加しました。米国最大規模のクラウドコンピューティングプロバイダー(Amazon、Google、Microsoft、IBM、Oracle)は、需要の変化に対応するため、クラウド設備投資に、2021年中に500億ドル近くを投じました。
Facebookは、社名をMetaへと改名し、メタバースを構築するために、年間100億ドル以上を投資することを発表しましたが、これは即ち膨大なデータセンターのスペースを必要とします。
GoogleのDeepMind部門は今年初め、同社のAIツール「Gato」によって人間レベルのAI(人工知能)を実現する目処がついたと発表しました。AIツールは何十億ものパラメータを処理します。利用可能な計算能力が高ければ高いほど、その精度は高くなります。
これらの巨大ハイテク企業にとって、規模や市場投入までのスピードは非常に重要であり、土地、電力供給、光ファイバー接続という主要な要素がタイト化しているデータセンター業界にとって、大きなリース機会を生み出しています。
クラウドは巨大な要塞のような倉庫に、数十万台ものコンピューターサーバーが置かれています。システムの連続性を保証するために、人口密集地では、それぞれにバックアップ電源を備えた、複数のクラウド「アベイラビリティゾーン(可用性ゾーン)」があり、サービスが提供されます。
マイクロソフトのAzureクラウドを提供するインフラネットワークには、データセンター、光ファイバーケーブル、通信衛星が含まれています。同社は、スイス、フィンランド、インドで新しいデータセンターの開設を計画しています。
2.クラウドのアウトソーシングはまだ始まったばかり
デジタルトランスフォーメーションのトレンドはまだ始まったばかりであり、データセンター事業者の長期の成長の道のりが続くと考えています。
現在、95%の企業が、ITを意思決定の中核としたデジタルファースト戦略を導入しています。しかしながらIDCによると、2020年末では、データセンターの容量の56%は、非効率な従来型のエンタープライズデータセンター(企業により所有、運営)でオンサイトに残っています。こうしたコンピューターのシステムにかかる負荷をサードパーティの共有施設(コロケーション)にアウトソーシングすることで、企業はより大きな事業の回復力、プロジェクトの拡張性、コスト効率性を得ることができます。
予測では、コロケーション施設は地域によって年率7〜13%で成長し、ハイパースケールクラウド施設は2020年から2025年にかけて年率22%以上の成長を遂げるとされています。これは上記の期間中に、全体として1.3 兆ドルの設備投資が必要になることを示唆します。
3.高速化した5Gモバイルネットワークがデータトラフィックの飛躍的な増加を可能に
2010年以降、世界のインターネットユーザー数は2倍以上の約50億人に達し、インターネットトラフィックも150倍以上に増加しています。この成長の大部分は、2007年に発売された最初のiPhoneをきっかけとした、モバイルデータ通信サービスを通じてもたらされました。このデータ量の急激な増加は今後も続くと予測されています。第5世代(5G)無線通信の導入により、2020年から2025年にかけてモバイルデータのトラフィックは急増することが予想されています。

5Gの波長は短く、4Gの最大100倍の速さとなる、毎秒最大10ギガビットでデータを伝送することが可能です。これは将来的に期待される自動運転などの技術には不可欠ですが、一方で電波の到達範囲が短く、障害物を容易に透過できないため、より高密度のネットワークカバレッジが必要になるというデメリットがあります。
モバイルネットワーク事業者(MNO)は現在、この高密度なカバレッジを提供するために、より多くのマクロタワー、光ファイバーケーブル、スモールセルアンテナをリースしようと競い合っています。
予測によれば、2020年から2025年にかけてのモバイル設備投資額は1.1兆ドルに上るとされています。
(注:上記グラフのEB/月とはエクサバイトのことで、コンピューターの記憶装置の大きさを表す単位。1EBは10億ギガバイトに相当)
4.景気変動を乗り切るのに適したデジタル・インフラストラクチャー資産
デジタル・インフラストラクチャーは、消費者、政府、企業から「ミッションクリティカル」であると認識されるようになりました。2035年までの業界の総設備投資額は、水道インフラ、鉄道、空港を上回ると予想されています。
デジタル・インフラストラクチャーの顧客需要は、経済的なショックの影響を比較的受けにくいことが予想されます。このことは、過去の景気後退期におけるCrown Castleの賃貸収入を振り返ることで証明されます(下図)。同社のキャッシュフローは、AT&TやVerizonといった、投資適格テナントによって支えられています。

米国政府は、総額1.2兆ドルのインフラ投資・雇用法案のうち、650億ドルをデジタルサービスが受けられていない、またはサービスが制限されている米国コミュニティのデジタルデバイド(情報格差)の解消に充てることを決定しました。これにより、景気に左右されることなく、今後10年間において光ファイバー容量の大幅な拡大が見込まれます。
デジタル・インフラストラクチャーの所有者は、インフレや通貨切り下げなどの外的ショックから保護されるようなリース契約を結んでいます。マクロタワーの場合、これは現地の消費者物価指数や燃料価格への明示的な連動、あるいは単純に年間3%の固定賃料上昇を意味することもあります。サプライチェーンのリソースがタイト化する中、デジタル・インフラストラクチャーのデベロッパーはレンタル価格を引き上げています。
5.新興国の爆発的な成長で、各国でデジタル・インフラストラクチャー整備がすすむ可能性
今後10年間で、デジタル・インフラストラクチャー投資が最も急速に成長するのは、新興国であると予想されます。これらの国々では、現在ほとんどのサービスが不足していながら、接続性とコンテンツ共有に対する、あくなき需要を持つ若い人口を抱えています。
若いインターネットユーザーは、遅い世代のブロードバンドやモバイル技術をスキップして、超高速の家庭用光ファイバーや4G/5Gの電話信号にアクセスができるようになったばかりであり、巨大な経済ポテンシャルを創出しています。
今後10年以上にわたって新興国のデジタル経済が発展していく中で、私たちは、データセンター、マクロタワー、光ファイバーケーブルといったコアとなるサブセクターにおいて、ビジネスチャンスがあると考えています。
米国と中国のハイテク大手企業は、これらの市場に急速に参入しています。マイクロソフトは3月、プネ、ムンバイ、チェンナイにある拠点に加え、インドのハイデラバードでもクラウドサービスを提供する計画であると発表しました。しかし、デジタル・インフラストラクチャー整備が遅れているため、自社で施設を開発するか、市内に既に施設を持つSify Technologiesのような第三者業者からリースする必要があります。
Ciscoによると、インドのインターネット普及率は2017年の27%(3億5700万人)から2022年には60%(8億4000万人)に増加し、今や中国(10億人)に次いで世界第2位、米国(3億人)の3倍近いインターネットユーザー数を有しています。しかしながらCloudSceneによれば、インドのデータセンター数は米国の20分の1に過ぎません。
インドの人口が15億人に達し、インターネットの普及率が上昇するにつれ、大規模な投資を行わなければ、インフラ資産の不足は拡大することになるでしょう。
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